ニュース記事を見ていて気になったのでブログに書きます。
海外展開する大企業で〇億円の申告漏れとか出ますが、会計・税務の専門家としては基本的に「見解の相違」という風に見ます。
これは簡単に言うと、国税側と企業側で税法の解釈の違いがあり、それがいついくら納税するかという違いに表れるもので、一般的に言われる脱税とは事情が異なります。
「そんなことがあるのか、国が間違えるはずはないだろう。」と思う読者もいるかもしれませんが、税法にはグレーゾーンが多くこういうことは間々あります。
また、海外展開大企業の場合、よくあるパターンとしては移転価格税制関係の指摘なのかなと思いましたが、ソフトバンクGの場合は少し事情が違っていました。
実際の指摘事項
記事を見ると、大きく以下になります。
①海外子会社への成功報酬支払時期ずれ
②タックスヘイブンがらみ
③外貨建て借入金の円への為替換算誤り
推測も含めて簡単に説明します。
詳細解説
①は、成功報酬の支払い(経費計上)がまだ認められなかったという指摘です。
経費は債務が確定したときに税務上の経費(損金)になるというのが原則ですが、この原則に照らし、債務が確定していないとき(返金等の可能性が残るとき)に経費計上してしまった、というものだと思います。
無いことはないですが、結局は翌期以降で同額が経費になるので、納税者側としてはほとんど痛くない指摘です。
②は、少しややこしいのですが、「法人税率が異常に低い海外にペーパーカンパニーを作り、そこで利益を発生させて法人税率を免れた場合、実質的に日本の法人税を免れたことになるからペーパーカンパニーの利益にかかる税金を日本で払いなさい」というものです。
これをタックスヘイブン税制というのですが、実際の現場ではないことはないですね。
ちなみに、少なくない方が誤解していますが、「タックスヘイブン(租税回避)」であって「タックスヘブン(税金天国)」ではありません。
多くのケースでは税逃れや資金逃避としてタックスヘイブンが使われますが、投資が優遇されているとか、配当源泉税がかからないとかの投資メリットがある地域もあり、税率が低い地域にペーパーカンパニーを作ることはなくはないですね。
この指摘は期ずれではなく純粋に納税額(所得額)が上がるものなので痛いと言えば痛いですが、見解の相違が良く見られるところではあります。
一方、少しお粗末なのが③の為替換算ミスです。
外貨建ての債務(借入金)は、原則として期末の為替レートで換算替えを行い、帳簿価額との差額は当期の費用(損金)にするのが原則です。
ヘッジを取っていたのかわかりませんが、日本国内同士の会社でドル建て借り入れをやったようですから、ヘッジは取っていないと見られます。
そうなると、ただ単に期末の為替レートを入力し、あとは全自動で(会計システム上で)自動で換算替えが行われるのが普通です。
にもかかわらず多額の指摘を受けたということは、この評価金額を入力し忘れた、そして経理部チェックをスルーした、という内部統制上の問題と思われます。
あまりこういう指摘は聞かないのですが、税務上はやはり期ずれなので痛くはありません。
しかし、内部管理体制の不備を露呈したわけで、税務以上に恥ずかしい誤りであったと思われます。
まとめ
・「申告漏れ」は脱税とは違う
・よくある指摘は「移転価格」など
・一方、内部統制の不備を疑わせる恥ずかしい誤りもあり、監査役としてはそれをきちんと咎めることが必要。