自閉症育児部門 第6位
発達障害部門 第8位
昨日に続き(昨日の記事はこちら )、自閉症について、良く知らない人達に、どのように伝えるかについて、まとめてみたいと思います。
【「高機能」って呼ぶくらいなら、不便はないのでは?】
いいえ、そうではありません。「高機能」と呼ばれているのは、IQ(知能)が比較的高いと言う事を指していますが、決して、障害特性が軽いという意味ではありません。中にはIQが120を越える方もいますが、たとえそうであっても、この人達にも自閉症スペクトラム障害の特性があり、多くの困難を抱えてらっしゃるのです。
映画「レインマン」のようなカナータイプは、見た目にもわかりやすい障害症状を示します。言葉数も少なく、オウム返しと言って相手の言う事をただ反復するだけの人もいます。ほとんど人と目をあわすこともないかもしれません。
それに反して、「高機能広汎性発達障害」の方々は、外見からはほぼ判別が付かない方が多くいらっしゃいます。親ですら気付かずに、そのまま成人になってしまったというケースも多くあるのです。
そこまで成長するまで気づかれなかったのだから、大丈夫ではないかと考えるのは早計です。障害に気づかれずに育った場合は、本人はずっと周囲との違和感を抱えており、「自分はみんなとは何かが違う」と悩んでいることが多いです。障害特性から、集団になじめず、友人をもてないことが多い上、特性上、不器用だったり、苦手な事も多く、学習障害を併発しているケースもあります。原因がわからないまま、「自分はダメな人間なのだ」と、自己否定感を積み重ねている事もあります。
また、一方で、学業的には問題がなく、学力優秀で一流大学を卒業してこられる方もいます。しかし、彼らにしても、対人関係やコミュニケーションの障害は抱えており、孤独な学生生活を送ってきた人が多いです。
そして、就職した後で、職場に上手く適応できず、職を転々とした後に、うつ病に掛かるなどして精神科に初めて行き、そこで「高機能広汎性発達障害」であると診断を受けるケースも少なくないのです。
【アスペルガーの人って、気遣いがない?やる気がない?】
いいえ、それは誤解です。外見上、障害があるように見えないので、出来なくて困っていることが周囲には判らず、わざとやらないとか、やる気がないなどと誤解を受けやすいのです。
高機能発達障害の場合、見た目には障害の有無がわかりません。 しかしその人の内面には重い障害が存在します。 この二つの条件により、発達障害を持つ人の行動は、 外からは不可解に見えたり、誤解を受ける事が非常に多いのです。
よく言われるのが、人が嫌がることをハッキリと言うことで、 遠慮や配慮がないと取られたり、 失礼な人だと思われてしまいがちです。
発達障害があると、コミュニケーションに問題があり、 自分の言った事を相手がどう感じるかが判りにくい人もいます。 結果、女性に「あなたは太っていますね」と言ってしまったり、 人と待ち合わせをして数分遅れただけなのに 「3分遅れましたね。」と告げてしまいます。 それが、遠くから来てくれた目上の人の場合は、 「わざわざ来たのに、わずか数分のことでなんて失礼な!」となる場合もあります。
いずれも、本人にしてみれば、 事実をそのまま発言しただけなのですが、そうしたことをすると 他人の感情を害することに、想像が及ばず言ってしまいます。 その場や相手によってのTPOに合った行動が出来にくいのです。
また、もうひとつありがちなのが、 障害ゆえにできないことを、やる気がないとか、 不真面目と取られてしまうことです。
発達障害があると、能力に凸凹が大きいのです。得意と苦手の差が大きい訳です。ところが、周囲からは「アレはできるのに、これが出来ない訳がない」とか、
「やりたい事だけ、選り好みをしている」と見られがちです。 また、障害特性上どうしても出来ないことに対しても、 「やる気がないから、出来るようにならないのだ」とか、 「集中力に欠けるから、そうなるのだ」などと、改善出来ようもない事を求められてしまいます。
発達障害を持つ人たちにとって、 外見からそれが判りにくいばかりに、 障害特性上、どうしようもない苦手や、 直そうと思っても、簡単には直せない特徴を、 性格の問題にされてしまうことは、大きな生きづらさとなっていいます。
その結果、この障害を持つ人たちは、 過剰に緊張したり、無理を続けたりして、過剰適応の状態になりがちです。結果、うつ病になったり、やがては自己否定感を積み上げて、 生きる気力を失ってしまったりするのです。ひどいケースでは、他の精神疾病に至ることも少なくありません。
元来は、この障害がある人には、
いわゆる「悪気」は無いか、少ないと感じます。
