ペストの夜 上巻 | kanoneimaのブログ

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私的備忘録

書名:ペストの夜 上
原題:Veba Geceleri (Nights of Plague)
著者:オルハン・パムク(トルコ作家)
出版:早川書房
内容:1901年4月、オスマン帝国の皇帝アブデュルハミト二世の勅命により、義和団の乱で荒れる清(中国)に諮問団が送られることになり、帝国旗を掲げた汽船アズィズィイェ号がイスタンブルを出港した。諮問団には先帝ムラト五世の娘でアヴデュルハミト二世の姪であるパーキーゼ姫と彼女と結婚したばかりの夫で疫学者であるヌーリー医師も含まれていた。ところが、航海の途中で寄港した港湾都市イズミルでボンコウスキー衛生総監が乗船し、彼と助手を東地中海のミンゲル島に送ることになる。クレタ島とロドス島の間に位置するミンゲル島では、ペスト流行の噂が囁かれているのだ。ペスト禍を抑え込むため皇帝に派遣されたボンコウスキーだが、彼はミンゲル島で何者かの手によって惨殺される。一方、ボンコウスキーをミンゲル島で下船させたアズィズィイェ号はアレクサンドリアに寄港しているところへ、皇帝からの暗号電文が届く。死んだボンコウスキーの代わりに、ヌーリー医師はミンゲル島とその州都アルカズにおけるペスト禍に対応するべく島に赴くようにという命令だった。パーキーゼ姫とヌーリー医師は、ミンゲル島出身のキャーミル上級大尉を護衛として伴い島に降り立つが……。架空の島ミンゲルを舞台にした歴史長篇。

パーキーゼは「清らかで美しい」を表す言葉

本書の掉尾(ちょうび:物事が最後になって勢いがよくなること。また、最後。「とうび」とも読み、捕らえられた魚が死ぬ直前に尾を振ること。転じて、最後の意。)
回想録を渉猟すれば
渉猟: 1 広くあちこち歩きまわって、さがし求めること。 2 調査・研究などのために、たくさんの書物や文書を読みあさること。
本書の劈頭(へきとう:物事のはじめ。最初。冒頭。)
教誨(きょうかい)いたしたく:教えさとす
シャッポ:《(フランス)chapeauから》帽子。特に、つばのある帽子。シャポー。
のべつ幕なし:絶え間なく続くさまを表す言葉。語源は、「延べつ」に「幕なし」を重ねたもので、「絶え間なく」といった意味の「延べつ」、「幕なし」は芝居で幕を引かずに演じ続けることを意味する。明治以降に使われるようになった言葉。
聡慧(そうけい:才知にすぐれること。また、そのさま。聡明。
絶佳:すぐれていて美しいこと。非常にすぐれていること。また、そのさま。
その名声も赫奕(かくえき)たる化学者
赫奕:1.光り輝くさま。2.物事の盛んな・こと(さま)。
太りじし:よく太っていること。肉づきのよいこと。
正鵠を射ている:物事の急所や要点を正しくおさえることを表す慣用句。「正」「鵠」とも弓の的の中心にある黒点の意味があり、同様の意味で「正鵠」という熟語が古代中国で生まれた。「正鵠」は的の中心の意味から、物事の要点や核心の意味に転じた。明治時代に物事の急所や要点を正確につく意味で「正鵠を得る」が生じ、「正鵠」に「的」の意味があるところから、昭和に入って「正鵠を射る」の形が生まれた。
懸絶(けんぜつ:著しい隔たりがあること。非常に大きな差があることを表す言葉。)
樹木の一色(ひとしき)ならざる緑色
平和に時を閲(けみ)してきた
閲する:1 見る。調べ見る。改める。検閲する。 2 調べ読む。閲覧する。3 経過する。 年月を過ごす。経る。
騒擾(そうじょう:集団で騒ぎを起こし、社会の秩序を乱すこと。「擾」は、乱れるの意。)
三嘆:何度も感心する。何度も嘆く。
慨嘆:気が高ぶるほど嘆いて心配すること。
形而上学的(けいじじょうがく)
譴責(けんせき:1 しかり責めること。不正や過失などを厳しくとがめること。2 懲戒処分のうち最も軽いもの。職務上の義務違反について警告し、将来を戒めること。現在、法令上では戒告という。)
険阻な対応:1 地勢のけわしいさま。また、その所。2 顔つきなどのけわしいこと。
諮(はか)る:(下の者に)意見を求める、相談。
綸言(りんげん:1.(「綸」は組糸。天子の口から出るときは糸のように細い言葉が、下に達するときは組み糸のように太くなる意) 天子の仰せごと。君主のことば。みことのり。2. (「綸言汗の如し」から) 汗をしゃれていう語。)
瀰漫(びまん:1.水が満ちあふれること。水原の果てしなくひろいこと。また、そのさま。2. 転じて、ひろがり満ちること。ひろくはびこること。また、そのさま。)
鬱勃: (「鬱」は上から押えて、ものを中にこもらせること、「勃」は草木が芽を出すように、中にたまったものがふき出すこと) こもりつもった気が盛んに出るさま。また、胸中にみちふさがる意気が、今にも発しようとしているさま。また、意気が盛んにわき起ころうとするさま。)
こまっしゃくれた表情:子どもが、おとなびたこざかしい言動をする。子どもがませた様子をする。言動などが大人ぶっていて生意気であるさま。
軌を一にする:1.車の通った跡を同じくするように、立場や方向を同じくする。2.国家が統一される。
一口両舌(いっこうりょうぜつ:同じ事に関して別のことをいうこと。前に言ったことと後で言ったこととが違うさま。うそをつくこと。二枚舌。)
カスケット帽:ハンチング帽(鳥打帽)の一種。フランス語のカスク(casque、かぶと・ヘルメット)の指小形(-ette)で、前びさし(前方のみのつば)がある帽子のことである。

○○・パシャ:政府高官に付される尊称。閣下などに担当。
ハジュ・○○:巡礼者。メッカ巡礼を果たした者に付せられる尊称。

「クブルスル・キャーミル閣下は並ならぬ才知に恵まれ徳も高く、お名前のとおりに完璧(キャーミル)な御仁でした」