女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

”よりぬき”公開





叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba







彼女と彼女の蜜月16(ときめきのないプロポーズ2)


 
ジョルジャは、
ひとりになると、
たくさんのバラを
水差しに入れ、
大切そうに
日陰へと置く。



バラの薫りに
包まれていると、
しだいに
心が
落ち着いてきた。
 


向こうから
顔なじみの
漁師のおじいさんが
やってくる。


「チャオ! 
ジョルジャ! 
調子はどうだい?」



「……あいかわらずだわ」
 


いつものように、
そっけなく
答えるジョルジャに、
彼は
笑いかけてくれる。


「ハハ! 
そりゃ良かった」
 


ジョルジャは、
小さくため息を
吐いた。

ブラッチャーノ湖の
向こうを
眺めるのが、
すっかり
クセに
なってしまった。



あそこには、
KOKOのいる
館がある。


「………KOKO……」
 


ジョルジャは、
自分の唇を
指でなぞり、
今朝の
KOKOの
感触を
思い出した。


自分の唇とは
全然違う、
ふっくらとした
濡れた唇。
 


目を閉じると、
KOKOの
美しい寝顔が
目の前にあるように
感じられた。
 


車の音がして、
ジョルジャは
目を開ける。



向こうからやってきた
一台のベンツが、
花屋の
屋台の前で
止まると、
見覚えのある
紳士が
降りてきた。
 


ジョルジャの胸は、
高鳴った。


「そこのバラを
くれないか」


「……ないわ」
 


ジョルジャは
必死だった。


「私には
ある様に見えるが」


「……よかったら、
お届けします」
 


会いたい。
 


KOKOに
会いたい。
 


彼女に、
バラを
届けたかった。


「……」
 


紳士は、
ジョルジャの
必死な表情を見て、
頷いてくれた。


「では
そうしてもらおう。
明日ここに……」


「知ってるわ。
通りの一番奥にある
ヴィラでしょ」


「そうだ。
よく知っているね」
 


ジョルジャは、
沸き上がる歓びを
押さえることが
できなかった。



今にも
叫び出しそうになるのを、
一生懸命こらえて、
告げる。



「必ずお届けします」


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(再)