落語の方に「葛根湯医者」という小噺があります。
どんな患者さんが来ても、「ああ、葛根湯を飲みなさい」という調子で、葛根湯しか処方しない、というお医者さんの話です。
一般に藪医者のことを言っていると思われがちな話なのですが、漢方には「異病同治」といって、同じ方剤でいろいろな病気を治すという方法論もあるので、葛根湯でさまざまな病気の患者さんが治っているのならば、それは名医ということになります。
古来、日本人はこの葛根湯を好むらしく、風邪などの熱性病に限ることなく、慢性病にも広くこの処方を応用してきました。
私は、薬学生だったときに漢方医学講座を受講していてインスピレーションを得、大学卒業後すぐに、その直感に従って漢方の流派に入門しました。その入門直後の、まだ23歳だった頃に最初に受けた漢方相談は、医療機関に入院中の患者さんからのものでした。
その患者さんは、耳下腺炎による高熱のため入院して一週間にもなるが、点滴などの治療も一向に効果が現れない、とのことで、来局されました。
今の私なら、入院患者さんに漢方を出すかどうかわかりませんが、そのときの私は躊躇することなく相談を受け、薬を出しました。
難しい理論がわからなかった駆け出しの頃だったので、あくまで基本に忠実に証を取り、葛根湯を投与しました。
耳下腺炎なら、柴胡剤などを考えても良さそうですが、表(体の表面)が塞がっていることが、とても気になったのです。
その後、何日か経ってから、その方が隣の隣の町から、はるばるお礼を言いに来られました。「あのお薬を飲んでしばらく経ったら、たくさん汗が出て、一気に熱が下がり、おかげですぐに退院できました。本当にありがとうございました。」
このときの患者さんの嬉しそうな顔、感謝の言葉、これは終生忘れられないでしょう。
この第一号の患者さんに出した方剤である葛根湯は、私の漢方家としての原点になりました。
ちなみに、私は葛根湯ばかり出す訳ではありません、念のため。
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