しかし、障害に対する理解がないばかりに、
こうした悲劇は繰り返されています。
【自閉症って、引きこもり!?】
自閉的であるという言葉のイメージが、 「引きこもり」を連想させることがあるようです。 しかし、発達障害と引き篭りには、元来、関連性はありません。
ここで「元来」と言ったのは、「本来は関係ない」という意味です、ところが現代では、ニートや引きこもりの中に、相当数の発達障害の方々が含まれていると言われています。人口に対するこの障害の発生率は、統計や学説にもよりますが、0.5%~2%程度だろうと言われています。しかし、ニートや引きこもりに占める割合は、何割にも及ぶそうなのです。結局、不登校に追い込まれたり、成人しても安定就労できない現実が、今の発達障害にはあるということなのでしょう。
その一方で、現在50歳以上の人たちにあっては、発達障害を持っていても安定就労をしている人たちが多く居ます。彼らはその高い技能を買われたり、熱心で真面目なところや、高い知的能力を評価されたりして、社会に役立つ存在として暮らしてきたのです。また、そんな事ではなくとも、町の工員や職人として、1人の庶民としての人生を全うされた方も多くいらっしゃいます。
時代の移り変わりがそこにあるとはいえ、なぜこんな差が生まれてしまうのでしょう。
その理由について考えてみると、いくつかの要素が思い浮かびます。
・社会が第3次産業(サービス業)中心になり、発達障害の特性を持っていても出来る仕事が激減していること。第2次産業の企業にあっても、製造部門は海外におかれることが多く、ホワイトカラー的仕事ばかりが求められること。また、数少ない製造部門にあっても、多品種少量生産が中心で、仕事は変化に富んでおり、何をするにも状況判断能力を求められること。
・景気の悪化やグローバル化で、職場環境は厳しくなる一方で、「失敗が許されない」「整理整頓が求められる」「周囲との協調性を重視される」など、職場の雰囲気がこの障害を持つ方々に合わないこと。
・職能を生かした専門職よりも、部門調整的な仕事や、外注先を活用してマネージメントが中心となるような仕事がほとんどであること。
・核家族化などで社会のコミュニティーが崩壊するなど、個性的な人達を包み込むようなコミュニケーションが失われつつあること。
・定型発達(健常者)のもつ常識を外れる人達を、すぐさま疎外してしまうような風潮が蔓延していること。
こうした時代背景の中で、この障害を持つ人達は、日頃の人間関係からも外されてしまい孤立しがちです。そして、職場では、特性上苦手なことを要求された挙句、失敗体験ばかりを積み重ね、やがて就労意欲や生きる気力を失ってしまうようなのです。
しかし、かつてはこの方達が持っている、人としての純粋さや真面目さ・熱心さは、社会の中で大切な存在として、有効に活かされてきたのだと考えます。こうしたものを活かせず、皆が一律同じでなければならないような風潮が果たして良いものか、我々はもう一度考え直す時期に来ているように感じます。今の社会は、定型発達(健常者)にとっても、生きづらいものになっているように感じます。効率化や経済性ばかりを追求しすぎた為に、切り捨ててきたものが、人々の暮らしに暗い影を落としているように感じます。こんな時代だからこそ、人としてのあたたかい関わりを、全ての人がもう一度取りもどしていけないものかと思うのです。
結局のところ、発達障害のある人にとって生き易い社会は、
定型発達(健常者)にとっても、生き易い社会ではないでしょうか。
僕自身、この障害に関わることによって、
こうしたことを強く実感するようになっています。
強く意識し考えるようになっています。
僕の人生にとって、この障害と出会ったことは、
自分自身の大きなターニングポイントになっているのです。
それと同様に、今の社会全体にとっても、
切り捨ててしまったものを思い起こし、
また皆が、それを取り戻す為にも、
この障害を持つ人達の存在が、
とても大切なのではないかと、僕は強く感じるのです。
さて、以上をもって、ひと区切りとしたいと思います。
書き終えてみて、当初の震災被害者の中の当事者さんへの誤解を防ぐ・・・というところからは、少し大きな範囲に対してのものに成ってしまったかもしれません。その点への反省も少しありますが、この文章が、世間の誤解を解くところで、少しでもお役に立てればと思い、このままUPしたいと思います。
【2011.3.24 追記】
一度締めと書いたのですが、どうしても書き足したいことが浮かんできました。明日の夜「自閉症とは何か(3)」としてUPいたしますので、ご覧下さいね。
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