女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

公開連載第21回




叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba


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黒髪のアマン21(生きた媚薬1)


バスローブ姿のKOKOが、
ソファでくつろいでいる。
 

その細い指先には、
一輪の真っ赤なバラの花が
こぼれんばかりに

咲き誇っていた。


ゆっくりと、
花びらにキスをするように
香りをかぐ。
 

その姿を
愛しげにみつめながら、
黒髪の青年は

髪を拭きながら、
彼女のそばへと向かった。

 
彼女と同じ、
柔らかな肌触りの
バスローブに身を包んで。



「どうしたんだい、それ?」
 

KOKOは答えず、
バラを見つめている。
 

それが気に入らなくて、
青年は彼女の手から
バラをとりあげてしまった。
 

KOKOが、
黙って
じっと
黒髪の青年をみつめる。
 

まっすぐな瞳に、
どこか咎めるような気配を感じて、
青年はそのバラを

これみよがしに、
ソファに放り出した。
 

KOKOが
愛しげに見つめるのも、
その指や唇で触れるのも、
この世に

自分ひとりだけでいいのだ。



「僕なら、
この100倍のバラを用意できるよ」
 

彼女の関心を引く方法が知りたい。 


「………」
 
KOKOの右の眉が
くいっと上がる。
 

自分が知っている方法を、
全部試しても

足りない気がした。
 

彼女は黙ったまま、
こちらを見据えている。


何を言い出すのかしらと、
待っているのだろう。
 


いいだろう。
 

だったら、
彼女の期待に応えよう。
 

黒髪の青年は、
KOKOは
彼が今までつきあってきた女性たちとは
違うのだということを、
その瞬間たしかに忘れていた。


「……もう君なしでは

生きていけない……」
 

顔色をうかがおうとするが、
彼女は横を向いてしまった。


その肩を後ろから抱き寄せ、
豊かな胸元へ手を入れる。



「君の望みを

何だって叶えてあげる。
だから……

ねえ、KOKO……」
 

KOKOの首筋に

唇を這わせて、
まずは

体で彼女を

悦ばせたかった。


いや、
それだけではない。


彼女に触れていないと
不安なのだ。
 

彼女の温もりを嗅いで、
初めて

呼吸ができる気さえする。
 

こんなことは

初めてだった。
 

知らないことを

知ることは、
悦びを

もたらすだけでなく、
こんなにも

心をおびやかすことだとは
思わなかった。
 

目を閉じ、
キスを繰り返していると、
ふわりと

バラの香りがした。



「愛してる……
愛してるよ、KOKO」
 

KOKOは、
さっき青年が

ソファに投げ捨てた

バラを拾い上げ、
深くバラの薫りを

かいでいた。
 

大きく上下する胸元に

指を這わせることに、
すでに夢中になってしまった

黒髪の青年は、
気がつかなかった。
 

KOKOは、
青年に

体を好きに触らせながら、
平然と

バラの薫りを

愉しんでいた。
 

まるで、
そのバラを

愛・撫するように、
そっと唇を

寄せながら。



(続く)













(再)