つれづれ日記  サイババの真実 | 漢方堂だより

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星 サイババの奇蹟


インドの聖者で霊能者のサイババが亡くなった。日本の精神世界ではずいぶん昔から有名で、近年はインドまで個人的に会いに行く人も多かった。サイババはシルディ・サイババという聖者の生まれ変わりで、シヴア神の化身なのだそうである。


しかし、サイババが有名になったのは、何といっても彼が行った数々の奇蹟のためだろう。一番有名なのは手からビヴーティーという灰を出すことで、物質化現象だとされている。その他にも時計や仏像を取り出したり、病人を霊能力で治したりもしていた。


おそらくサイババは生まれつき、何らかの霊的能力を持っていたのだろう。それ以外にも、毒蛇にかまれても何ともなかったとか、死人を生き返らせたという伝説もある。


私の知り合いはサイババに面会した時、「はめている指輪を貸してごらん」といわれて渡したところ、サイババが指輪をなでると宝石部分が10倍の大きさになったという。「大きいのがいいか、元のままがいいか?」と聞かれて、「元のままの方がいいです」と答えると、また元の状態に戻ったそうだ。(後で少し後悔していたが…)


サイババの起こす奇跡については、以前から手品ではないかと疑いがもたれている。サイババが少年時代に手品師だった叔父のもとでマジックの練習をしていたのは確かのようで、奇跡がトリックであるとする根拠の一つとなっている。


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     サティア・サイババ         シルディ・サイババ

私が指導を受けたヨゲシバラナンダ師の師匠であるパラマナンダ師は、好きなものを物質化して取り出せたという。インドには不思議な力を持つ聖者が多く、サイババにそれができたとしても不思議ではない。日本でも、戦後最高の霊能者といわれた高橋信次師は、多くの人の前で物質化現象を見せたという。


実際に見た人に聞くと、手のひらの上で物質がタケノコのように生えてきたそうだ。


またサイババの祝福を受けると難病が治るといわれているが、心因性のものは治っても、それ以外の病気は難しいようである。少なくとも切断した腕や足が生えてくるということはなかったようだ。私の知り合いも奇跡を期待して車いすでサイババに会いに行ったが、残念ながら効果がなかった。


サイババの奇蹟は、日本のマジシャンならできるものばかりである。ビヴーティーの袋が手渡されるのをビデオに撮られたり、側近がニューヨークで時計を100個買ったのが目撃されたりしているので、晩年サイババがトリックを使っていたのは間違いないようだ。


しかし、サイババの奇蹟の真偽はたいしたことではないともいえる。人々は心の拠り所となる聖者や神の化身を求めており、聖者を通してその背後に神を見たいのだ。そのため、たとえ聖者や神の化身が間違ったことをしても、信者はそれを意識的に無視するか、好意的に解釈しようとする。


信者からすれば全知全能の聖者や神の化身が、間違ったことをするなどあり得ないのだ。


サイババの人気は彼の説く教えによるものではなく、奇跡や超能力によるところが大きい。なぜなら聖者かどうかの一番簡単な見分け方が、超能力や霊能力の有無だからである。某教団の教祖のように、座ったまま宙に浮くのを見たら神の化身と信じても不思議ではない。


民衆の期待がサイババか死者を生き返らせたり、毒蛇にかまれても死なないといった超人伝説を生んだのだろう。



星 サイババとクリシュナムルティ


インドの聖者は人前で奇跡を見せることはあまりないが、サイババは民衆の期待にこたえるように奇跡を見せていた。そして、自分が有名な聖者の生まれ変わりで、神の化身だと公言していた。このことはサイババが意識的に聖者として振る舞い、人からも聖者とみられるように演出し、仕向けていたということの現れだと思う。


聖者の生まれ変わりと称する宗教家は他にもいるし、必ずしも荒唐無稽とは言えない。以前、私は有名な聖者の生まれ変わりとされるグル・マハラジの8ミリ映像を見たことがあるが、3歳ぐらいの子供が大観衆の前で堂々と演説をしていて驚いたことがある。


仮にサイババが本物の聖者ではないとしても、信者の期待にこたえるべく聖者を演じていたのは間違いない。サイババによって救われた人が世界中にいて、慈善事業として病院や学校を経営していたのはまぎれもない事実である。


一方クリシュナムルティは、サイババとは対照的な生き方をした神秘思想家である。


クリシュナムルティはインドの貧しい家庭の子供だったが、神智学協会の二代目会長アニー・ぺザントによって、そのたぐいまれな素質を見出された。そして、ぺザントの養子となり、人類の救世主であるマイトレーヤ(弥勒?)となるべく育てられたのである。


クリシュナムルティが霊媒となって、マイトレーヤの魂を降霊させる訓練をしていたらしい。


神智学は霊能者のブラバッキー夫人が設立した、欧米の神秘思想に多大な影響を与えた霊術団体。


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クリシュナムルティ


その後、クリシュナムルティは、神智学協会のメンバーが作った「東方の星教団」の教祖となり、救世主マイトレーヤとなった。しかし数年後、クリシュナムルティは「私は救世主ではない。他の誰の魂とも一切関係がない」と宣言して、教団を解散し神智学協会からも脱会してしまった。


救世主が自分の意志で救世主を辞めるのは前代未聞である。そういえば昭和天皇も、戦後、現人神を降りて「人間宣言」をされていた。


つまりクリシュナムルティの言いたかったことは、「真理は集団で追及するものではない」ということなのだろう。確かにその通りなのだが、星の教団の信者からすれば、彼に救世主であり続けてほしかったにちがいない。独りで真理を求めるのは、実際には決して簡単なことではないからだ。


ジャーナリストのベンジャミン・クレーム氏によると、すでに二代目のマイトレーヤが存在するそうだが、まだ社会の準備が整わないので世に出てこないそうだ。(いつまでたっても現れないところをみると、二代目も辞めたのかもしれない)


                        クローバー


現実の社会では真理を求める人より、病気や貧困のような現実的な問題を解決したいと思っている人の方がはるかに多い。結論としていえば、サイババがトリックを使って聖者を演じていたとしても、多くの人に夢や希望を与えていたのは間違いない。その意味ではサイババは、ノーベル平和賞級の功績があったというべきだろう。


もちろん巷で噂されているような児童に対する性的虐待が事実なら、許されるべきではないが・・・


神格化され、多くの人から頼られたり期待されるのは、ストレスがたまりけっこう疲れるものらしい。個人的には神の化身であるサイババよりも、クリシュナムルティの方が気が楽だったと思う。まあ、一般人の個人的意見としてそう思うだけだが・・・