書名:修道女フィデルマの采配 修道女フィデルマ短編集
原題:Whispers of the Dead
著者:ピーター・トレメイン(イギリス作家)
出版:創元推理文庫
内容:紀元七世紀半ば、アイルランド。赤毛に緑の瞳、すらりとした長身に均整のとれた姿態という美貌の若き修道女フィデルマは、法廷弁護士にして裁判官の資格を有する。自らの死を占星術で予言した修道士が、湖の畔にある木の桟橋の下で死体となって発見された。溺死だったが、頭部には痣と切り傷があった。修道士の予言によって殺人犯として名指しされていたのは、占星術に批判的な修道院長。ブレホン(裁判官)は死んだ修道士の予言を信じている。修道院長の弁護を依頼されたフィデルマは、まず天宮図の鑑定を専門家に求めるが……。占星術が医学と表裏一体のものとして用いられることもある化学だった古代アイルランドの殺人事件〔みずからの殺害を予言した占星術師〕。ダロウの修道院で客人に供する魚料理が消え、貯蔵室で料理長の死体が発見された。修道院長を務める遠縁のラズローンに事件の解決をゆだねられたフィデルマは、厨房で聞き取りを行うが……〔魚泥棒は誰だ〕。古代アイルランドのフォスタレッジ(養育制度)に基づいて養い先に預けていた息子が溺死し、<放任による死亡事故>として実父が養父を訴えた。ブレホンを務めるフィデルマの判決は……〔養い親〕。小王国同士で領地を巡って争いの絶えぬ土地でブレホンを務めることになったフィデルマ。全ての訴訟を終えて閉廷しようとした時、農夫が訴えにやって来る。ところが、農夫は心を病んでおり、自分の牧場が襲撃されたと二度にわたって嘘の訴えをしていると族長は言い、今回は最初から取り合おうとはしなかった。しかし、フィデルマの判断で訴えを聞くことになり……〔「狼だ!」〕。小王国の族長のターニシュタ(次期継承者)の選定を行う会合で、有力な候補者が演説中に倒れて死んだ。どうやら酒杯に毒が盛られていたらしい。選定の証人として同席していたフィデルマは、クラン(氏族)のブレホンに助力を請われ……〔法定推定相続人〕。日本オリジナル短編集第五弾。
※原書初版2004年
※著者の本名は「ピーター・ベレスフォード・エリス」。有名なケルト学者。
※アルトラム=フォスタレッジ(養育制度):子どもを信頼する人物に預け、養育して教育も授けてもらう制度。アイルランド五王国において社会の要をなす制度であり、あらゆる社会階級で実践されてきた。通例、子供は七歳で<フォスターリング(養育)>に出され、少女は十四歳、少年は十七歳、即ち<選択の年齢>に達したとみなされればその期間を終えた。<養育>は、双方の家庭にとって好ましいものとされる慣行であり、法的な契約でもあるのだ。これには、法律上、二種類ある。一つは<好意の養育>であり、養育費はいっさい支払われない。もう一つは、実の両親が子供たちの養育費を支払う<契約による養育>である。
<収録作品>
The Astrologer Who Predicted His Own Murder 『みずからの殺害を予言した占星術師』
Who Stole the Fish? 『魚泥棒は誰だ』
The Fosterer 『養い親』
Cry “Wolf!” 『「狼だ!」』
The Heir-Apparent 『法定推定相続人』
ヴェネラブル(尊者):教皇庁が公認する尊称。ブレッシド(福者)に列せられる前段階になる。
車輪に使う輻(や:車輪の軸受からリムに向かって放射状に出ている細長い棒)
書名:修道女フィデルマの挑戦 修道女フィデルマ短編集
原題:Whispers of the Dead & The Comb Bag
著者:ピーター・トレメイン(イギリス作家)
出版:創元推理文庫
内容:紀元七世紀半ば、アイルランド。赤毛に緑の瞳、すらりとした長身に均整のとれた姿態という美貌の若き修道女フィデルマは、法廷弁護士にして裁判官の資格を有する。フィデルマがまだ修道女になる前、モラン師が学院長をつとめるタラの学問所に入学したばかりの、十六歳のフィデルマが出合った最初の事件。学生寮に入寮した初日から同室の上級生と衝突したフィデルマだったが、翌日、自分の化粧ポウチがなくなっていることに気づく。盗んだのは同室の誰か……?〔化粧ポウチ〕モラン師の学問所で四年を過ごし、卒業のための口頭試問に挑む二十歳の学生のフィデルマ。実際に起きたという事件の話を大法官から聞き、その判決が正しかったのか否かを判断せよという試験だが……〔痣〕。「死者の囁きに耳を傾けることこそ、私どもの仕事」と語るフィデルマに、ダロウの修道院長ラズローンが賭けをもちかける。修道院の近くで見つかった若い農婦の死体。身元も死因も不明で、手がかりになるような物も残されていない。この死者の呟きを聴き取って、この女性の身元を探り出すことが出来るか?と言われたフィデルマは……〔死者の囁き〕。喉を切り裂かれて殺された男の家の前で、三日前からバンシーの声が聞かれていたと言う。「男の死は定められておった」と司祭は語る。しかし、集落に派遣されたフィデルマは遺体を調べ、殺人事件として調査を始め……〔バンシー〕。ブリテン島のカンタベリーを訪れたフィデルマは、ローマから来た貴族出身の修道士に面会を求められる。そして、五百年以上前の先祖が指揮官を務めていたというローマ第九ヒスパニア軍団の、消え失せた鷲の聖像のありかを古文書から推理して欲しいと頼まれるが……〔消えた鷲〕。荷を積んだまま忽然と消え失せた二艘の川船。荷主は船の持ち主に弁償を迫り、船主は自分こそ被害者だと訴える。調査に乗り出したフィデルマは船主の悪評を知るが……〔昏(くら)い月 昇る夜〕。日本オリジナル短編集第四弾。
