#360 【一塔両断】横浜市防災行政無線 西谷中継局電波塔 | 関東土木保安協会

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ドボクネーター。
関東土木保安協会です。

久々に電波塔のネタでも載せましょうか。
やっぱり、鉄塔が好きなので。





横浜市に西谷浄水場というところがあります。
西谷浄水場は歴史的な上水道施設が残されており、建築的にも有名です。
また、敷地内には横浜水道記念館も開設されており、こちらでは近代日本の水道網黎明期から高度な上水道を整備し続けてきた横浜市の歴史を見ることができます。
水道とたかをくくる貴方、他では見れない豊富な展示に萌える筈ですよ。

その敷地内にドカンと設置されているのが、こちらの横浜市防災行政無線の西谷中継局の電波塔になります。
目的が上記の水道記念館だったのですが、予想外に設置されている鉄塔にうっとりしてしまい、こちらも素敵だったので記録したという訳なのです。

実は数年前に既に行っていた場所なのですが、今回ご紹介しましょう。



▲防災行政無線用の鉄塔。装備が充実している


防災行政無線というと何ですかという話なのですが、市役所や消防を中心とした地方自治体と関連機関が運用する無線です。
例えば消防署間や、市役所とその支所間などで結ばれているのが一般的でしょうか。

地方の中小都市ではこれほど立派な電波塔はないですが、それなりの規模の都市には必ず似たようなものが設置されています。
それ以外でも市役所や都道府県庁にヒョコっと建っていますね。

400万人の迫る人口を有すこちら横浜でも、勿論防災行政無線は各所ににょきにょきと伸びており、市民の不測の事態に備えた高度なネットワークを構築しています。
(文末のはまれぽ.comさんでは「防災行政無線は横浜にはない」という市の見解を載せていますが、これって住宅街にある様なスピーカーの付いたもののみについて尋ねた話で、何か市の回答と実際の設備とその記事の間ですれ違いを感じます。だって現にこちらにありますし)



▲見上げて萌える、充実感


さて、前置きはこれくらいにして鉄塔を見てみましょう。
鋼管のトラスで造られた質実剛健なボディ、これぞ所謂「ヤクショ」の鉄塔で一般的なスタイルであります。
この様な形状の鉄塔に円形の多段積み架台のスタイルは、国土交通省などでも見られるほか、電力会社等でも見られます。

地方自治体系の電波塔の見分け方と言いますか、特長は先が尖った形のパラボラアンテナが設置されている場合が多いので、そこがポイントです。
この鉄塔も同じく。
先端のレドーム状のアンテナはこの手では珍しいかと。時々国交省モノにありますが、防衛省関係にも多いかと思います。



▲鉄塔上段部拡大。多数のアンテナが搭載されている


横浜市の資料によると、こちらの「西谷中継局」は横浜市防災行政無線の統制局(横浜メディアタワー)からの送受信を行い、市内東側を中心としたエリアに電波を中継する重要な局とのことです。
そのため、他方向へのアンテナが設置されていますね。

上から2枚目の写真では、奥にみなとみらいのビル群などの横浜市の中心部が見えますが、あの付近から電波を送受信しています。



▲鉄塔中段部拡大。小さいアンテナが張り出している


上部は多数のアンテナがありますが、その下を見ていくと、こちらにも何やら四隅に張り出したアンテナが見えます。周辺一帯に向けた電波を発信していると見られます。
中継だけの局では見られない装備ですので、かっこいいですねぇ。


個人的な話ですが、私は昔から消防車の救助工作車に萌えていまして。
任務、そして装備が他の車両と大きく違っていますので、見ごたえがあります。
救助工作車は、ウインチをバンパーに装着している場合がほとんどですが、一昔前の車両は艤装がうまくできなかったのかサイズが大きかったのか、どんな理由かでバンパーを張り出している車両が多くありました。
そんな車両はバンパーの先端視認性を向上させるためにコーナーポールを立てていました。
別にこれは救助工作車に限った話ではないのですが、両脇にツンと立てていたのは救助工作車くらいだったでしょう。
あの装備が、暴走族の竹槍マフラーとまではいきませんが、何か分かりませんが威圧感と言うか、凄く魅力的に感じて好きなのです。

この様に、張り出しアンテナみたいな装備の電波塔を見るとウキウキするのは、コーナーポールの様な魅力があるからなのでしょうか。
いや、アンテナがあるからこそコーナーポールに萌えるのでしょうか。
どうでもいいですが。



▲電波塔下部の通信用施設


鉄塔の話に戻しましょう。
足下には電波塔へ続く大量の導波管を収容する、2階建ての通信用の建物が設置されています。
デザインが凝っていますね。
敷地内に従来からあったような、レトロで他との調和がとれた素晴らしい外観です。
外には小型ながら非常用発電装置も設置されており、災害時も万全の装備ですね。


いくつかのサイトでは、こちらの建物がそのレトロな外観からだいぶ前からある施設と言われていますが、はたしてそうでしょうか。
外壁の新しさ、コンクリートの打ち方、鉄塔の足下に収まる大きさなど、恐らく従来の施設を転用したものではなく、この中継局新設と合わせて竣工したものでしょう。
それにしても、ここまで「騙せる」のであれば意匠屋さんも本望でしょう。





取材は昼間に伺っていましたが、遠景のみなとみらいのビル群と電波塔の写りが非常に良かったので、夕焼け風に編集してみました。
霞んで映る電波網の親局と、その周辺に広がる摩天楼。そして西谷中継局。横浜の語り部さんでも呼んで一杯始めたくなりますね。


西谷浄水場は、浄水場という特性上、周囲より高いこの土地に建設されたと思われますが、それは電波塔にとっても好立地だったのですね。
これからも、この台地から横浜の発展を見守り続けることでしょう。



今回用いた写真はこちら↓
http://kanto-ce.tumblr.com/post/123893522486




<参考>

横浜市 : 西谷浄水場

横浜市 : 防災情報システム概要(pdfファイル)

はまれぽ.com : 横浜市には「夕焼け小焼け」が流れない