女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

”よりぬき”公開




写真.JPG



彼女と彼女の蜜月14(18歳の誕生日7)
 


翌朝、
ジョルジャは
バラを抱え、
狭い路地を
走り抜けていった。
 



まだ人通りのない
路地を、
息せき切って
走る。

民家の庭を
こっそり抜け、
フェンスを越えると、
下の坂道へ
飛び降りる。
 



木の間を
抜けると、
誰もいない
湖畔に出た。



ここは、
館へと
続く場所だ。



ジョルジャは、
木の陰に隠れ、
そっと向こうを
覗き込む。
 


浜辺には
誰も
いない。
 


息を整え
辺りを確かめると、
こっそり
KOKOの部屋へと
向かった。



バラの
生け垣が
途切れる場所を、
ジョルジャは
知っていたのだ。



「……KOKO……、
私……
どうしても
あなたに
会いたい…」
 


湖畔に
風が吹き抜けて、
ジョルジャの
熱い体を
撫でていった。



「会わなくちゃいけない
気がするの……」


 

KOKOの
寝室には、
驚くほど
簡単に
忍び込むことができた。
 

まるで、
誰かに
許されている
みたいだった。
 

こっそりと
忍び込んで
寝室の、
大きな天蓋つきの
ベットには、
眠る
KOKOが
横たわっていた。
 


ジョルジャは、
そっと近づいて、
まじまじと
みつめる。




「………」
 



ほう、と
深く息を
つく。

吸いこんだ息は
甘かった。
 



きれい……。
 



まるで、
女神さまみたいだわ……。
 



ジョルジャは、
KOKOに
魅入られたように
みとれた。
 


胸に
突き上げるものを
感じて、
吸い寄せられるように
彼女の
ふっくらとした
唇に、
自分の唇を
重ねる。
 


それは
とてもやわらかで、
小川の水を
手にすくって
唇を
つけたときのように
瑞々しかった。

 


リビングの方で
ドアが開く音がして、
ジョルジャは
びくりと
はじかれたように
体を離した。
 


立ち去る前に、
KOKOの隣に、
バラの花を
一輪
そっと置き、

名残惜しげに
もう一度
彼女の顔を
じっとみつめてから、
子鹿のように
駆けだした。

 


ジョルジャは、
もと来た道を
ひたすら走った。
 


頬を打つ
風が
気持ちいい。
 


顔が
熱かった。
 


さらに
スピードを上げて
走ると、
さらに
風が
彼女の肌を
すべってゆく。
 


突然、
高台の教会の鐘が、
大音響で
鳴り響いた。



いつもと違う
大音に、
ジョルジャは
思わず足を止めて、
教会の方を
見上げる。
 


誰かが
朝日の中に
立っていた。
 


だが、
逆光で
よく見えない。
 


目を凝らすと、
そこには
黒いマントをひるがえし、
白いマスクをつけた、
ス・コンポニドーリの姿が
見えた気がした。

 

ジョルジャは
呆然として、
眩しい太陽の光に
手をかざす。



一瞬、
目が眩んで、
ぎゅっと
強く
目を閉じる。



おそるおそる
目を開くと、
そこには
アンドレアが
立っていた。



「ジョルジャ!」
 


アンドレアが、
ジョルジャを見て、
大きく手を上げる。
 


ジョルジャの
体から、
空気が
抜けるように
力が
抜けていった