アメリカで50年間、世代を超えて読みつがれてきた、心があたたかくなるお話。
■訳者のことば
この本の素晴らしいところは、助けてもらった町の人たちの意識が変わるだけでなく、ツイグリーさん自身も、町の人たちを助けることで、大切なことに気づくという結末です。相手を助けること、受け入れることは、自分を犠牲にすることでも、損をすることでもなく、自分自身と、社会をより豊かにすることへつながる——そんなメッセージが、やさしく伝わってきます。
アメリカでの初版は1966年、1994年に復刊され、『きのうえの おうちへ ようこそ!』は、今も世代を超えて愛されつづけています。初めて読んだとき、大洪水という災害を描いているのに、なんて楽しく、幸福感に満ちた作品なのだろうと胸をうたれました。翻訳出版は難しいかもしれないと思った時期もありましたが、こうして日本の子どもたちに紹介することが叶い、うれしくてなりません。
豪雨で水浸しになった町の映像や、避難所についての報道が、近年とても多くなったように感じます。その中には、小さな胸を痛めている子どもたちも、たくさんいることでしょう。本書、『きのうえの おうちへ ようこそ!』が、助ける側、助けられる側、どちらの心にも寄り添う作品になれば幸いです。
おびかゆうこ
*引用ここまで*
訳者のことば、の、この部分。
“大洪水という災害を描いているのに、なんて楽しく、幸福感に満ちた作品なのだろうと胸をうたれました。”
私は
どんな状況に置かれようとも、
人には人を癒す力が
あると思っています。
それは、
兄を事件による自死で亡くした時、
警察が家で張り込みをしていた数日間、
緊迫した空気を和やかに変えたのは
当時生後10ヶ月だった長男の
無邪気に伝い歩きする姿だったから。
どんなに耐え難い状況でも、
人は人によって癒され、
そこに優しさや温かさを
感じることはできる。
その中でも、子供たちは、
楽しみを見つけることもできる。
夜の校舎を探検し、
楽しそうにお喋りしながら
友達同士で過ごしている。
ここの地域は
幸い浸水の被害や断水、停電もなく、
短時間の避難だったから、
楽しむ気持ちの余裕があったのは
かなり大きいのだけど。
でもそんな子供たちの
元気に過ごす姿に
不安な気持ちを紛らわせた大人も
きっといたはずだ。
私もモコと一緒に
何時間も校舎内を探検をした中で
廊下で赤ちゃんを
ずっとあやしているお母さんや
認知症が心配なおばあちゃんにも
積極的に声をかけた。
ただ声をかけるだけで、
救われる時があるから。
*
災害の時に思う、
人と人の繋がりの大切さを。