日本は競争と効率主義の管理社会なのて゛、会社や学校でノルマや規則などのプレッシャーを感じたり、人間関係のストレスが溜まりやすい。なかにはそうした管理体制になじめず、体調を崩したり、うつ状態になってしまう人も少なくない。
現在の日本では、女性にとって子育てもかなりのストレスになるようだ。
そのため、なんとか厳しいストレス社会に適応するために、それぞれが自分なりに工夫してストレス解消に努めている。あらゆるところで様々ないじめも、ある意味では抑圧されうっ屈した気分を発散する方法なのかもしれない。
かつての日本の陸軍では私的制裁は禁止されていたが、実際は厳しい訓練に耐え軍の規律を維持するため、鉄拳制裁がストレス発散のために黙認されていた。
多くの人はストレス解消のため友人や同僚とぐちを言いあったり、カラオケなどで憂さを晴らしている。だが、疲れが溜まってくると、それでもストレス解消にならなくなり、気分転換に旅行に出かけたりする。
だが、旅行にしても頻繁に行くと感激が薄れる。特に前に行ったことのある場所は最初の時より感激は薄くなる。そのうち普通の観光地では満足できなくなり、あまり人の行かないような秘境にでも行かないと感動しなくなる。
わたしも気分が落ち込んでいた時に海外旅行に出かけたことがあるが、素晴らしい景色や遺跡を見てもなんの感動もなかった。インドネシアの小島で一週間過ごしたが、エメラルドグリーンの海や素晴らしい夕陽を見ても何も感じなかった。
歩いて1周しても1時間半ぐらいの小さな島なので、どこにも行くところがなく島流しになったような気分だった。あまり退屈なので、危うく島に自生しているマジックマッシュルームに手を出しそうになった。(何とか理性で我慢した)
結局、気分転換のために旅行に行ったのだが、何の効果もなかった。その当時は、南海の島で景色を見ながらのんびり過ごせばうつ状態も簡単に治ると思っていたが、実際うつになったら何の効果もないのが分かった。
以前、近くの床屋に行った時、店主の中年のおじさんが頭を刈っていた小学生に、「坊や、もし何でもいいなら、何が一番欲しい? 」と聞いていた。子供は「ドラえもんに出てくるどこでもドアー」と答えたのだが、それに対して店主のおじさんは「おじさんは、毎日新しい奥さんが出てくる機械が欲しいよ」と答えていた。
笑いをこらえるのが大変だったが、妙に納得した。人はストレスがたまったり不安な時は、飲む・打つ・買うといった人間の本能に関係するものに救いを求めるようだ。
何年か前に、テレビのワイドショーで、宝くじで1億円当たった人のインタビューをやっていた。その人は中年の1人暮らしで新聞配達をしていたのだが、宝くじの賞金でマンションと熱帯魚と52インチのテレビを買ったそうだ。
それでも6500万以上手元に残ったのだが、残った金はキャパクラや風俗に通い続け2年ぐらいで全部使い切ってしまったそうだ。今は元の新聞配達を続けているそうだが、おそらく、貧乏暮しの時も本当は風俗に行きたかったのだろう。
あぶく銭は身につかないというが、情欲や物欲は歯止めが効かなくなってしまうようだ。
社会心理学では「孤独は長く続くと怒りに変わる」というが、孤独や格差による貧困が、無差別殺人やテロの温床になっているのは確かだろう。それを避けるためにも、孤独やストレスの解消が必要になってくる。
ただ、飲む・打つ・買うなどは一時的に欲望を満たすが、人間は刺激に慣れるので、もっと強い刺激が欲しくなりキリがなくなってしまう。人によっては心が満たされないと、アルコールやギャンブルなどの依存症になったり、うつや自律神経失調症になってしまう。
どんな美人でも,結婚したり一緒に暮らすようになれば見慣れて飽きてしまう。欲しいものが手に入ると、別の目新しいもの欲しくなるのが人間の性といえる。
どうしたら孤独やストレスを解消できるかは、日本の経済状況やその時代の価値観によっても違ってくるので、これが正しいという答えはない。それぞれがケースバイケースで工夫し、自分に合った趣味やストレス解消法を見つけるしかない。
ストレスが溜まり過ぎて、旅行やおしゃべりでは何ともならない人やすでに依存症になっている人は、自力で立ち直るのは難しいので、カウンセリングを受けたり薬物の力を借りた方がいいと思う。下手に自力で治そうと頑張ると、症状が悪化する場合が多いようだ。