※原書初版2004年
※著者の本名は「ピーター・ベレスフォード・エリス」。有名なケルト学者。
<収録作品>
The Comb Bag --[Sister] Fidelma's First‘Case'-- 『化粧ポウチ――修道女フィデルマ最初の事件――』 初出2013年
The Blemish 『痣』 初出2002年
Whispers of the Dead 『死者の囁き』 初出2002年
The Banshee 『バンシー』 初出2004年
The Lost Eagle 『消えた鷲』 初出2003年
Dark Moon Rising 『昏(くら)い月 昇る夜』 初出2003年
※本書の収録作は『化粧ポウチ』以外は、本国で上梓された<フィデルマ・シリーズ>第二短編集『Whispers of the Dead:死者の囁き』に収録された作品である。
キルヴォラグとは、スカハーン(鏡)、ジェメス(鋏)、シュレック(石鹸)、小さなリネン(亜麻布)などを入れて女性が常時持ち歩く小鞄である。
※本書では「化粧ポウチ」と訳されている。語義は「櫛(くし)入れ袋」。
もう少し年上の女性たちは、唇を紅く染めたり眉をっくっきりさせたりするための漿果(しょうか:ベリー)の果汁も持ち歩いているが、この少女は、その種の化粧品ではなく、スイカズラから抽出したファル(香料)を携帯していた。そのほかにも、エメラルドの耳飾りや木の葉形のブローチといった宝飾品もニ、三、入れていた。いずれも、今は亡き母の遺品
小さなバッグではあっても、女性の装いになくてはならない持ち物とされていた。<選択の年齢>に達した女性は、必ずこれを携帯しているのだ。
※選択の年齢:成人として認められ、自らの判断を許される年齢。男子は十七歳、女子は十四歳で、その資格を与えられた。
キルヴォラグとは、直訳すれば「櫛入れ袋」で、櫛などの化粧用品を入れて、身分、階級を問わず、いかなる女性も常に携えている必携品である。財布の役も果たしており、普通、ベルトで腰に吊るされていた。
「農婦たちが着る、ごくありふれた服をまとっておりました。」
履物は、鞣(なめ)していない粗皮(あらかわ)の平底に、同じ皮を切り取った革紐を縫いつけた、クアランと呼ばれるサンダルだった。服のほうは、羊毛とリネン地で、リネンの紐で細腰(ウエスト)を絞って着ていたのだろう。さらに、田舎の女たちがよく羽織っている、頭巾付きの短い肩掛け(ケープ)もあった。これも、兔の毛皮の縁取りがほどこされてはいるが、古びた代物である。
「肌着は、なかったのですか?」
「アブラナ科のグラシーンという草を搾って作る青色染料でしょう。」
「司祭殿は、キリスト教徒として、死が目前に迫っている者の戸口へ真夜中にやって来て、嘆き悲しむという『丘の女性(にょしょう)』を、つまりバンシーと呼ばれる妖精の存在を、本当に信じておられるのですか?」
「キリスト教徒として、儂は信じなければなりませんわい。なぜなら、聖書は、神にも悪魔にも仕える精霊たちのことにも、触れておりますからな。『丘の女性』バンシーが、そのどちらに仕えとる精霊であるか、誰にわかりましょう。遥かなる昔、バンシーは、ある特定の高貴な一家に庇護を与える女神であって、彼らの地上の生が終わって、『彼方なる国』に生まれ変わろうとする時が近づくと、差し迫った現世の死を悲しげに告げてくれる、と考えられておりましたのじゃ」
※彼方(かなた)なる国:アイルランド古来の信仰では、人が死ぬと行く国
※バンシー:アイルランドやスコットランドの妖精。人間の死を予告する。ゲール語でバン(Bean)は『女』、シイ(Sidhe)は『妖精』を意味する。アイルランドでは、旧家の誰かが死ぬときに泣くと言われる。バンシーが幾人か一緒に泣くときは、偉い人の死を報せているとも言われる。長い髪をして、緑の服の上に灰色のマントを着ている。目は絶えず泣くので真っ赤である。スコットランド高地地方では、ベン・ニー(水辺の濯ぎ女の意)などと呼ばれ、瀕死の人の死衣を洗う。
太古のアイルランドの掟には、王や首領は五体満足なる者であるべしとの定めがあった
「私の母国語の諺に、『証人がいると、嘘はさらに真(まこと)らしくなる』というのがございます。」
シャレード:茶番劇
ローブ:長衣
パーチメント:羊皮紙
デイーコン:執事
スカヴェンジャー:掃除屋
写書僧
書記僧
詳(つまび)らかにする
せせらぎ
張りのある声で、嫋々(じょうじょう)と
蟠踞(ばんきょ)
順(まつろ)わぬ人々
字母表
書名:芦屋山手(あしややまのて)お道具迎賓館
作者:高殿円(たかどのまどか)
出版:淡交社
内容:先生が「シロさん」と呼ぶ茶碗の付喪神に会ったのは、今から十年前、ここ神戸芦屋の山手(やまのて)の家に引っ越してきた頃である。この家は明治の世から続く閑静な住宅が立ち並んでいる中のひとつで、来客が多いせいか地元の人から「三条の迎賓館」と呼ばれている。ある日先生が庭いじりをしていると、庭土の中から白い茶碗を発見した。新しい茶碗が欲しかった先生は、ちょうど良いとこの茶碗を使うことにした。ところが、先生の友人で、茶道具を偏愛するアラブ人の「ほうっかむりさん」が、それを目にして大騒ぎする。「これは、白天目(はくてんもく)じゃないか」どうやらシロさんは、本能寺の変で焼失されたとされる織田信長が愛用した名品「白天目茶碗」らしい。だが、当の本人は長年土の中に埋まっていたせいか、どうも記憶が曖昧で何故この土地にあるのか自身の来歴を思い出せない。そんなシロさんは、この家に訪れる客たちが持ち込む茶道具の付喪神と会話することで記憶を辿ろうとする。シロさんの持ち主となった先生は、本能寺の変で起きたことを推理するが……。
