翌週、林さんのお家に向かっている時から
その予感は始まっていました
何かがいつもと違う感じ･･･
でも、その何かの中身が
ハッキリしないまま
私は林家のインターフォンを押していました
その日もお手伝いさんは、
にこやかに私を出迎えてくださり、
とても感じが良かったのに、
私は何か不穏な空気を感じて
顔がこわばり、笑顔を返せませんでした
この感じ、なんだろう･･･
何かを感じているのに、
何を感じているのか分からない
でも、確かに嫌～な感じがする
変だなぁと思いながら、
玄関で靴を脱いでいると
パシッ
と、頭のすぐ上で大きい音がしました
ひいっ！！
と、なり、助けを求める眼で
お手伝いさんを見たけれど、
彼女は全く聞こえていない様子でした
え？今の音なに？？？
もしかして、ラップ音ってやつ？？？
いや、このお家木造やし
きっと木が軋む音やわ
気のせい、気のせい。。。
と、自分に言いきかせながら、
8畳間へ向かいました
8畳間では、いつもどおり
林さんが待っていてくれましたが
一歩入った途端、
この部屋の雰囲気が、いつもと違いすぎて
私は自分の顔が引きつるのを抑えられず
下を向いたまま、挨拶をしました
林さんは、気づかない様子で
穏やかにゆっくりと、気候の話をされ
私は、内心動揺していたので
相槌を打つのがやっとでしたが
仕事で来ているのだから！と
手だけは一生懸命動かすのでした
その、施術の間も
パン！とか
バシッ！！とか
いう音が続き、
その度に、ビクッとなりながら
林さんの様子を覗き込みましたが
林さんは温灸が始まると眠ってしまわれ
私は1人でその音を聞いていることに
生きた心地がしませんでした
もぉ～！！！何なん？？？
今日は、一体どうしたん？
早く仕事を済ませて、帰りたいー！！
という気持ちが最高潮に高まった時
｢あー！暑い！｣
という声と、廊下をバタバタと
進んでくる足音がしました
高木さんが来たのです
私は、なぜか高木さんの騒々しさが
この空気を吹き飛ばしてくれるような気がして
「高木さん」
と声を出して呼びました
ところが、
部屋に入ってきた高木さんの姿を見て
私はゾッとしました
高木さんの顔色が、、、
いえ、顔色というより形相が
いつもと全く違ってとても青白く、
目の下にはクマができていたからです
座ったままの姿勢で
背骨に沿って、下から上へ
悪寒が走る感じがして
喉がカラカラになり
必死に発した言葉は
かすれた声しか出ませんでしたが
やっとの思いで
「だ、大丈夫ですか？」
と言えました
高木さんは、私の顔を見て驚き
「どうしたの？」
と言い、
その瞬間、
すべての色が戻ってきたような感じで
部屋の雰囲気もいつもの感じになりました
さっきまで肌寒かった体の温度まで
急に上がった気がしました
林さんが
「ああ気持ちよかった。
また眠ってしまったわ。」
と、目を覚まして部屋から出て行き
高木さんは施術の為に
服を脱ぎ始めました
あれ？
全部気のせいやったんかな？
よくわからないまま、でも気持ちの悪い
雰囲気が去ってくれたことに安堵しながら
私は高木さんの施術を始めました
部屋の雰囲気はもとに戻ったけれど
やっぱり高木さんの顔色は悪く
心なしか１週間前より痩せた感じもします
目の下のクマも先週はなかったのにな・・・
と思いながら高木さんに触れると
どこからともなく、
すうーっと、あの光の玉が現れて、
高木さんの顔の上にふわふわ来たかと思うと
高木さんの目の周りを
ぐるぐると旋回しはじめました
ええっ！？今度はなに？
なんか来た！
怖いやん！！！
私は、座った姿勢のまま後ろに仰け反り
目を閉じて休まれている高木さんから
少し体を離しました
「よく見てやってほしい」
耳からではなく、頭の中に
直接、声が降ってきました
直感で、
あの光の玉からきたメッセージ？
林さんのご主人！
と思ったとたん、怖さはどこかへ去り
もう一度、高木さんに近づいて触りました
そっと目に触れると、高木さんが
「最近なんだか目が見えにくくて。
老眼進んでるのかしら？」
と言いました。
視力が落ちている？
高木さんが、目のことを
話すのを待っていたかのように
光の玉は、次は足元へ移動して、
移動したかと思うと消えました
あれっ！どっかいっちゃった？
もう満足してくれたんだったら良いけど。。。
と思いながら、
次はうつ伏せになるようにと
一度、高木さんを起こします
背面を触っていると
ん？
ん？
んんーっ？
なんと高木さんの足が
内側から
ぼおーっと光り始めたのです
え？足が光ってる？
いやいやいやいや・・・
さすがに怖い・・・
やっぱ帰りたいかも
ちらっと時計を見ると
もうそろそろ施術を終えても良い時間
今日はいろいろありすぎて
いつもより時間がかかっていたのか
お仕事で行かせていただいていて、
あってはいけないことなのですが
その時は怖さから、
正直、もう足には触れないで
帰らせていただこうかと
チラッと思ってしまったのでした
次のお仕事の時間もあるしな・・・
と、頭の中で言い訳をしていると
またあの声が降ってきました
「よく見てやってほしい」
またあの声！と、ドキドキしていると
それと同時に携帯電話が鳴り
飛び上がるくらい驚きました
番号を見ると、次のお仕事の
患者さんからだったので
「施術中ですが失礼します」
と言って、電話に出ました
電話の要件は、急用ができたので、
今日の施術をキャンセルしたいというものでした
やはり、私は
光る足と向き合わなければ
帰れないようでした
続く。。。
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