つれづれ日記  あんたが悪い! | 漢方堂だより

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街を歩くと犬を散歩させている人によく出会うし、知り合いや友人にも犬や猫などのペットを飼っている人も多い。中には「犬や猫の方が裏切らないから、人間より好きだ」という人もいるし、ペットに並々ならぬ愛情を注いでいる人も少なくない。飼い主にとってペットは、家族の一員だといえるだろう。


もう、ずいぶん前になるが、テレビのバラエティー番組で、「飼い主がクマに襲われた時、ペットの犬は主人を助けるだろうか?」という実験企画をやっていた。興味深々で見ていたのたが、その結果は意外なものだった。


番組の内容は犬と飼い主が道を歩いている時に、突然クマ(クマの格好をした人間)が現れ飼い主に襲いかかったら、犬がどんな反応をするかを見るというものだった。


クマの着ぐるみはかなり精巧にできており、本物のクマに見えなくもなかった。


最初にアナウンサーが犬の飼い主にインタビューをするのだが、飼い主たちは自分の愛犬との信頼関係については自信満々のようだった。「うちの犬はきっと勇敢にクマと闘ってくれますよ」「信頼してますから、いざという時に逃げ出すことはないと思います」というような事をほとんどの人が答えていた。


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参加者はどうやって集めたのか100組もいて、ペットの犬は柴犬や雑種などの中型犬が多かった。撮影が始まり手はず通りにクマが飼い主に襲いかかると、ほとんどの犬が飼い主を置き去りにして、振り返ることもなく一目散で逃げ去っていった。


中には100メートルぐらい離れた所で、心配そうに成り行きを見守っている犬もいたが、何故か尻尾を振っていた。またパニック状態なのか近くを行きつ戻りつつおろおろしている犬もいた。どうやら飼い主のことが心配だが、クマと闘う勇気は出なかったようだ。


犬の嗅覚なら本物のクマかどうか分かりそうなものだが、日頃からかわいがられ過保護に育てられているので、野性の感性が失われていたのかもしれない。あるいは突然の危機にパニックになり、恐怖で我を忘れてしまったのだろうか。


もちろん中には小さな体で、勇敢にもクマクマに立ち向かってゆく犬もいた。飼い主を助けようとして、必死にクマに向かって吠えたり咬みつこうとする姿はけなげで感動的ですらあった。汗


番組の最後の方で早送りで犬たちの行動が映されたのだが、ほとんどの犬が飼い主を見捨てて全力疾走で逃げて行った。クマに立ち向かった勇敢な犬は、たしか100匹中、3匹か4匹だったと記憶している。しょぼん


飼い主たちの落胆ぶりは相当なもので、大切な人に裏切られたような感じだった。後で犬たちとご対面となるのだが、犬たちも少しバツが悪そうだった。犬たちは何事もなかったように尻尾を振って飼い主に近づいていったが、その場に感動的な再会シーンはなく、白々とした空気が流れていた。


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飼い主たちは「日頃、あんなにかわいがっていたのになぁー」とか「もう少し頑張ってくれると思ったんだが・・」といってため息をついていた。犬たちは飼い主の言葉が分かるかのように、傍目にわかるぐらいしょげかえってしまった。たぶん、期待に添えず申し訳ないと思っていたのだろう。


テレビを見ていて、思わず逃げた犬に感情移入してしまったが、後で飼い主とペットの犬との間に信頼関係が損なわれたり、心の隙間が生まれなかと心配になってしまった。

しかし、よく考えればわかることだが、ペットの犬と訓練された猟犬はまったく違うのだ。過保護に育てられた座敷犬に、いきなりクマと闘えというのは酷というものだ。クマと闘えというのはもともと無理な注文であって、そんなことを期待されたら犬が気の毒である。


ペットの犬がクマに出会って逃げるのは、忙しい時に猫が手を貸してくれないのと同じぐらい自明のことなのだ。


一番悪いのは、番組を企画したテレビ局の方だと思う。プロデューサーや関係者は、笑いや視聴率をとるために犬が飼い主を裏切るのを想定していたはずである。犬たちがみんな勇敢にクマに立ち向かったら、かえって面白くなくなって視聴率がとれないだろう。


面白くて視聴率が取れればいいというのはどうかと思うが、そんな甘いことを言っていたら他局との競争に勝ち抜けないということなだろうか。