※本書は月刊誌『なごみ』2020年4月号~2022年5月号にて連載した「けっこうなおてまえ」をもとに、単行本化にあたり加筆修正した作品。
「昔の茄子は、いまのように天狗の鼻みたいに長くなくて、丸かったんですよ。水茄子は珍味だって言われて、天平(てんぴょう)のころの天皇さんだって好んでお食べになったんですよ」
書名:栄光の<連邦>宙兵隊 ミッション1 異星使節団を守護せよ
原題:Valor's Choice
作者:タニア・ハフ(カナダ作家)
出版:ハヤカワ文庫SF
内容:文明を発展させて広大な宇宙に進出した複数の知的生命体が組織する<コンフェデレーション(連邦)>。ところが、アザーズ(異星体)と呼ばれる好戦的な種族が、連邦の領域に攻撃をかけてきた。連邦の外交使節団を皆殺しにしたアザーズとは戦うしかないが、連邦所属の種族たちは既に暴力を放棄して久しい。そこで、宇宙に進出したばかりの未熟で攻撃的な種族であったヒューマン(地球人類)を連邦の一員に迎え入れた。それから一世紀半。さらにディ=タイカンとクライの種族が加わって、連邦のために戦うようになっていた。<連邦>宙兵隊の二等軍曹トリン・カーは、半数の戦友を喪ったハードな戦闘から生還した。ステーション帰還六日目の朝、顎に埋め込まれたインプラントの起床ラッパ音で目を覚ましたトリンは、見知らぬ部屋のベッドにいた。トリンの隣りには血みどろの惑星降下戦の記憶を追い払うのにうってつけの相手、ディ=タイカンが眠っている。ディ=タイカンはヒューマンから見て「エルフ」の容姿に、マスクによる抑制処置が必要なほどフェロモン過剰な体質をもつ情熱的な種族だ。インプラントの警告メッセージで遅刻寸前だと知ったトリンは、別れも告げずに慌てて服を着て宿舎に戻る。すると戦死した曹長の代理を務めるトリンに、ローズ大尉の執務室への出頭命令が届く。時間ぴったりに出頭すると、執務室には左脚を再生タンクで治療中のローズ大尉の他に将軍がいた。モリス少将はシークオ中隊に新たな指令を与える。<連邦>に加盟を検討中の新種族・シルスヴィスへの使節団を警護する儀仗兵の任務だ。少将曰く、シルスヴィスの指導者たちは戦士階級に属していて、相手に強い印象を与えられる実戦部隊が担当でなければならない。そこへ新たに着任した上官がやって来て紹介される。現われた新任少尉ディ=カ・ジャレットは、なんと昨夜一緒に過ごしたディ=タイカンだった。二日後の出発準備のために退室したトリンは、ジャレット少尉と恋愛を仕事に持ちこまないということで合意すると、さっそく一個小隊の編成に取り組む。外交使節の大使には、<連邦>に古くから所属する平和主義の種族が着任する。すなわち、巨大なクモ型種族のミクトック、大きな毛むくじゃらで行動が鈍重な種族のドルナゲイン、小柄で羽毛を持つ種族のラクヴァの三種族だ。<連邦>軍航空艦<ベルガニタン>に乗船した使節団は、惑星シルスヴァに到着すると、大気圏内用シャトルに乗り換えて各地を訪問した。一行にはシルスヴィス軍の士官クリ・ソウエスが付き添う。各地で歓迎式典や<連邦>による飛行ショーが行われ、儀仗兵を務める実戦部隊の兵士たちが退屈するほど順調に進んでいた。ところが、移動中の使節団が乗っていたシャトルがミサイルで撃ち落とされてしまう。墜落場所は、若い雄のシルスヴィスたちが社会から隔離されて殺し合う場所である自然保護区。トリンたち宙兵隊は否応なしにトカゲ型の種族であるシルスヴィスと戦闘になり……。女性下士官の活躍を描いたミリタリイSF小説。
※作者は1957年、カナダのノヴァスコシア州ハリファックスの生まれ。オンタリオ州キングストンで育ち、カナダ海軍に三年間勤務した経験がある。現在はトロント郊外に居住。
※「著者あとがき」によると作中の戦闘は、1879年1月22日から23日にかけて戦われたロルクズ・ドリフトの戦い(ズールー戦争の初期)がモデルです。
ホル:ホリスの愛称
ディ=タイカン:エルフの外見を持つ種族
ミクトック:クモ型種族
ヒエラルキー:階層構造
「両親は結婚していたからです」
※自分はbastard(私生児)ではないということ。bastardには、「いやなやつ」という意味もある。
ABEMA視聴
屍者の帝国(アニメ映画)
“死者蘇生技術”が発達し、屍者を労働力として活用している19世紀末。ロンドンの医学生ジョン・H・ワトソンは、親友フライデーとの生前の約束どおり、自らの手で彼を違法に屍者化を試みる。その行為は、諜報機関「ウォルシンガム機関」の知るところとなるが、ワトソンはその技術と魂の再生への野心を見込まれてある任務を命じられる。それは、100年前にヴィクター・フランケンシュタイン博士が遺し、まるで生者のように意思を持ち言葉を話す最初の屍者ザ・ワンを生み出す究極の技術が記されているという「ヴィクターの手記」の捜索。第一の手がかりは、アフガニスタン奥地。ロシア帝国軍の司祭にして天才的屍者技術者アレクセイ・カラマーゾフが突如新型の屍者とともにその地へ姿を消したという。彼が既に「手記」を入手し、新型の屍者による王国を築いているのだとしたら・・・?フライデーと共に海を渡るワトソン。しかしそれは、壮大な旅のはじまりにすぎなかった。イギリス、アフガニスタン、日本、アメリカ、そして最後に彼を待ちうける舞台は・・・?魂の再生は可能なのか。死してなお、生き続ける技術とは。「ヴィクターの手記」をめぐるグレートゲームが始まる!
