女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

公開連載第35回


叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba


写真 2.JPG






黒髪のアマン35(淑女の贈り物7)




怪我をすると、
母は

心配してくれた。



跡が残らないかしらと、
眉を寄せて

触れてくれた。
 


こんなにも、
彼女を

愛しているのだから、
少し怪我をするくらい

なんでもない。



きっと、彼女は
止めてくれるだろう。


どれほど

大切な存在だったか、
どれほど熱く

愛し合ったか、
きっと

思い出してくれるに

違いない。
 


黒髪の青年は、
震えながら
ナイフを

自分自身に向けた。
 


KOKOが、
少女から、
一瞬、
唇を離す。
 

そして、あでやかに
微笑んだ。



「……お死になさい。
 あなたが望むなら。


 あなたの人生はすべて
 あなたの選択なのよ」


彼女の美しさに

圧倒されながら、
青年の体が固まり、
ひゅっと喉が鳴る。



どうやって

息を吸えばいいのか、
忘れてしまったように、
苦しい。
 


時間が

止まったようだった。
 


KOKOはもう、
自分に見向きもしない。
 

何が起こったのか、
よくわからなかった。
 

今、

彼女に愛されているのは、
自分ではなく、
あの少女だ。
 


それだけがわかる。
 

彼女は、

自分を捨てたのだ。
 


もういらないと、
興味を

失ってしまった。
 


欲しいものなら、
なんでも

差し出すことができるのに。
 


彼女は

いらないと言うのだ。
 


そんな馬鹿な……


嘘だ嘘だ嘘だと
頭の中で

声がする。
 


黒髪の青年は、
呆然と部屋を

出て行くしかなかった。
 




(続く)




























(再)