書名:アフリカの百万長者 ホームズのライヴァルたち 論創海外ミステリ100
原題:An African Millionaire : Episodes in the Life of the Illustrious Colonel Clay
作者:グラント・アレン
出版:論創社
内容:「私」ことシーモア・ウィルブラハム・ウェントワースは、南アフリカの百万長者サー・チャールズ・ヴァンドリフトの義弟で、秘書でもある。二人は社交シーズン直前の南仏リヴィエラに行き、ニースのホテルに滞在した。そして当地で大評判の「メキシコの大千里眼」の話を聞いた。有能な金融家のサー・チャールズは、いかさま師の化けの皮をはがしてやろうという気を起こす。そこでウェントワースを派遣し、ホテルの部屋に呼び寄せて、その腕前を披露させようとする。セニョール・アントニオ・エレラと自称する男は、快く誘いに乗る。こうしてウェントワースに監視されながらホテルに来たセニョール・エレラは、サー・チャールズと観客の前でテーブル・マジックのようなものを披露した。サー・チャールズはトリックを見破ったと言い、その場はおひらきになった。翌朝、千里眼の話題を出したマダム・ピカルデがホテルを去った。さらに十日後、ロンドンの銀行口座から五千ポンド引き出されていることにウェントワースが気付く。被害を悟ったサー・チャールズは警察に駆け込む。すると、応対した署長曰く「どうやらクレイ大佐の仕業ですな。クレイ(粘土)と呼ばれているのは、顔がまるでゴムでできているように思えるからです。本名、不明。国籍、半分フランスで半分イギリス。住所、だいたいヨーロッパ在住。職業、以前はグレヴァン蝋人形館で蝋人形を製作していた。年齢、自分で決める。蠟人形の知識を生かして、蠟を使って鼻や頬を変え、これぞという人物になりきる。あの男をフランス語では『ル・コロネル・カウーチュ(ゴム大佐)』と呼んでいますが、逮捕に成功した警察官はいません」だが、サー・チャールズは「つかまえてやる」と言い……〔メキシコの千里眼〕。これが、クレイ大佐とサー・チャールズの騙し合いの幕開けだった。スイスでは持ち主がその価値に気づかずにいるらしい宝石を、実際の価値よりも安く手に入れたつもりが罠に嵌められたり〔ダイヤモンドのカフリンクス〕、もう騙されるものかと疑心暗鬼の二人が、クレイ大佐に違いないと思い込んだ相手を騙して英国警官に引き渡したつもりが別人で、クレイ大佐から嘲笑の手紙が届き、世間に対しても赤恥をかく〔レンブラントの肖像画〕。やがて「現代のロビン・フッド」を自称するクレイ大佐は、サー・チャールズを標的にすると宣言した手紙を送り……フランス、スイス、イギリス、イタリア、アメリカと、世界を舞台に繰り広げられる二人の対決の物語。
※原書初版1897年、『ストランド・マガジン』に1896年6月号から翌97年5月号まで、連続して十二か月間連載された作品を集めて一冊にした連作短編集。
※作者チャールズ・グラント・ブレアフィンディ・アレンは1848年カナダ・オンタリオ州生まれ。オックスフォード大学を卒業後、ジャマイカの大学等で教鞭を執った。その後はイギリスに戻り論文などを発表したが、生活のために小説を書くようになった。1899年に死没。遺作の最終章を友人のコナン・ドイルが書き継いで完成させ、没後に出版された。
<収録作品>
The Episode of the Mexican Seer メキシコの千里眼
The Episode of the Diamond Links ダイヤモンドのカフリンクス
The Episode of the Old Master レンブラントの肖像画
The Episode of the Tyrolean Castle チロルの城
The Episode of the Drawn Game ドロー・ゲーム
The Episode of the German Professor ドイツ人の教授
The Episode of the Arrest of the Colonel クレイ大佐の逮捕
The Episode of the Seldon Gold-Mine セルドン金山
The Episode of the Japanned Dispatch-Box 漆塗りの書類箱
The Episode of the Game of Poker ポーカー勝負
The Episode of the Bertillon Method ベルティヨン法
※ベルティヨン法とは、著名な犯罪学者でパリ警視庁の鑑定局長を務めたアルフォンス・ベルティヨン(1853~1914)が作り上げた身許を確定するシステムのことで、指紋が犯罪捜査に導入される以前、犯罪捜査に活用された。
The Episode of the Old Bailey オールド・ベイリー(中央刑事裁判所)
シー:シーモアの愛称
オテル・デ・ザングレ:英国ホテル
ムッシュー・コミセール:署長
メッシュー:ムッシューの複数形
リヴィエール:三連首飾り
コンシェルジュ:接客係
グラフ:伯爵
フライヘール:男爵
八月十二日:雷鳥猟解禁日
オノラブル:男爵子息
ロイヤルティ:著作権料、鉱山使用料
「ベラドンナの目薬をさせば、瞳孔が開いて、千里眼の出来上がり。阿片を五グレイン使えば、瞳孔が縮んで、死人のような、愚かだが無邪気な顔になる。」
「ダイヤがダイヤを切った(「悪知恵でしのぎを削る」という意味の成句)というわけですな」
『親愛なるミスター・ヴェントヴァース
ドイツ語ふうにWをVに発音するだけで騙せたわけだ!最後のTHは危険を承知で英語の発音のままにしていたがね。しかし、外国人にとってはWよりTHのほうがずっとむずかしい(略)』
ドクター・エリヒュー・クワッケンボスは――いかにもアメリカ人らしい名前だ(「クワック」には「いかさま医者」の意味がある)――
勲爵士に叙せられた植民地人をイギリス人は貴族とは考えない
上級勲爵士(KCМG)
ティッチボーン詐欺事件:ティッチボーン准男爵になりすました男が財産を相続しようとした事件。1871年に裁判が行なわれた。