※作家・伊藤計劃が残した草稿30枚の遺作を、親交の深かった作家・円城塔が書き継いで完成させたスチームパンクSF小説『屍者の帝国 The Empire of Corpses』の劇場アニメ。
1878年
人間は死亡すると体重が21グラム減少、それが霊素の重さ、いわゆる魂の重さだ
疑似霊素を注入することで死者を蘇生させる、偽物の魂
ザ・ワン
死者蘇生技術を軍事利用、労働力へ
ネクロウェアをインストール
チャールズ・ヴァベッジ
霊素解析は国家機密、重罪
無許可の死者復活
ウォルシンガム・エム
1878年英領インド帝国ボンベイ、アメリカ元大統領ユリシーズ・グラントを目撃
到着早々ロシア側と銃撃戦
ロシア製の死者爆弾
フレデリック・バーナビー:ガイド、監視役
アレクセイ・カラマーゾフは死兵を盗み反乱を起こし、アフガニスタンへ
ロシア人案内者、ニコライ
1878年カイバル峠
カブール
アメリカ元大統領
秘書・ハダリーに助けられる
アレクセイは生者に蘇生技術を
手記の破棄を望む
手記は日本にある
1879年東京
大日本帝国陸軍・ヤマザワセイゴ
オオサト化学会社
ザ・ワンが手記を奪う
リッチモンド号でアメリカへ
ポール・ヴァニアン
ザ・ワンによる死者暴走
1979年サンフランシスコ
ザ・ワンはロンドン塔に移送中
トーマス・エジソンが造った機械人形、魂から生ずる感情はノイズ
ノーチラス号で英国へ
ヴィクターの脳
シャーロック・ホームズ
アイリーン・アドラー=ハダリー
ABEMA視聴
スティール・シャドー 五代十国伝(映画:字幕)
舞台は西暦945年。五代十国時代。実話を元にしたファンタジー歴史アクション!天下統一のために地獄の業火を奪い取れ!
舞台は「五代十国時代」!天下統一のために戦う皇子の物語!
閩(ビン)を滅ぼした張本人の麻十。彼は南唐の王の息子であり、父親の天下統一のために地獄の業火が必要だった。しかし、閩王が暗殺され在り処を知っている者は無名のみ。だが、無名は争いの間に意識を失い記憶を無くしてしまったのだった。そんな無名に麻十は医者として近づく。果たして地獄の業火を奪い取ることはできるのか...。また、人狼など様々な敵と戦うアクションシーンにも注目だ!
五代十国時代とは、中国の唐の滅亡から北宋の成立までの間に、黄河流域を中心とした華北・中原を統治した5つの王朝(五代)と、華中、華南と華北の一部を支配した諸地方政権(十国)とが興亡した時代のことである。南唐と閩は当時実際にあった国であり、どちらも十国のひとつである。また、劇中で945年に閩が南唐の皇子の陰謀によって滅亡したように、同じく945年当時、閩で内紛が起こり、そこにつけ込んだ南唐によって閩が滅ぼされた。実話を元にした歴史背景を盛り込んだファンタジーアクションがここに!!
あらすじ:五代十国時代の945年、閩が南唐の皇子の陰謀によって滅亡した。閩王に仕えていた龐存義は記憶を無くし倒れていたところ、銭茉季(センマツキ)によって救助された。後に無名と名付けられ、医者の麻十と出会う。麻十の正体は南唐の皇子であり、父親の天下統一のために唯一地獄の業火の在り処を知っている無名の記憶を回復して奪い取ろうとしていたのだ。そんなある日、銭茉季が何者かによって誘拐されてしまう。麻十らは銭茉季を助けに向かうが...
