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発達障害部門 第2位


今日は、定型発達と当事者さんの会話のやり取りの中で生じやすい、当事者さんが「人の気持ちが判らない」といわれる状況についてのお話です。このテーマは狸穴猫さんのブログでも最近触れられているようですが、僕なりのアプローチで語ってみますね。


最初に結論を言うと、定型側からは「この人は、ひとの気持ちもわからないのか!」という感情を抱くケースというのは、実は、定型側が想像する範疇の態度や発言が、当事者さん達から返って来ない時である場合が多いようです。

実際に人の気持ちが判っていないのではなく、

定型側にそれを感じさせるような反応が出来ない為、

誤解されている・・・というケースが非常に多いように感じます。

そして、これは、定型の会話プロセスに、その原因と真相が隠れています



【定型発達の会話プロセスから】


本シリーズの1回目に、会話プロセスの例をあげました。
会話中の定型発達の脳内では、

無意識のうちに、相手の考えや状況を、

その言葉や顔の表情、身振りなどから想像し、

自分の返答を、複数の選択肢の中から、

選びながら進めるというプロセスがあると書きました。

ところが実際は、これだけではなく、

更にもう一歩踏み込んだプロセスが、進行しているのです。


それは、自分が返答を選ぶ時に、

その返答をした後に、相手がどう返事をしてくるか

・・・まで想像して、判断基準としているというプロセスです。



【会話における定型思考の例】

たとえば、次のような会話での脳内プロセスを再現してみましょう。


AさんはBさんと会話をしています。

A:「ねぇ、こないだ頼んだ仕事、あれ、忙しそうだしこっちでやろうか?」

今回も、Aさんは言った瞬間に、無意識に相手の分析が始まっています。

B:「そうねぇ!?どうしようかしら・・・」


今回もBさんははっきり返事をしません。

どうしようか迷っている様子で、妙な間が2人の間に漂います。


そこでAさんの脳内では、次の言葉を捜し始めます。

(A:やっぱり、すぐには仕事が出来そうにないのね。

 聞いてみてよかった・・・・・。)

こう思考した瞬間に、Aさんの脳では、次の発言の候補があがってきます。

1.「本当にダメなの?言ってはみたけど、本当は出来そうに思うけど」と少しつっこみ気味に問うパターン

(元々、引き受ける気はなく、期日までに仕事が終わってないと困るので、ちょっと聞いてみた時に、こうした返答をぶつけることも多いでしょう。)


2.「実際、どうなの?忙しければ、事情を話してよ」と相手の事情の質問をしつつ、状況を見極めようというパターン

(本当はこちらも忙しくて、容易には引き受けたくない場合、まずは相手の状態を聞いてみようという姿勢)

3.「遠慮なく言ってよ!何とかなるから、引き受けようか?と中止を前提に助け舟を出すパターン

(自分の仕事の状況が、手助けできそうか考えつつも、何とかなりそうなら、こうした返答が採用されるでしょう)


そして、Aさんは思考します。

(1だと、ちょっとキツイよね。相手も「なんだ、言ってみただけかぁ!Bさんなら『それなら、間に合わせてよ!ってはっきり言ってよ』なんて、言い返されそう・・・」、この台詞はまずいわね。2だと、相手の意思をそれとなく確かめられるし、無難よね。3なら、相手も頼みやすいし、こう返す手もあるわね。)

Aさんは、迷います。

(どうしようかな、2がいいか、3がいいか。ここは自分の仕事の状況で決めるしかなさそうね。今、こっちも忙しいし、Bさんにはいつも指導してあげてるんだから、まさか、厚かましく「お願いします」なんて、言ってこないわね。もし、頼んでくるとしても、「実は、かくかくしかじか・・・」と事情を丁寧に説明してくるよね。心底、頼まれたら、しょうがないから、引き受けるか!)

