成年後見に関して違憲判決が出ました | 愛知県岡崎市の行政書士 伊東毅(たかし)

愛知県岡崎市の行政書士 伊東毅(たかし)

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愛知県岡崎市の行政書士 伊東毅(いとうたかし)です。

今の公職選挙法の規定によると、成年後見人が付くと、成年被後見人は選挙権を失います。
この規定は、法の下の平等などを保障した憲法に反するとして、ダウン症で知的障害のある名児耶匠(なごや たくみ)さんから訴訟が提起されていました。
昨日(3/14)、東京地裁で、この規定は憲法に違反するとの判決が言い渡されました。

成年被後見人の選挙権が失われることについては、僕はあまり意識していませんでしたが、選挙権を失った人にとっては、重大な問題であると思います。
自分自身、この問題をしっかりと理解したいと思ったので、新聞記事や判例の要旨を読み、自分なりに判決を要約してみました。


選挙権を付与しないとした公職選挙法の規定は憲法に反するか?
 ↓
憲法の趣旨からすれば、選挙権を制限することは原則として許されない
 ↓しかし、
例外的に制限するなら「やむを得ない事由」が必要
 ↓
選挙権を行使するためには、事理弁識能力が必要
 ↓
この事理弁識能力を欠く者に選挙権を与えないのは合理性を欠くとまでは言えない
 ↓では、
成年被後見人は、事理弁識能力を欠く者なのか?
 ↓
民法では、事理弁識能力を欠く者とは位置づけてはいない
 ↓また
後見開始の審判をする時に判断するのは「財産管理・処分の能力」である
 ↓
これは選挙権の行使に必要な事理弁識能力とは明らかに異なる
 ↓したがって
成年被後見人は、事理弁識能力を欠く者とは言えない
 ↓また
不正投票の恐れもあるが、選挙の公正を害するとまでは言えない
 ↓さらに
成年被後見人から選挙権を奪うことは、国際的な流れに反する
 ↓以上より
「やむを得ない事由」があるとは言えない
 ↓よって
選挙権を付与しないとした公職選挙法の規定は、違憲・無効である



裁判官は最後に、こう語りかけたそうです。
「名児耶さん、どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください。堂々と胸を張っていい人生を生きてください。」

とても温かい、血の通った言葉だと思います。
人の心の痛みを本当に理解されている裁判官もいらっしゃるのですね。
今後、早急に法律改正がなされることを望みます。

提訴した原告の方は、この判決が出るまで、並々ならぬご苦労があったのだと思います。
20歳になれば当然のように与えられる選挙権ですが、大切なものであり、尊いものであることを改めて認識させていただきました。