以下、内容を理解するためにメモしながら視聴(ネタバレ)。
↓
閩は南方にあり、北に呉越(ごえつ)、南唐(なんとう)。西には楚(そ)。中原は戦乱が続いていた。
閩王は長楽城で地獄の業火を得る儀式の最中に、甥・戈和(カワ)によって暗殺される。閩王に仕えていた龐存義(ホウソンギ)は襲撃者たちと戦うが敗れて倒れた。
妖術を使う襲撃者の一人で「仙女」と呼ばれる女は、南唐の皇子・麻十と繋がっていた。
仙女は戈和に地獄火の地図を要求するが、拒否される。
重傷を負った龐存義は仙女に拾われ、命の恩人である仙女を姉と慕う銭茉季(センマツキ:六安(りくあん)茶房の女将、通称「銭女将」)に託されて看病を受ける。
仙女の目的は、儀式の直前に龐存義が閩王に託された物を得ることだ。
傷の癒えた龐存義は記憶を無くしており、無名(むみょう)と呼ばれて六安茶房に雇われて暮らす。
無名は記憶を取り戻すために、医者・麻十(まじゅう)の治療を受けている。
茶房には銭茉季に求愛中の北国出身(遊牧民の頭髪)で30歳の男・阿久(アジョウ)も出入りしており、無名と喧嘩になることもある。
一方、仙女・青雀は民を虐殺したことを養親の香龍潭主(こうりゅうたんしゅ)に責められ、蜀の地(閩)を得るためだったと説明し謝罪する。
青雀と麻十と密会し、閨を共にする仲だった。麻十の正体は南唐の皇子だったのだ。麻十はいずれ潭主と敵対するだろうと告げて別れる。
無名は女将から持ち物を返される。永遠に消えない人魚の蠟燭と寒鉄刀(かんてつとう)だ。
何か思い出さないかと迫り、閩国の仇を討つようにと言う女将。
無名は追い出さないでほしいといい、給金を女将に返してさがる。
その夜、女将は誘拐され、趙と名乗る香龍潭主に会う。
無名を託したのは自分で、青雀は弟子だという香龍潭主は、女将に質問する。
地図は知らない、無名は記憶喪失のままだと答えた女将は帰宅を許される。
だが、突然現れた妖人に襲われ、女将は攫われる。
香龍潭主は助けようとするが、李銘十(りめいじゅう)が欲しがっていると言われて阻止される。
遅れてやってきた青雀が、犯人は南唐の双魔(そうま)だろうと告げられる。
翌日、過去の記憶にうなされて起きた龐存義、傍には麻十が付き添っていた。
そこへ青雀がやってきた。庭で阿久をふくむ三人で相対する。
青雀に、女将の居場所を知りたければ、彭蠡(ほうら)湖)へ行けと言われて、小袋を投げられる。
そこの山荘に女将が囚われており、大魔(だいま)と小魔(しょうま)という老人がいるというと、青雀は怪鳥に乗って去った。
小袋の中には地図がはいっており、三人は騎馬で駆けつける。
その途中で妖人に阿久がさらわれ、二人は後を追うが、崖から落ちてしまう。
運良く助かった二人は、阿久の悲鳴を聞いて助けに向かい、幽冥(ゆうみょう)山荘にたどり着く。
徳隆望尊(とくりゅうもうそん)という扁額がかかった建物には閩国の先王が祀られていた。
そこへ助けを求める声が聞こえる。戸口から外を覗くと、若者が柱にしばられていた。
閩王の一族の者らしく地獄火の地図について尋ねられ、大魔と小魔に拷問されていた。
麻十の持っていた香で三人を眠らせると、縛られていた若者を助ける。
若者を廟の中に運び込み、鼻の下のツボを指で押して意識を回復させる。
目覚めた若者は無名を龐(ホウ)将軍と呼び、自分は戈和と名乗り、閩王は叔父だという。
閩は南唐によって滅び、父も皇子に殺されたと説明する。
女将について尋ねると、梯子で下におりて雲夢(うんむ)洞に逃げたと言われる。
双魔が目覚めぬうちに、雲夢(うんむ)洞へ行こうと麻十が提案し、三人は移動する。
しかし、大魔と小魔が現われ、無名と戦闘になる。
だが、人狼が現れて乱入し、戦闘になる。
麻十が投石して助勢し、隙をついて三人は撤退する。
雲夢洞に逃げ込んだ三人は、そこが先秦時代の墓だと見当をつける。
壁画を見ると生贄の女子に火をつける火種の儀式が描かれていた。
記憶が刺激された無名に二人は思い出すように促す。
人魚と鮫の皮を燃やし油で凝固した万年の蠟燭に火をつける無名。
そのとき人狼が追いついて来て、三人は逃げる。
無名は記憶を取り戻しかけ、閩王に下賜された短刀の中に地図が入っており、そこへ行くように言われたと話す。
隠し部屋の奥に横たわる女将を見つけた無名は喜ぶが、戈和は「それは閩王だ」という。
目覚めた女将は無名を襲う。
戈和は目覚めた閩王に襲われる。
麻十は目覚めた青雀に襲われる。
麻十は灯りを倒した拍子に正気に戻る。
自分で首を絞める戈和と一人で戦う無名に声をかけて、正気に戻す。
すべては毒気による幻覚だったのだ。
麻十は真実を告白しようとするが、戈和が袖を引いて止める。
無名の投薬を間違えたと言って謝る。
そのとき、女性のうめき声が聞こえてきた。
石像に縛られた女将を助け、阿久の行方を尋ねると、別の部屋に行ったと言われる。