このように想定して、どれが返ってくる確率が高いかを想定したり、

自分にとってはどれが返ってきてほしいのか、

また逆に返って来てほしくないのかなどを考えているのです。


そして、こうした全ての候補を検討した後に、今返す台詞を選ぶわけです。



【想像した反応を待つ、定型発達の行動パターン】


当然、こうしたプロセスは、ほとんど無意識におこなっています。

そしてこのケースでは、2が選ばれました。

A:「実際、どうなの?忙しければ、事情を話してよ」

Aさんは、どちらにしても、恐らく恐縮して「自分でやります」と言ってくるか、

「かくかく、しかじか・・・」と相当恐縮しながら、

事情を説明してきて、相談されると想像しています。

2人の関係性や、互いの忙しさを考えて、そう想像しています。


ところがBさんの応えはこのようなものでした。

B:「なんだか忙しくって。じゃぁ、お願いできますか!」

こういったBさんは、相手のAさんの反応にギョッとします。


Aさんの顔は少しこわばり、またもや沈黙が漂ったからです。



【想定外の返答に、定型が感じる怒り】


Aさんは思っています。

(「なんだか、忙しくって」って、なによ。

 忙しいのはあなただけじゃないわ。

 この子は、なんでも甘えてくるだけなので。

 言って損した! 信じられない!


 まだ、恐縮して言ってくるならまだしも、

 こんなにシレ~っと言ってくるなんて、

 そんな子だったのね。)


Bさんにしてみれば、実際仕事がこなせるか不安でもあったので、

助け舟をもらったと思って、言葉通りにとって、甘えただけでした。

でも相手の反応をして、何かまずいことを言ったことだけはわかります。


どうしたら良いものかも浮かばず、嫌な沈黙が続きます・・・・。


定型側が、「この人、こちらの気持ちがわかってる!?」と思うときって、このように相手が自分の想定外の返事を返してきた時が、多いように思います。


例えば、もし

1)「実は、昨日も一昨日も、次々と部長に仕事を言われていて。

  すごく困ってはいるんだけど、Aさんも忙しいんじゃない?」

・・・・などと、言ってくれば、Aさんも沈黙することはなく、

相手の相談に乗るつもりだったでしょう。

それを、躊躇なく依頼してくるBさんの態度は、

Aさんにとっては、想定外の返事です。


【何らかの意図がある定型の会話】


このほかにも、例えば、Aさんは、

「Bさんが自分に恩義を感じているだろう」と思って言葉をぶつけたのに、

相手から、まったくそんな返事が返ってこなかったらどうでしょう。

或いは、忙しくて困っているのはAさんの方かも知れません。

素直に、「忙しいんだけど、今、暇?」とは聞けずに、

遠まわしに話しかけている場合もあるかもしれません。

いずれにせよ、定型の発言には、その相手の意図があると言うことです。


そして、これが定型同士なら、その相手の意図をくみ取りあいながら、

互いの状況をすり合わせて、

仕事の分担を調整するようなプロセスがあるわけです。

無碍もなく、「じゃぁ、お願い!」なんて言った日には、

「もう、二度とあの子には、相談しないわ!」ということにもなりかねません。



【誤解が、不安を生み、社会適応を困難に余計にする】


このように、当事者側が、定型の予想する態度や反応を返せないことで、

性格や人格までをも疑われてしまうケースは、

社会に結構多いように思います。


また、こうした場合では、当事者側にしてみれば、

自分がなぜ相手に嫌な思いをさせてしまったのか、

中々判り難いように感じます。

「わたしって、実は嫌われている!?」と、

あらぬほうに考えてしまうこともあるでしょう。

こうしたことが続くと、次は、相手の言葉を深読みするようになり、

益々、即答が出来なくなり、会話の妙な間が日常化することもあるでしょう。


こうした迷いが、当事者側に出てくると、

その人と話すことすら、段々コワゴワになっていき、

その社会適応は、当事者側に、精神的負担が掛かる状況となってしまいます。


【繰り返される齟齬・行き違い】


当事者さんにとっては、

このように精神的に安定できない関係は苦手なのだと考えます。

安心して本音で関われないとプレッシャーを感じることは、

余計に、能力の目減りに繋がります。


相手に配慮があれば、

あまり遠まわしな言い回しや、婉曲的な表現は避けられ、

言葉を素直に理解して、素直に話せるような関係が作られ、

当事者側にとって、プレッシャーのない職場環境が整えられることになります。

ところが、実社会では、

定型側と、当事者側には、例示のように、互いに誤解したままで、

なにかかみ合わないような齟齬が、結構多いように感じます。


その結果は、大抵、当事者側にいやな経験として積みあがり、

当事者さんの自己否定や、過剰適応に繋がりやすいように感じます。

こうしたことが互いに解決していけば、

発達障害の当事者さんにとっても、
もっと生き易い世の中になるんじゃないかなぁと、

つくづく思ったりするのです。

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