女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

公開連載第22回









黒髪のアマン22(生きた媚薬2)



紳士のプライヴェート・ヴィラは、
夕暮れ時、
その美しさが際だつ。


 
大きなプライベート・プールの

水面には、
夕日のオレンジが

浮かんでいて、
黒髪の青年が動くたびに、
さざ波がたち、
ゆらゆらと
そのオレンジは揺れた。
 


KOKOは

この時間帯に、
このプールで過ごすのが
お気に入りのようだ。
 

ときおり、
用意されたイチゴを

つまみながら、
シャンパンのグラスを

傾けている。



「……KOKO!」
 

黒髪の青年は
プールの中から

手を振ってみせた。
 


彼は自分の

鍛えた肉体が、
水の中で
どんなふうに

魅力的に見えるのかを
よく知っていた。
 


KOKOは、
応えるように、
微笑んでくれる。
 

その、どこか

青年をあやすような仕草は、
黒髪の青年を

満足させた。
 


下着に
ガウンを羽織っただけの
KOKOの

肢体は、
ついさっき

さんざん愛し合ったというのに、
まだ青年の視線を

捕まえて離さない。
 


ゆったりと
デッキチェアに

寝そべって
くつろぐKOKOに

見せるために、
黒髪の青年は、
プールで勢い良く

泳いでいた。
 


KOKOの視線を

意識しながら、
体のラインを

誇示して泳ぐ。
 

浮き上がるときに、
水を掻き分けて現れる
自分の逞しい体が、
彼女の目を

楽しませるだろうと、
黒髪の青年は

はりきっていた。
 


こちらを見ていない…と
感じたかと思えば、
舐めるように

絡みつく
視線を感じる。
 


彼女は、
このプールに

一度も入らないまま、
水と戯れる

美しい男の体を
目で

愉しんでいるのだ。
 


それがわかってからは、
もう、
一緒に泳ごうよとは

誘わない。
 


彼女が

水に入るときは、
水の中で

愉しみたいときだ。
 


黒髪の青年は、
濡れた髪から
水をしたたらせながら、
プールからあがると、
ゆったりと歩きながら
KOKOの隣にすわる。
 

KOKOの肢体が
夕日に染まって
オレンジ色に

光っていた。
 


彼女自身が、
宝石のようだ。
 


(続く)









(再)