無名は「これで身を守るように」と短刀を女将に渡し、石の扉を開けて進む。
戈和は女将と後に残る。
無名と麻十は、入った部屋で人狼に襲われている阿久を見つける。
無名が助けに入って人狼と戦うが、劣勢だ。
無名は戦ううちに記憶を取り戻し、ついに人狼を倒す。
その頃、戈和は女将を襲って短刀を奪おうとしていた。
そこへ青雀が現われ、女将を助ける。
戈和は短刀を奪って逃げようとするが、青雀に攻撃され、短刀を取りあげられる。
そこへ阿久を助けた二人が戻ってきた。
戈和は麻十の正体を暴露しようとする。
青雀は地図を抜いた短刀を投げて阻止するが、戈和は短刀を拾って逃げる。
直前に石像が派手に飛び散ったために戈和の逃げた先が分からず、手分けして探すことになる。
麻十に追いついた青雀は、「李銘十」と呼びかける。
戈和に追いついた無名と阿久は策略について尋ねる。
戈和は麻十の本名は「李銘十」で、閩国を滅ぼした南唐の皇子だと真実を教える。
青雀と麻十の罠だと戈和が語っていると、突然床が開いて、水が噴き出す。
阿久は「自分は泳ぎが得意だ」と無名を押し出して石扉を閉め、戈和を助けに水に飛び込む。
だが、水中で戈和に刺されてしまう。
扉を開いて出てきた戈和は助けてくれた阿久の姿が見えないという。
無名が中に戻ると、床は石畳に戻っており阿久は居ない。
石畳を叩いて阿久を呼ぶ無名。
ふたたび女将を攫って逃げる戈和。
無名が後を追うと、戈和は女将に刃を突きつけ牽制する。
洞窟の奥は不思議な場所になっており、天井は湧き出る水の底が見え、其処に阿久の死体が漂っていた。
無名が阿久を殺した戈和を「卑怯者」と罵ると、「お前も沢山の人を殺した」と言い返される。
そのとき、無名の記憶が戻り、戈和が閩王を殺した犯人だと思い出す。
戈和は「この世に善人など一人もいない。女将も青雀の間者だ」と暴露し、骸骨のしゃれこうべを落とす。
そのせいで異変が起きたことに気付いた無名は女将を連れて逃げたが、地獄火を手に入れたと喜ぶ戈和は「全部自分の物だ」と笑っていて気付かない。
爆発が起き、戈和は巻きこまれて吹き飛ぶ。
爆発で洞窟が崩れ始め、無名と女将、麻十と青雀は脱出する。
洞窟の外には双魔が待ちかまえていたが、麻十の正体を知っていると無名が付きつける。
無名は麻十に真実を突きつけると、麻十は閩王は暴君だったと指摘する。
天下を統一して戦を無くしたいという麻十に、長楽城の民を殺したと無名は言う。
虐殺は青雀の行為だと双魔が声を揃える。
青雀は戈和と手を組んでいたことを認める。
無名は民を殺した者は生かしておけないという。
青雀は濡れ衣だといい、女将は命の恩人を庇う。
青雀は女将に毒薬を飲ませ、女将は気絶する。
青雀と無名、双魔は戦う。
青雀は麻十に襲い掛かる。麻十は咄嗟に地面に転がっていた竹を突き出して応戦し、青雀は串刺しになる。
麻十が青雀を抱きしめ「何故?」と問うと、無実を信じてもらうためにわざと手に掛かったと告白する。
「私が死ねば貴方は安心して君主になれる」
青雀は息絶え、麻十が「雀児」と叫ぶと、遺体は無数の青い鳥となって飛んで行った。
後日、無名、麻十、女将は金久(きんきゅう)の墓に参る。
麻十は天下統一の夢のためにも祖国に戻ると言い、無名は阿久の母に会いに桃の花が咲く故郷に戻るという。
無名と麻十は手を握り合い、別れの挨拶をする。
麻十が去ると、無名は女将に別れを告げる。
女将は無名の背中に声をかける。
「桃の花が散ったら、阿久の母と帰ってきなさい」
無名は頷く。
※茶房で茶を淹れる場面に違和感。手順がこの時代の方法と違うのでは?煎茶の淹れ方に見える。
お買物の帰りに神社でお参りしてきました。
毎年のことながら階段で息切れ、日頃の運動不足を思い知らされました。
十中八九、明日は筋肉痛でしょう。
書名:後宮の検屍女官7
作者:小野はるか
出版:角川文庫
内容:大長公主(だいちょうこうしゅ)の事件が解決して六日目の夜、宮城は嵐に襲われる。掖廷令(えきていれい)を務める宦官・孫延明(そんえんめい)は、皇太子から帝の病状が悪化していると告げられる。皇后許氏と敵対派閥の宦官・魚中常侍(ぎょちゅうじょうじ)も暗躍しており、後宮には公主の事件に関わった間諜が潜んでいる危険な状況だ。玉座の交代における政争に負ければ延明の命はない。そして、延明の頭を悩ませる調査書――「姫桃花(きとうか)の実父・羊角莽(ようかくもう)に、桃花以外の『子』がいる」。この人物こそ間諜ではないかと考える延明は、戸籍に記載のない「子」の存在について桃花に探りを入れる。すると、羊角莽の助手を務めていた婢が「子」かもしれないと告げられた。そして、嵐の去った後宮は落雷で破損した箇所の修復作業に追われるが、そんな最中に二つの死体が見つかった。一つは飛翔殿の厨のかまどの中で発見された女官の焼死体。もう一つは尚方署(しょうほうしょ)の古い作業場で自死した宦官の死体――。焼死した女官・媛児(えんじ)は虞美人の闘鶏の世話をしており、かまどの奥から焼けた鶏が見つかったことから逃げた鶏を追っての事故だという報告だった。ところが、八兆の検屍の結果、遺体は死んでから焼かれたものだと判った。そのうえに、周囲の証言にもつじつまの合わない点があるのだが、皆一様に口をつぐんでいる。さらに、自死だとされた宦官・黄陽牙も同僚が偽装殺人だと延明に訴え出て……。互いに特別な絆を深める延明と桃花。後宮の疑惑と謎を検屍術で解き明かす中華後宮ミステリ。
