女性のための官能小説  

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

”よりぬき”公開





叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba





紳士の贈り物21(バカンスの報酬1)


KOKOとの
バカンスが充実したのは、
彼にも功績が
あるだろう。

 

紳士は、
目の前に
姿勢を正して立つ
金髪の青年を
労った。
 


金髪の青年は、
ほんの少し
痩せたようだ。



そして
その美しい顔には
大きな痣が
できていた。



黒髪の青年に
殴られたあとは、
まだ消えていない。


「………ひとつ、
うかがってもよろしいでしょうか」


「なんだね?」


「彼女は………
あなたの恋人ですか?」


「ああ、そうだ。
………正確には、僕が
彼女の恋人の
ひとりだと
言ったほうがいいだろうな」
 


金髪の青年の目が、
なぜと問うていた。
 


こんなふうに、
瞳に
感情を映す
青年ではなかったと
記憶している。


彼も彼女との
時間の中で、
今までとは違う
何かを
手にしたのかもしれない。
 


そういう男なら、
同士として
扱うべきだろう。
 


紳士は、
心の内にあるものを、
正直に

言葉に換えた。



「愛しているんだよ、
彼女を」



「………たちいったことを、
おうかがいしました。
失礼をお許しください」


「いや、いいんだ。
君には理解できないだろうが……、
いや、君になら
わかってもらえるかもしれないな」
 


何を…? と
金髪の青年の目が、
紳士に問う。


「彼女は……
KOKOは特別な女だ。
彼女は
彼女自身のものであって、
誰のものでもないんだよ」


「………そんなふうに…」
 


あまり、
心をのぞかせなかった
青年が
ぽつりと
呟く。


「そんなふうに、
生きられたら……
きっと
特別な人生を
送ることができるのでしょうね」
 


紳士は、
じっと青年を見返し、
微笑んだ。


「私が
このプライヴェート・ヴィラを
去るまで、
君はここに
いられるかね?」
 


金髪の青年の目が
驚きに見開かれ、
そしてゆっくりと微笑んだ。


「……はい」


「君となら、
KOKOの話が
できそうだ。
まだ仕事が残っていてね。
酒を飲むときぐらい、
彼女のことを考えていたい」


「……お相手が
私でよければ」


「私の執事は、
本当に優秀だ。
君のような青年を
連れてきてくれたんだからな。
……彼はいつも、
私に必要なものを
よくわかっている」
 


金髪の青年は、
静かに微笑むと
言った。



「光栄です」


「君は黙って、

あの黒髪の若者に

殴られてやっただろう。

彼は友人の息子でね、

若さが目に

余ることもあるが、

……傷をつけて

返すわけにはいかない。

礼を言うよ」


「いいえ」


金髪の青年は

短く言うと、

その場を下がった。




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(再)