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先日、「当事者さんのメールはなぜ長くなってしまうか」という記事を書き、大きな反響をいただきました。今後、発達障害の代表的な障害ごとに、それらに起因して起こってしまう不思議な行動について、原因を探っていくシリーズを始めたいと思います。最初に取り上げる特性は「想像性の障害」です。
発達障害の三つ組では、社会性の障害、コニュニケーションの障害、こだわり行動の3つが挙げられていますが、ぼくは、この3つの困難の多くの原因が、「想像性の障害」と「抽象概念の把握の困難」によって引き起こされていると考えています。
そして、当事者さんにとっての実生活の困難が、これだけなのかと言うと、そこについての異論は、先日記事(→詳しくはこちら )にしました。しかし、ここでは、それはまず脇に置き、主要な困難である三つ組を引き起こす主因である「想像性の障害」について掘り下げてみたいと思います。
まず、「想像性」とは何かについて考えます。
人の生活において「想像性」は沢山の場面で働いています。
今日は、他人の気持ちを読み取るところについての「想像性」の話です。
つまり、
「他人には自分と違う思考・感情がある事を理解した上で、
それが何かをリアルタイムで読み取り、分析していくこと」です。
簡単に言うと、
「相手が何を思っているかについて、
その言動や顔の表情、あるいは目線の移動、
身振り手振りなどから、感じる能力」ということです。
定型発達の場合は、この能力はほぼ無意識に働きます。
特に会話においては、瞬時に、頻繁に、想像力を発揮し、
自分の言動・行動を調整していきます。
例えば、ひとつの会話においての想像力の働かせ方を示してみましょう。
AさんはBさんと会話をしています。
A:「ねぇ、来週○○先生のイベントがあるんだけど、行かない?」
こうAさんは言った瞬間に、無意識に相手の分析が始まっています。
B:「そうねぇ!?どうしようかしら・・・」
Bさんの目線はこちらに向かず、すこし周囲をさまよっています。
返事はすぐになく、妙な間が2人の間に漂います。
Aさんは思い出します。
(A:そういえば、Bさんって、○○先生とはあんまり仲良くなかったわ。
しまったぁ、変なことを言い出してしまったわ)
こう思考した瞬間に、Aさんの脳では、次の発言の為の思考が始まります。
まず、最低でも2~3パターンの発言を思い浮かべます。
1.「どうしたの?何か行きたくない理由でもあるのかしら?」と問いかけるパターン
2.「来週って、忙しかったっけ?」と相手の事情の質問をしつつ、無難な逃げ道を作ってあげるパターン
3.「そういえば、こないだも一緒に行ったばかりよね。出費も掛かるし辞めましょうか?」と中止を前提に助け舟を出すパターン
そして、Aさんは思考します。
(1だと、ちょっと露骨で、会話は深みにはまり、余計に沈黙になるわ。2だと、相手の意思をそれとなく確かめられるし、無難よね。でも、表情を見る限り、問われて困っている感じだし、行く気はなさそうね。それなら、3で、断りやすい雰囲気を作ってあげたほうがいいわ!)
さて、決まりました。Aさんは発言します。
A:「そういえば、こないだも一緒に行ったばかりよね。出費も掛かるし辞めましょうか?」
B:「そうねぇ、給料前だしやめておくわ」と笑顔で返事。
さて、2人の妙な間は回避され、トラブルになることなく、会話は終わります。
今回の様なAさんの思考は、ほぼ無意識のうちの行われます。ほんの数秒のうちに判断は終わります。場合によっては、2手3手先まで思考して、次の発言を決めることも稀ではないようです。人と人のコミュニケーションは、このように相手の立場を適切に想像することで、相手の困りごとや聞かれたくないことに余り踏み込んだりせずに、当たり障りなく済ませていくようなところがあります。特に家族や親友でない、薄い交友の人達との会話において、こうしたリアルタイムの想像性は大切です。
社会を生きていくと、関わるほとんどの人はこうした薄い交流の関係になりますので、特に、日本社会においては、こうした無難な会話が出来ない事は、いびつなコミュニケーションを生んでしまい、結果、交友関係は狭くなってしまいます。
人によって想像性の障害の軽重はありますが、
三つ組の主因でもあることから、
想像性の障害は、発達障害の根幹を成す障害
であると考えますので、多くの方がこれらに苦手を持ちます。
その結果、上記の会話において、相手の困惑した表情を読み取れないと、「ねぇ、いきましょうよ!」としつこく言ってしまったり、「どうしたの、何か困りごとでもあるの?」と相手にとって言いにくい事を、どんどん聞いてしまうことになりがちです。
こうした行動は「常識のない人」「配慮のない人」「しつこい人」と誤解を招きやすく、性格の問題として、交友関係の大きな阻害要因となります。こうしたことを繰り返せば、気が付けば、周囲に誰も居なかった・・・ということを引き起こしてしまいます。
当事者さんにとっては、定型のように「想像性」を働かせるのは難しいようで、ましてやリアルタイムに判断していくことが出来ない事が多いようです。数時間、あるいは数週間、そして時には数年経って、「あの時のことは、そういうことだったのか!」と気付くこともあるといいます。脳の働きの違いが、こうした現象を生むのでしょう。
「想像性の障害」の一番単純な要素というと、「サリーアン課題」で試される「心の理論」でしょう。定型発達児の場合4~5歳で獲得する「他人は自分とは違う経験を持ち、理解している過去も違う」ということがわかる能力ですが、発達障害児の場合は、多くが10歳前後まで、獲得が遅れるといわれています。
しかし、この能力が獲得出来ても、成人の会話というのは、もっと複雑です。社会の暗黙のルールも、「サリーアン課題」程度の能力ではとても対応しきれるものではありません。
「想像性の障害」は実生活においては、発達障害に多くの困難を引き起こします。またその多くは、例のように、一見「常識がない人」とか「配慮のない人」「しつこい人」などと、性格の悪さと思われ、誤解を受ける原因となることが多いです。
さて、今回は日常会話における定型発達の能力と、それがないことによる弊害がどのように起こるかについて、触れてみました。当事者さんがお読みいただけば、定型の脳内で起こっていることと、自分との違いを知っていただけると思います。定型の方に読んでいただけば、無意識に成されていることなので、改めて驚きもあったかと思います。
今後も、このように、対人関係において、困りごとを引き起こす主因のひとつである「想像性の障害」について、今後、生活レベルの例を挙げながら、当事者さんの困難がどのように引き起こされるのかについて、考察・分析していきたいと思います。
お楽しみにしてくださいね。
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