御龍体(ごりゅうたい)とは、やんごとなき帝の御体のことである。
中朝官(ちゅうちょうかん)とは、禁門の内まで侵入する特権を有した側近高官らのことである。
光禄勲(こうろくくん)とは九卿(きゅうけい:閣僚)のひとりだ。帝を守護する羽林(うりん)軍の指揮権を持ち、殿門の守護をつかさどる職の長である。
御婢(ぎょひ)とは、主人の手がついた婢女(はしため)である。
妻としてあつかわれることはなく、第二夫人ともちがう。だが主人の確たる所有物であり、主人以外の男との姦通は罪である。
裘(けがわ)、狐裘(こきゅう)
背心(はいしん:袖なしの上着)
衾(ふとん)
書刀とは、木簡の書き損じを削るための文房具である。
飛翔殿は、塀で四角く囲まれた典型的な四合院づくりだった。大門をくぐったさきが外院(そとにわ)であり、塀と合わさった長屋が伸びている。そのなかに厨(くりや)や倉庫、厠(かわや)が配置され、水回りに従事する婢女の住まいなどが押し込まれてある。小さいながら井戸もあった。外院は、身分の賤(いや)しい下々の世界である。
ここから垂花門(すいかもん)を経てようやく院子(にわ)、そして正房(おもや)だ。垂花門は閉じられていたので、側門をくぐって院子に入ると、正房にあがる低い階(きざはし)のまえ
となり房(べや)から廊下をつたい、やってきた虞美人。そのまま正房の堂へと入ってゆく。
殿舎の奥、床几(しょうぎ)に腰をおろした虞美人。
正房の裏手にある女官用の房
使用人用の小房(こべや)
飛翔殿に到着すると、侍女らによって、正房へと案内される。通されたのは、中堂(ひろま)だ。正面の主人席に、床几に座する虞美人。
篆字紋(てんじもん)
洗沐(やすみ)
※漢代の官僚の5日めごとの休暇は〈洗沐〉と呼ばれた。
尚方署(しょうほうしょ)は帝のためのさまざまな器物を製作、保管する手工官署である。
尚方は内廷の中、後宮の外である。
尚方の作室という場所は、多くの工人が出入りすることもあり、宮城の外に通ずる掖門(えきもん)を有している。これを作室門といい、
内廷の諸施設には男の官奴(かんど)がおり、一部では男の官吏も配置されている。少府(しょうふ)の長官や太医令(たいいれい)が男である場合もある。また、大夫(たいふ)である中朝官も出入りを許されている。
「ふたりは殴り合いの喧嘩になっていました」
拳(こぶし)をもってこれを争えば闘殴罪、血を見れば闘殺傷罪である。
「闘殴罪では、黄陽牙も笞刑(ちけい)、あるいは杖刑(じょうけい)になってしまいます。」
闘殴罪は、さきに手を出したほうの罪が重くなる。
児(じ)――すなわち『こども』である。
「ちびだから、小(しょう)」と安易に改名する。
「児から小って……呼ぶときは阿(あ)をつけましょう。阿小(あしょう)」
阿とは、名前の一字につける愛称である。小も愛称としてつかうのだが、これ以上の改名はかわいそうなので
童子とは幼い子供、または小間使いをする子供をいう。そのままの名前だ。
二段になった提盒(おかもち)
書名:獣の記憶
原題:Wolfszeit
作者:ニーナ・ブラジョーン
出版:創元推理文庫
内容:フランス、ルイ十五世の時代。1965年、ジェヴォーダン地方では、謎の獣による襲撃が頻発していた。犠牲者は既に30人を超え、ほとんどが若い女や子どもだった。狼か未知の獣の仕業なのか。村人たちは警戒し、貴族は狼狩りを行って対策していた。そんな折、ダプシェ侯爵の妹イザベルは村の旅籠「白い雌牛亭」を訪ねようと乗馬中に落馬し、従者ともはぐれた際に獣に襲撃される。一方、十七歳の博物学者の卵トマ・オーヴレイは、上昇志向の強いブルジョワ階級の父シャルルから強引に縁談をすすめられていた。父に連れられてパーティーに出席したトマは、主催者のジャン・バティスト・デュ・バリー子爵から縁談相手であるクレールと伯父であるド・トレマン伯爵を紹介される。絵の教師と恋仲だったというクレールは心を閉ざしており、トマも諦めて受け入れるしかない状況だ。結局、トマがこのパーティーで知り合って友人となったのは、縁談相手ではなく将軍の愛人と噂される女性ジャンヌ・ド・ヴォーベルニエだった。ある早朝、トマは助手を務める博物学者ド・ビュフォンに呼び出される。ド・ビュフォンはヴェルサイユ宮殿の御前会議に出席するために、資料をまとめる手伝いをトマに命じる。