女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

”よりぬき”公開





叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba








彼女と彼女の蜜月7(蝶の名前2)



窓の外に目をやる
ジョルジャの視線は、
一点に

引きつけられて、
動かすことが
できなくなった。

 

そこには、
夢で見たのと
同じ光景が
あったのだ。
 

金髪の美しい青年と、
あのリムジンで
見た女性が
戯れていた。
 


……激しく、
もつれあうように。

 

惜しげもなく、
裸の肌を

さらして。
 


互いに

貪るように、
激しくかわされる

唇の間で、
濡れた舌が
何度も

のぞいた。
 


あらわな

白い太腿を、
男の大きな手が
荒々しく掴む。
 


彼女が

揺れると、
豊満な胸元も
大きく揺れ、
その谷間に光る汗が
流れた。
 


……同じ。
 


……夢で見たのと、
同じだわ……。
 


ああ、……
なんてこと……。
 


目が……

離せない……。
 


ジョルジャの体は、
熱でも
出たように
熱くなっていった。



「何をしている」



「……っ!」
 

ジョルジャは、
びくりと
体を震わせて
我にかえった。
 


驚き振り返ると、
後ろに
執事が立っている。



「バラを……、
飾ろうと思って……」



「ここはいい。
寝室は終ったのか」



「はい……。
あの……、
このヴィラは彼女の?」



「……いや」
 


執事の声は、
なんの感情も
感じさせない。



「じゃあ、彼の?」
 


今、自分が
何を見てしまったのか、
隠せずに
聞いてしまう。



「彼は

ベビーシッターだ」



「え……?」



「……隣の部屋で
待っていなさい」



それだけ言うと、
執事は
またジョルジャを
ひとりにして、
去ってしまった。
 
 
ジョルジャは
リビングで、
窓の外を気にしながら
言われたとおりに
待った。


だが、
ここからは
彼女たちの姿は
見えない。



「………さっきのは……、
幻?」
 


ふと気付くと、
テーブルの上に

1通の
メッセージカードがあった。
 


誰もいないのを確かめ、
ジョルジャは
そっとカードを開く。



『TO KOKO 
君が
僕の人生を完璧にする・・・。』

 


ジョルジャは、
カードを
食い入るように
見つめた。
 


胸の中で、
自分の心臓が
とくとくと動いているのが
わかった。



「KOKO……」
 


たしかめるように、
呟く。
 


これはきっと、
あのひとの

名前なのだ。
 


執事の靴音が
響いてきて、
ジョルジャは
慌ててカードを
元の場所へ戻した。



ごまかすように
余ったバラを
花瓶に挿して、
電話機の側に置く。



「……」
 


執事は、
黙って封筒を差しだした。



目で、
中を確かめるように、
うながす。


その値段で
不服はないかと
言いたいのだろう。
 


ジョルジャは
おずおずと
封筒の中身を
確かめた。



「……こんなに?」
 


ジョルジャは
驚きを
隠せなかった。
 


こんな大金を
手にするのは、
初めてだった。
 


いったい
何日花を売ったら、
これほどの金額に
なるだろう。



「……」
 


執事は
何も言わずに、
ただ、頷いた。



「……ありがとう!」
 


これで、

おばあちゃんに
新しい靴を
買ってあげられる。

 

……私の、
新しいワンピースも。

 

ジョルジャは、
慌てて代金を
封筒にしまった。

 

隠す必要などない。
 


怯える必要もない。
 


これは、
相手が決めた値段だ。
 


そう思うのに、
ジョルジャは
申し訳なさと
怖れおおさで、
目を伏せてしまった。



逃げるように帰った道に
出会った人に、
挨拶することも忘れて、
ジョルジャは
家まで走った。

















(再)