さて、写真のテストに話題を戻しますね。今回は、正解を明かしますが、それだけをみて、「なぁんだ、そんなことか」と思わないで下さいね。大事なのは、正解ではなく、それを導き出す認知パターンの違いなのです。少し長い連載物になりますが、お付き合いくださいね。
2010.11.8 追記有り:Dさんのご回答を追加しました。
(この記事は、こちらを筆頭 とする連載ものです。)
【視知覚認知テストからみる発達障害のこだわりの実例 目次】
(4)C君の認知(認知のゆがみの実情)
(5) C君の認知(10歳頃の成長の不思議)
テストと書きましたが、あれは何のテストかというと、「視知覚認知度(もしくは認知パターン)テスト」なのです。レベルとしては、めちゃくちゃ初歩編にあたると思います。
(ただし、最初にお話しておきますが、恥ずかしながら僕は、心理学専攻でも脳科学者でもないので、専門的な分析ではないことをご容赦ください。また最新科学ではすでに覆された常識を語っているかもしれません。その節はご失笑ください。また、4人のご回答については、本人許可を頂いた上で、公開しております。)
◆Aさん 30代 女性のお答え
クリスマスにプレゼントをもらって、親に見せながら喜んでいる女の子。
所要時間:5秒程度
この方は、定型発達の方です。認知度としては、80(~120)点。
説明に、「朝」が抜けていること。そして、サンタからのプレゼントであることには気付いていると思われるが、説明していないところで80点としています。この説明が文章にあれば120点でした。でも、あえて説明しないところが、定型的であるとも言えます。(そこまで語らなくても、状況説明には事足りると自動判断している可能性も感じます。)
◆Bさん 30代 女性のお答え
クリスマスの朝、
サンタさんから届けられたプレゼントを開けて、
「パパ、ママ、見て見て!
こんなものをもらったよ!」
と興奮して(喜んで)親に見せている女の子の図。
所要時間:用心深く絵とにらめっこして、数十秒(本人弁)
回答は120点満点。
しかし、この答えを導くのに時間を要しているところからも、年齢とともに認知能力とスキルがあがり、状況認識能力が高くなった発達障害の方という分析が出来ます。実際、この方は、アスペルガーの診断を受けておられます。
◆C君 8才 男の子(ちなみにうちの息子です。)
彼の台詞をそのまま書きますね。
息子「なにか、見せてる」(たぶん、女の子のことを語っていると思われます)
息子「あっ、クリスマス」(赤い靴下を見て気付いたと思われる)
そして、数秒のち・・・・
息子「ほらね、これ。(といいながら、画面中央のクリスマスリースを指差して)やっぱり、クリスマスや」
さらに、数秒の沈黙ののち・・・
私 「他になにかない?」
息子「ない・・・・・」
所要時間:30秒程度
認知度 30点
幼さという要素を加味しても、非常に浅い認知であることが示されています。パーツを認知して判断することは出来ても、パーツとパーツの関連性には考えが及ばない様子が見て取れます。ちなみに、うちの子は「特定不能の高機能広汎性発達障害」の診断を受けています。
◆Dさん 高校生のお子さんを持つお母様です。
クリスマスの朝です。
イヴの晩、サンタさんに届けていただいたものや、
家族や知人からのプレゼントを空けることができる朝。
待ちに待った朝です。
早速、大きな靴下に入ったプレゼントを1つづつ確認しています。
1点ごと、期待を込めて、靴下の中身を確認しています。
「あ、ママ、見て見て~
私の欲しかったクレヨンセット~
これでお絵かき出来るよねぇ」
と、家族に見せながら、プレゼントを喜んでいる・・・・
・・・・・・そんなクリスマスの朝の光景を想像しました。
子どもの良い表情が、色々な想像を掻き立てられます。
これが、風景や、成人で無表情の方だったら、
想像心は掻き立てられない私です・・
所要時間:15秒
認知度 120点
この方は、限りなく定型だと思われるのですが、ご本人曰く「細部にこだわりがつよい。また欠損した認知を想像で埋めるクセがある」ということで、何らかの発達障害的親和性をお持ちの方かもしれません。(認知の自己分析で、非常に興味深いことを寄せてくださったので、追記しました。2010.11.8追記)
・・・・という、回答が寄せられました。
模範解答は、Bさんのご回答ですね。
ひとつ、言い添えますと、このテストで大切なのは正解を答えることではありません。成人発達障害当事者であっても、かなりの方は認知レベルも上がり、経験から状況を推理する能力をお持ちで、正解を導けた方は沢山いらっしゃったでしょう。しかし、その認知パターンや要する時間には違いがあります。このあたりを次回から、分析していきます。
皆さんはこちら↓を使って、自己採点お願いします。
①クリスマスの場面であることに気付いた。(赤い靴下・クリスマスリース・雪だるま・暖炉などから) 10点
②女の子が持っているもの(あるいは、前に散らばっているもの)が、クリスマスプレゼントであることに気付いた。 10点
③女の子が喜んでいることに気付いた。 20点
④クリスマスの朝であることに気付いた。(女の子の服装・行動から) 20点
⑤絵の右下の縞模様が、親のパジャマの足であることに気付いた。 20点
⑥女の子が⑤の親に話しかけている(もしくは、プレゼントを掲げている)のに気付いた。 20点
⑦女の子のプレゼントが、恐らく、寝ている間にサンタさんから届けられたものであることに、気付いた。(女の子の服装や、プレゼントを親に掲げているあたりから、想像できますね) 加点 20点。
さて、みなさんは何点とれましたか?
また、答えを導くのに、何秒かかりましたか?
(他にもコメントやメールで回答を寄せていただいた方々、ありがとうございました。
ぎょんげへさんへ「ひねりなんかなく、そのままで良かったのですよ。ご参加ありがとうございました・・・・^^。」
さて、今日はここまでとて、次回以降、A~Dさんの認知について分析していきます。
予告しておきますと、このお三方のご解答を見ると、定型発達と発達障害の認知に違いが見えてきます。
簡単に言うと、「効率よく認知し、オートマティックに情報収集と推理をしているかどうか」という点に違いがあります。また、逆の言い方をすると、「発達障害の当事者さんも、大人になり成長してくると、認知のゆがみや想像性の障害を克服して、定型と同じ推論が出来る可能性が充分にある」ということも言えると思います。
ただこれが、当事者さんにとって、発達障害が抱える悲劇性を強化している側面もあります。
本人は、特性を補うべく、
経験を積み、試行錯誤して、
ようやく社会適応の為に必要な認知能力を
獲得してこられたのだと思います。
しかし、外見からは、その苦労や、
同じことをするにも、長い時間を要したり、
精神集中で成し遂げているのに、
それをわかってもらえないという悲劇です。
そして、まだ克服できていない苦手が露呈したときに
「あんなに出来る君が、どうしてそんなことをしてしまうの?」
と責められてしまう現実です。
「出来ている」といっても本人は、懸命に真面目に取り組んで、時には過剰適応まで起こしているケースもあります。そして、「出来ない事」は、どんなに真面目に取り組んでも出来なくて困っているのに、極端な能力差を「怠けている」とか「むらっ気が強い」「やる気にかける」と取られる悲しみです。
このテストは、そうした事実を世間にお示しするところも目的としております。
次回以降の記事をおたのしみに・・・。
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