御前会議ではジェヴォーダン地方で繰り返されている謎の獣の襲撃事件について議論されるのだ。ド・ビュフォンに頼み込んで同行させてもらったトマは、国王の前で意見を述べる機会を得る。そして、国王の第一銃士兼第二狩人であるフランソワ・アントワーヌ・ド・ボーテルヌの意向に忖度し、獣の正体は狼の可能性があると述べた。その結果、国王がヴェルサイユから派遣する狼狩りの狩人の一行にトマも同行できることになった。獣の正体に興味を抱くトマは意気込むが、人々はよそ者を警戒する。ヴェルサイユの一行は襲撃のあった現場付近の領主の城ベセーに宿泊することになった。トマは犬飼い係のアドリアン・バルタンに声をかけられ親しくなる。彼は城主の甥で伯爵令息エリク・ド・モランジアスに仕えているという。夜、トマは夢遊病の美しい少女に遭遇する。翌日、貴族の娘らしい彼女が誰なのか、トマが使用人に探りを入れても誰も答えない。滞在中、トマが城の図書室を利用していると、件の令嬢らしき姿を目撃するが逃げられてしまう。後には彼女の持ち物とおぼしき書物が残されていた。何気なく本のページをめくったトマは、野獣の絵が描かれていることに気づく。どうやら彼女は“野獣”に襲われて生き延びたらしい。実は野獣の襲撃を神罰と司祭が語ったため、令嬢が被害に遭ったことは隠されているのだ。そのうえ被害者であるイザベル・ダプシェは襲われたときの記憶を失っていた。やがてトマは城を出て、狩りの一行の宿営地に割り当てられた旅籠「白い雌牛亭」に移動することになった。だが、到着した際の行き違いから旅籠の娘マリー・シャステルに言い寄ってると勘違いされて、娘の兄弟から暴行されてしまう。誤解がとけた後、イザベルから託された拳銃を旅籠の女将に渡そうとするが断られた。どうやらダプシェ侯爵家とシャステル家には過去に因縁があるようだ。トマは旅籠の息子で父親と兄弟に疎まれているというバスティアンと友人になるが……。18世紀のフランスを舞台に、謎に包まれたままの怪事件の真相に迫る、ゴシックミステリ。
※原書初版2012年
※原題は「狼の時」という意味
※作者は、1969年スロヴェニア生まれ。ヴュルツブルク大学でドイツ文学とスラブ文学を専攻。教師やジャーナリストを経て作家となる。現在はバーデン・ヴュルテンベルク州在住。
※この作品は18世紀のフランスで実際に起きた『ジェヴォーダンの獣』事件を土台に作者が創作したミステリ。
※1764年から1767年のあいだ、オーヴェルニュ地方とジェヴォーダン地方(現在のロゼール県の一部)では、女性や子供が狼に似た謎の動物に襲われる事件が頻発した。犠牲者の数や獣の正体については諸説あり、様々に憶測されて人狼説まででたが、真実は不明のままである。
かつらは茶色の馬の毛でこしらえてあった。地毛はブロンドの巻き毛
表地は雨を弾くように蠟引きになっている。
フープスカート:鯨骨の輪を入れて裾を広げたスカート
アングレーズ:英国風社交ダンス
トライコーン:三角帽子
メガラニカ:南方大陸
「どんな花を探しているんだい?このあたりでよく見かける黄色いリンドウ(リンドウの根で作る酒エンツィアンにひっかけている)かい?」
料理女が壜を持ってきて、琥珀色の液体をついだ。
「聖ジョルジュ様に乾杯!」全員が十字を切り、杯をあけた。苦みのある蒸留酒が舌を刺激する。
※「黄色いリンドウ」とは、黄色い花を咲かせるリンドウ科の多年草ゲンチアナのことと思われる。ゲンチアナの根および根茎は非常に苦く、苦味健胃作用がある生薬である。漢方方剤で使われる龍胆と類似した生薬である。
※ヨーロッパアルプス地方の蒸留酒・エンツィアンはリンドウ科植物の根・根茎を原料としており、ゲンチアナを利用する場合がある。
※ゲンチアナを原料としているフランスのリキュール・スーズは、消化を促進する効果があるといわれており、フランスでは食前酒としてよく飲まれている。
ジャン・ルブラン?あの鷲のジャン・ル・ブラン?どこの世界にハラジロワシなどと名乗る者がいる?
丘の上に鎮座する城は、太い塔がごつごつした花崗岩の城壁から突き出ている。窓は小さく、まだ昼下がりだというのに廊下も部屋も薄暗い。壁は角材にスラグ煉瓦、天井はモルタルだ。暗い色の床板は歩くたびに音がする。
食堂をのぞくと、樫(かし)のテーブルの上には鹿の枝角でできたシャンデリアがぶらさがっている。
「『前線の悪魔の塵』てなんのことだ?」
「質の悪い黒色火薬のことさ。力が弱くて弾が半分飛んだだけで落ちちまう。敵に当たったところで殺せない。」
銃の準備をした。袋から火薬を出して銃身に流し込み、弾を棒で押し込んで発射薬を圧縮した。それから撃鉄を起こした。
「あいつは銃を分解して、発火皿から点火剤を抜いた。」
「レ・ノワゼット(ハシバミ村)。ムラサキハシバミが群生していて、それでそう呼ばれているの。」