ネズミ講とは、後からA団体に加入したZらが出資した金銭を、そのZらをA団体に加入するよう勧誘した、先にA団体に加入していたYやそのYを勧誘した親玉たちで分配することを内容とする悪徳商法を指す。
新規加入者がねずみ算式に増加していくシステムであるが、新規加入者が無限に増加しつづけない限り、全ての者が損失<利益となることはないので、現実には必ず行き詰るシステムである。
なお無限連鎖講は刑事罰を伴う形で禁じられているが、マルチレベルマーケティングは連鎖販売取引に該当し法律で禁止されていない。
さてネズミ講をいとなむA団体が案の定資金繰りに行き詰って破産し、破産管財人Xが選任された。
XのもとにはZほか多数の被害者からの債権届出がなされている。
Xは、Zほか多数の被害者への破産配当を増加させようと、中間利得者であるYやYの親玉に「A団体から得た配当金や紹介料と自らの出資金や登録料との差額を公序良俗に違反する悪徳商法により不当に得た収益だから返還せよ」求める裁判を起こした。
これに対し、YやYの親玉は「自分の収益はA団体との公序良俗に違反する違法な契約に基づき渡されたものだ。裁判所は不法な契約に基づいて渡されたお金の返還請求には手を貸すべきではないから(クリーンハンズ)、たとえ不当利得に該当しても民法708条があるので返還義務を命じられることはない」と反論してきた。果たして裁判所はどちらの主張を採用したか。
東京地裁2012/1/27判時2143号101頁は、YやYの親玉の言い分に軍配を上げ、破産管財人Xからの返還請求を棄却した。
これに対し東京高裁2012/5/31判タ1372号149頁は破産管財人Xからの返還請求を認容した(同じく破産管財人を勝たせた結論は、大阪地裁1987/4/30判タ651号85頁・大阪地裁1989/9/14判タ718号139頁・東京地裁2006/5/23判タ1230号216頁)。
理由は、破産管財人Xが破産管財人としての地位に基づきその職務としてYやYの親玉に返還請求する行動は、A団体自らがYやYの親玉に返還請求しようとする場面とは違うから民法708条を適用すべき場面にあたらないというものである。
上記東京高裁の理由づけは、明らかに別事件でありながら東京地裁の理由づけを強く意識して請求棄却を支持する理由の全てに反論しているので、一読の価値がある。
悪徳商法をめぐって、破産管財人が中間利得者に不法原因給付の吐き出しを求める事例は今後も続くであろう。早く最高裁による統一見解が出されることを望む。
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