女性のための官能小説 

「イルベント エレローゼ 愛するということ -KOKO-」

公開連載第30回







叶姉妹オフィシャルブログ「ABUNAI SISTERS」by Ameba





黒髪のアマン30(淑女の贈り物2)



冗談じゃない。
 

馬鹿にするな。
 

どうして。
 

どうして、こんな扱いを
受けなければならない。



「………このまま、
引き下がると思うな……」
 

KOKOに、会わなければならない。
 

そして、こんな手管を
遣う必要はないと、
抱きしめてやらなくては。


そんなことをしなくても、
僕は彼女を愛しているのに。



「KOKO……、愛してる……
 愛してるんだ…………」
 

黒髪の青年は、
このプライヴェート・ヴィラへ

通じる入り口が、
必ずしもこの鉄の門だけではないことを

よく知っていた。
 

バラの生け垣を超えると、
庭から彼女の寝室へと
忍ぶことができる。
 

いつもの、

彼女に届けられるバラは、
きっとさっき見た少女が
用意しているのだろう。
 

いつも丁寧に、
すべての棘が
切り落とされている。
 

生け垣のバラは、
きっと違うだろう。
 

だが、

それがなんだ。
 

美しく咲き誇る

バラの棘は、
黒髪の青年の

足を止めるには不十分だ。


その肌を傷つけ、
血を流させることは

できたとしても。



「……いっそ、バラなど、
 ……僕が切り落としてやる」
 

青年は、

いつもはただの

飾りとしてしか持たない、ナイフの

入ったポケットを

強く握りしめた。



黒髪の青年は、
肩で荒く

息をついていた。
 

バラの生け垣を

乗り越えてきた彼の体には、
あちこち血が滲んでいる。
 

KOKOの部屋に忍び込むなり、
彼は

彼女と

愛し合っていた

金髪の青年を
殴り倒したのだ。



「……くっ」


金髪の青年が、
腹を押さえ、
蹲っている。



そのまま、
床に這い蹲っているがいい。
 

黒髪の青年は、
彼を見下ろしながら

そう思った。





(続く)



















(再)