久しぶりの更新になりますが、自分自身の考えの備忘メモの意味も含め、記事を書いておこうと思います。


コーポレート・ガバナンスとは何か?(公的な意味)

ビジネスの世界において、みんながよく知っている言葉であるけれど殆どの人が実態を説明できない言葉の一つではないかと思います。

東証が出しているコーポレートガバナンス・コードという、上場会社が守るべき指針をまとめたものがあるのですが、この中ではこういう定義づけがされています。

本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。

また、同コードの中において、その目的として次のものが挙げられています。

・会社の持続的な成長
・中長期的な企業価値の向上


つまり、コーポレート・ガバナンスとは、持続的成長と中長期的な企業価値向上を図る目的を実現するため、会社が、ステークホルダーの立場を考慮して適切な意思決定を行うための仕組み、と言えるのではないかと思います。


コーポレート・ガバナンスとは何か?(目的に関する私見)

ただ、改めて見ると曖昧で、具体的に何をすればいいのかがさっぱりわからない、という問題点が出てきます。

詳細は割愛しますが、個人的にコーポレート・ガバナンスを研究し、監査役として実践してきた経験から考えると、コーポレート・ガバナンスの目的の一つに、「会社の存続」があるように思います。

特に上場会社であれば規模も大きく、利害関係者も多数となり、ひとたび倒産となると社会的損失が甚大です。
コーポレートガバナンス・コードの詳細を見てみると感じますが、「変化の激しい世の中の流れについていきなさい」という意図を感じることができ、即ち会社の存続が求められているのではないかと思います。

ここまでをまとめると、コーポレート・ガバナンスの目的は以下の三つと言えると思います。

・会社の持続的な成長
・中長期的な企業価値の向上
・会社の永続(100年先、1000年先も存在できること)




コーポレート・ガバナンスとは何か?(目的達成のための具体的対応に関する私見)

では、先ほど挙げた三つの目的を実現するために何をすればいいのでしょうか?
これもコーポレートガバナンス・コードを読み込んでいくと感じるのですが、求められていることは「自分自身の会社に、理論的に第三者視点で丁寧に向き合うこと」だと思います。

例えば、社長人事です。

上場会社は社会の公器と言っていい存在ですが、そうであるならそのトップの人事は公明正大に行われるべきでしょう。
しかしながら過去の日本企業では、現社長が社長室に子飼いの部下を呼び、「次期社長は君しかいない!」と言って決まっていたのが現実です。
これは、日経新聞の「私の履歴書」を見れば明らかなのですが、多くの社長人事はこうやって決まっています。
しかし、これは冷静に考えればかなりまずい決め方と言えます。

上場企業のトップを選ぶのに、社内で何の基準も設けておらずトップの鶴の一声で決めてしまう。
世間では常識なのかもしれませんが、別の見方からすると、「現社長による、社会の公器たる上場会社の私物化」と言えます。

そして、こういう私物化をする会社が永続できるのか、いやできるはずがない、という思想からコーポレートガバナンス・コードは書かれています。(コーポレートガバナンス・コード 補充原則4-3② 4-3③)

社長人事は一例ですが、会社の常識、慣例、伝統、先例、馴れ合い、トップによる勘のみ経営、こういった合理的でない要素を今一度見直し、上場企業としてふさわしい合理的な仕組みを入れる、というのがコーポレート・ガバナンスの精神であろうと考えます。


以上をまとめると、コーポレート・ガバナンスとはこうなります。

コーポレート・ガバナンスとは、会社の持続的な成長、中長期的な企業価値の向上、会社の永続を実現するため、会社が、論理的に第三者視点で自分自身の会社に丁寧に向き合うこと、及びそのような自省ができるための仕組み


コーポレートガバナンス・コードは25ページくらいの冊子ですが、社長や社外取締役や監査役を選ぶ基準を設けなさいとか、自社が利益を出せているのはだれのおかげか認識しなさいとか、世の中の流れについていける体制を整えなさい、というような思想がちりばめられています。
コーポレート・ガバナンスが理解しにくい難解なものであるという理由には、「常識を疑わねばならない」という、常識にどっぷりつかった人には盲点となる要素があるからではないか、とも感じています。


まとめ

・コーポレート・ガバナンスの目的は、会社の持続的な成長、中長期的な企業価値の向上、会社の永続(100年先、1000年先も存在できること)である。
・その目的達成のための手段は、論理的に第三者視点で自分自身の会社に丁寧に向き合い、自省すること。
・自省するには「常識を疑う」必要があるため、常識にどっぷりつかった人であればあるほど、コーポレート・ガバナンスは理解しにくい。