女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

公開連載第32回






叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba


黒髪のアマン32(淑女の贈り物4)




「KOKO……! 
どうして君は……
僕に何も与えてくれない……」
 

KOKOが、
ようやくふりかえる。
 

黒髪の青年の心は、
歓喜に震えた。
 

だが、それは
すぐに

深い落胆に変わる。



「あら、わたくしはあなたに
プレゼントをさしあげただけよ?」



KOKOは
平然と言い放った。



「……君は僕に、
 なにひとつ

 くれやしないじゃないか!」
 

こんな自分の声は
聞いたことがない。
 

彼女を

罵っているつもりなのに、
声は高くひび割れて、
子供が

泣き叫んでいるようだ。



「わたくしは、あなたに

 心を差し上げたわ」



「……君がいつ?」
 

黒髪の青年は、
呆然として立ち尽くした。



「あなたの中に、あなたの心を。
……もう退屈ではなくなったでしょう?」



たしかにこれは、
退屈などではない。
 

失望だ。
 

絶望だ。
 

こんな気持ちには
耐えられない。
 

これが心だというなら、
心などいらない。



「……KOKO…君は
 ……僕を

 愛してくれたんじゃないのか」
 

もう、呟くような声しかでない。



「わたくしを愛するということを、
 受け入れられなかったのは

 あなたなのよ。
 あなたは情熱的で、
 とても幼くて、
 ラブリーだったわ」
 

にっこりと、KOKOが
微笑む。
 

この笑顔を知っていると
思った。
 

彼女を、
初めて抱いたときだっただろうか?
 

それとも、
初めてキスをしたとき?
 

それだけが
思い出すことができない。
 



(続く)























(再)