女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

”よりぬき”公開









彼女と彼女の蜜月18(野バラの蜜1)



「なぜだ!」



「……ご本人が会いたくないと」




「彼女がそんなことを
言うはずない!」



館の門の前で、
黒髪の青年が
声を荒げて、
執事に
詰め寄っていた。



以前に
KOKOの部屋から見た、
金髪の青年とは違う
種類の魅力に
恵まれた容姿が
目を惹く。
 


執事が、
ジョルジャに
気づいてくれた。


「バラを
お届けにあがりました」
 


ジョルジャは
かけよって、
執事を
まっすぐに見つめて、
息をする間も
惜しいように
告げた。
 


すると執事は、
しばらく
じっと
ジョルジャを
見つめてから、
入れというように、
小さく
頷いてくれた。
 


ジョルジャは、
ほっと息を吐いて、
黒髪の青年の横を
すり抜けるようにして、
急ぎ足で
中へと入る。
 


続いて、
中へ入ろうとする
黒髪の青年を、
ドアの奥から
出てきた
屈強なサーヴァントが
はばむのが見えた。


「お帰り頂きなさい」
 


執事が
告げると、
サーヴァントが
黒髪の青年の前に
立ちはだかる。


「ふざけるな!」
 


ジョルジャは
驚いて振り返り、
興奮する黒髪の青年を
思わず
見つめてしまった。



恐ろしく血走った目と、
目が合って、
息を飲む。
 


サーヴァントが、
黒髪の青年を
外に出し
ドアを
乱暴に閉めた。


「ばかにするな! 
KOKOに

会わせろ!」
 


黒髪の青年の
罵倒の声は、
館の中へ入っても
しばらく聞こえていた。



小走りに
戻ってきたサーヴァントが、
いつかのように
ジョルジャの籠を
持ってくれる。


「……あの美しい青年は?」


「さあね。
俺は美少年じゃなくて
よかった。
神に感謝するぜ」
 


彼は、
いつか見た
金髪の青年のように、
KOKOと
深く関わったのだろう。



でも
……きっともう会えない。
 


会っては
もらえないのだ。
 


だから、
あんなに必死なのだろう。

「……」


「早く」

 

ジョルジャは、
執事にうながされて、
彼のあとを
追った。
 


KOKOの
ベッドルームのドアの前で、
執事は
足を止めた。


「中へ」
 


短く言って、
彼は去った。
 


ジョルジャは、
バラを抱え
ドアを開ける。



静かに
奥へ進んでゆくと、
人の気配がした。
 


期待に
胸を膨らませ、
駆け寄ろうとした
ジョルジャの足が、
ぴたりと止まる。

 

ドアの向こうから、
聞き覚えのある
声がした。
 


はばかりのない、
奔放な
喘ぎ声も。
 


この声は
KOKOだ。
 


彼女は今、
この扉の向こうで、
愛されている。
 


バラを

注文してくれた、
紳士の声が
した。
 


彼女は、
今、
彼と
愛し合って
いるのだろうか。


「……ああ……っ、
んっ……
はあ……」
 


喘ぎ声は、
どんどん激しくなる。


「ああっ………あ、
………はぁ
……ん……」
 


ドアの前で
ジョルジャは、
茫然と
立ちつくしていることしか
できない。



ジョルジャの手から、
バラの束が落ち、
床に
散らばった。
 


濃厚な
バラの薫りが
広がり、
ジョルジャは
震えながら
走り去った。
 


走っても
走っても、
KOKOの
喘ぎ声が
聞こえてくる気がした。



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(再)