かんちゃんが産まれてしまった。
私のこのお腹の中から居なくなってしまった。
ご飯を食べる時、お風呂に入っている時、眠りにつく時、必ずお腹に手を当てて心の中で話しかけていたかんちゃんが居なくなってしまった。
ボーッとする。
しばらくすると母が来てくれた。
母にしても初めての経験、おばあちゃんとしても。
大丈夫か〜?がんばったな〜ってそれしか言いようがないし話が見つからないから、お互い平静を装って他愛もない話をする。
もうちょっとしたらかんちゃん連れて来てくれるみたいやねんと言った私に、母は『おかん、そんなかんたの事よう見らん
あかん、来る前に帰る。』
いつでもあまり動じず気丈な母だから正直驚いてしまった。
こういうのは1番にちゃんと見てあげる人だから母もよっぽどショックが大きかったんだろうなと思った。
それもそのはず、こんな急展開誰もが予想してないもん。
主人が到着。
主人もできるだけの笑顔で大丈夫か?って聞いてくれた。
私は主人の顔を見るや『ごめんなあ〜出て来てしまった…』と伝えた。
主人もなんでなんで…と慌ててお互いに沈黙。
その後も3人で少し他愛もない会話を。
涙が流れない、というより涙を流せない。
みんながみんなを思いやるから、涙を流せば誰もが止められなくなるんじゃないかと少なくとも私はそう感じていた。
看 『もう少ししたら赤ちゃんお連れしますね〜』
母は逃げるように帰ってしまった。
本当に怖かったんだろうなあ、、、
看護師さんがかんちゃんを連れて来てくれた。
かんちゃんは小さな箱に入れてもらっていて、白い布とその上からまた白い濡れタオルをかけてもらっていた。
看 『お母さんごめんね、少しでも良い状態で保存する為に上から濡れタオルとかかけさせてもらってます。』
タオルがめくられる。
目に映ったのは本当に本当に小さな我が子。
本当に今まで見たこともない小ささだけど、手足もしっかり指も五本に分かれていてその先には小さな爪もキレイについている。
頭もキレイなまん丸で顔もとってもとってもキレイ。本当に眠っているみたい。
そして何より、お股の先に小さなおちんちんが付いていた。
男の子だった。
とてつもなくやりきれない思いでいっぱいになった。
止めどなく涙が溢れ出てきた。
悲しいとかじゃない
愛おしくて涙が勝手に溢れてくる。
苦しかったやろうに、よく頑張って出てきてくれたなあ。
看 『お母さん、抱っこしてあげる?』
そう聞いてくれたけど、その時の私はかんちゃんを抱っこしてあげられなかった。
自分がどうなるのかわからなかったからだ。
こんなに離れて顔を見てるだけでも涙が止まらないのに、取り乱してしまうような気がしてたから。
主人がかんちゃんをその手に抱く。
抱く、といっても本当に少し強く触れたら潰れてちぎれてしまいそうだから手のひらに乗せるだけだけれど。
パパに抱かれて心なしか気持ちよさそうに見える
かんちゃん、よかったね。
パパの手のひらはどんな感じやったのかなあ