雑巾になるまで。 | 愛知県名古屋市の着物屋 きもの美濃幸 3代目若だんなの徒然日記

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夏着物の準備が進む頃。

 

 

昨日は定休日を頂いていたので、

箪笥から夏着物や長襦袢を出して、

かけ替えと整理をしていました。

 

 

そうしたら、

その奥から出てきた麻の長襦袢。

 

生地の精も抜けており、

さすがに今年は着れない状態でした。

 

 

肩口は生地が裂け、

 

 

他も縫い目が割れ、

生地自体も弱っている状態。

 

 

仕立て替えて、

もう一度長襦袢でとも思いましたが、

さすがに生地が裂けてしまえば、

どれだけ直しても一緒の事ですので、

この長襦袢はほどき、

他のものにする事にしました。

 

 

本来の仕立て直しであれば、

悉皆屋さんに解きと洗い張りをお願いしますが、

今回はそこまでではない状態なので、

自分で解くことに。

 

 

縫い目を鋏を入れながら、

袖~衿~衽~身頃と解いていきます。

 

 

袖はまだ生きていたので、

こちらは夏用半襦袢の、

付け袖にする事にしました。

 

 

縫い糸も精が抜けており、

ちょっとテンションを掛けるだけで、

ブツブツと切れていきます。

 

 

この様に縫い糸が先にダメになる事で、

生地自体が守られており、

そうした和裁の知恵を感じながら、

解き進めていきます。

 

 

 

衿は酷い状況。。。

 

 

毎度水洗いをしていましたが、

衿芯が黄ばんでしまっていました。

 

半衿も再利用は難しそう。

 

 

この長襦袢との付き合いは、20年近く。

 

今まで一度も解いてはいないので、

さすがに寿命が来たというところです。

 

 

脇の縫い込みは丁寧に仕上げてあります。

 

 

こうした仕事を見ると、

解くのがもったいなく感じますが、

その気持ちを押し殺しつつ、

どんどんと解いていきます。

 

 

背縫いは、生地が目ずれしていました。

 

 

背縫いを保護する背伏も、

生地がへなへなになっていました。

 

 

 

約30分。

 

全部のほどき作業が完了。

 

 

魚の三枚おろしみたいに、

綺麗にパーツ毎に分かれました。

 

 

使える布と、使えない布を分け、

使える布はその用途に使用。

 

使えない布も、

麻の雑巾などにして再活用します。

 

 

昔から着物は、

汚れたら何度も縫い直し、洗い張りをして、

それでも生地が駄目になれば布団にし、

それも駄目になれば座布団に、

それでも駄目なら雑巾にして、

最後ははたきにするまで使い込みました。

 

 

日本人のものを大切にする文化、

「もったいない」の精神が、

和裁や着物には宿っています。

 

 

永く付き合ってくれた布に感謝をして、

最後の最後までその布と、

楽しい日々を過ごせる心で在りたいです。

 

 

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