つれづれ日記  アフガン難民(2) | 漢方堂だより

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星 私がパキスタンを旅行していた頃、隣国のアフガニスタンはどんな状況だったのか ?


当時のアフガニスタンではソ連の支援を受けていたアフガン政府と、反政府勢力が対立し内戦状態になっていた。情勢は圧倒的に反政府勢力が優勢だったが、ソ連の大規模な軍事介入で情勢は逆転し、ゲリラ化した反政府勢力との間で、内戦はベトナム戦争のような泥沼化の様相を呈していた。


そのため多くの住民が戦火を逃れるため住みなれた土地を捨て、難民となってイランやパキスタンなどの外国に逃れたのである。


難民の中でも私の出会ったハザラ人は、内戦のどさくさの中で虐殺されることもあったらしい。現在でもパキスタンには200万人のアフガン難民が定住している。



                       クローバー   


バスは途中の町で食事のために停まり、乗客は街の食堂で食べるか、持参した食べ物を木陰で食べる。私は持ち金が一文もなかったので、他の乗客たちの食事を横目にひたすら空腹に耐えるしかなかった。しょぼん



アフガン難民たちのグループは木陰で食事をしていたのだが、私と目が合うと手招きをした。そちらに来いということらしかった。行ってみると、小石の混じったナンとカレーを差し出して、私に食べろと勧めてくれた。たぶん私があまりにひもじそうに彼らの食事の様子を見ていたので、不憫に思い同情してくれたのだろう。顔が似ていたので親近感を持ってくれたのかもしれない。


こうして金持ちの国から来た日本人の私が、世界最貧国のアフガニスタンの難民にめぐんでもらうという、ありえない事が起こったのである。汗


それをきっかけに私たちは仲良くなり、言葉は通じないが身振り手振りでコミュニケーションを取りながら、一緒に行動することになった。(バスの立ち寄るどこの町にも銀行が見つからず、ずっと食事をごちそうになっていた。まったくトホホである !)



彼らを見ていると当面の危険が去ったためか皆明るくて元気が良く、自分の持っていた難民のイメージとはかなり違っていた。まあ、元気でなければ国外に出る前に死んだり、置き去りにされたりしたかもしれないが・・・


それに人間は、どんな過酷な環境に置かれても、だんだんそれに慣れ順応できるようになるものらしい。



そうして彼らと楽しくバス旅行を続けたのだが、クエッタの近くで我々が乗ったバスは警察の検問を受けた。どうも難民がいないかチェックしているらしかった。乗客はバスから降りて検問所に行くのだが、私は無意識にサッと難民たちから離れてパスポートを取り出し、「 I  am Japanese ! 」と警官に向かって叫んでいた。



今思い出しても恥ずかしいが、自分も彼らと顔が似ているので一緒にいると難民と間違えられるかもしれないと思ったのだ。あんなに親切にしてもらったのに恩をあだで返すような自己保身に走るとは情けない。

 


彼らは別のバスに乗せられて、難民収容所に連れて行かれた。私は連れて行かれずにすんだが、気分が落ち着いてくると自己嫌悪に襲われた。いざという時に、その人の本性が出るというのは本当だった。



クエッタでは両替ができたので、列車でインド国境に近い大都市ラホールまで行くことにした。車窓から風景を眺めているとまた急に後悔の念をがこみ上げてきて、世話になったのに礼も言えなかった自分が情けなくて涙が出た。しょぼん



                        クローバー


ラホールは旅行者の間では治安が悪いので有名で、ホテルでもぼられるという噂だった。しかし、へとへとに疲れていたので、とりあえず駅のそばのホテルにチェックインした。


しかし、一息ついたのもつかの間で、またしてもここでトラブルに巻き込まれることになった。ホテルの主人に現金を盗まれたのだ。叫び 本当に踏んだり蹴ったりである。


手口はこうだ。ホテルにチェックインしてシャワーを浴びていると、ホテルのおやじが宿帳を持って部屋にやってきて、名前と住所を書いてくれという。着替えるのが面倒なのでバスタオルを腰に巻いたまま裸で記帳していると、その間に気づかれないように財布から現金だけを抜き取るのだ。むかっ


チェックとパスポートは残され、ドルとポンド紙幣だけが無くなっていた。ホテルの主人に金を盗っただろうと詰め寄ると、全く知らないと白を切る。なんなら警察に来てもらって調べてもいいというので、警官をよんでもらった。


30分ぐらいして警官がやってきたが、いかにも横柄でやる気のなさそうな奴だった。


警官はホテルの主人に出された食事をうまそうに食べながら、「ホテルの主人が盗んだ証拠があるのか」と聞いてきた。


私が「証拠はないが、部屋にはホテルの主人しかいなかったから、彼が盗ったとしか考えられないと」と答えると、


警官はニヤニヤしながら、「証拠もないのに、人を疑うんじゃねえ !」と吐き捨てるように言った。


明らかにホテルの主人とは顔見知りで、賄賂をもらっている感じだった。(発展途上国では警官も貧乏なので、賄賂をもらわないと生活できないのだ)



けっきょく泣き寝入りするしかなかったが、あまりにも腹が立って仕方がなかった。そこで、宿屋の主人に気づかれないように静かにベットをひっくりかえし壁にマジックで落書きをして、明け方こっそりホテルを抜け出しバスターミナルに向かった。


バスで国境を越えインドに入国した時は、ホッと気が緩んで、はじめてインドがのんびりして暮らしやすい国のように思えた。(もちろん、錯覚だったが…)



注意 発展途上国に旅行される方は、事前にその国の社会情勢や治安状態を調べてから行きましょう ビックリマーク