彼女になれますか? 【AKB創作小説】 -19ページ目

彼女になれますか? 【AKB創作小説】

AKB48のメンバーをモデルにした長編創作小説サイトです。男体化あります。少し不思議な学園ラブコメ風な内容になる予定です!チームK&二期生中心。








第15話 奇跡は間に合わない その2








***


待ちに待った長期休みが始まり、本格的な夏が到来した。

毎日のように続く暑さに我慢の限界だとうるさい香菜は、ここ最近ずっとリビングに入り浸っている。
エアコンがリビングにしかないからだ。
めーたんもそんな彼女と同じでこの猛暑に耐えきれず、2人で冷たい風に当たるのが最近の日課らしい。

サエはジッとカレンダーを見つめながら今日の日付の数字にマジックでバツを付けた。
才加がインターハイへと向かい旅立ってから数日。
カレンダーに並んだバツの数が彼の不在を物語っている。

今か今かと彼の帰宅を心待ちにしているのだが、第一回戦を勝ち抜いてしまい帰りが長引いたのだとか。
嬉しいことなのだが、会えないとなると素直に喜べない。

はぁ…とため息をつき昨日電話で話した内容などを思い出して気を紛らわす天使とは反対に、「家が女だらけで楽じゃん!」とキャミソールにショートパンツ姿の香菜。
めーたんは露出の多くなった娘になぜか歓喜の悲鳴をあげていた。

夏休みで学校も勉強もない素晴らしい毎日なのに、心にポカンと穴が空いたようにつまらない。
これがあと何日続くのだろう。早く、早く帰ってこないかな。

サエは唇を突き出して拗ねたように部屋のベッドにゴロリと寝転がった。
彼のいない彼の部屋。
いつもと同じ光景なのだが、才加が帰ってくるとわかっているから待っていられた。

今日も、明日も帰ってこない。
そう思った途端、途轍もない孤独感がサエの心を襲った。

会いたい。
心の中でそうポツリと呟けば溢れそうになる涙。
こんなに会わない期間が続くなんて思ってなかった。
枕に顔を埋めて涙を誤魔化した後、気分を変えようと部屋を出てリビングへと向かうことに。

階段を降りて居間へのドアを開けると、そこにはテレビを見ながらソファーの上でくつろいでいる母と子。
そのテレビを見た瞬間、先ほどの暗い顔が吹き飛んだ。

「あー!じぇんてぃるどんな!」
「ん?あー、サエ。」
「ちょうど今始まったところよぉ。サエちゃん、お馬さん好きでしょ?」
「大好き!」

軽快な足取りでテレビの前へと向かう天使。
テレビの内容は競馬番組で、ひょんなキッカケで見ていたらハマってしまったのだとか。
VTRが始まり、先日行われたレースのハイライトが流れる。

「わぁー!すごいすごい!」

ワクワクするような表情でその結果を見守っていると、ある一頭の馬がぐんっと駆け上がり先頭に立った。
そのまま猛スピードでゴールすると、天使は両手を挙げて盛り上がっている。

「わぁーい!じぇんてぃるどんなが一位だぁ!」
「どれ?そのジェンなんとかって。」
「これこれ!この一位の!」

テレビ画面を指差しながら説明しているサエに、わかってるのかわかってないのか曖昧な返事を返す香菜。
彼女は「あ、そうだ」と何かを思い出したらしく天使に声をかけた。

「明日からだね。課題やった?」
「へ?なんの?」
「夏期講習。」

その言葉を聞いて凍りつくサエ。
カキコウシュウって、確か学校へ行って勉強することじゃ…。

「追試組は強制的に参加することになってるって言ってたじゃん!聞いてないの?」

知らないー!と嘆き始めた天使は頭を抱えて項垂れた。
突然奈落の底へと突き落とされたような気分に、天使はソファーから崩れ落ち、床に寝転がったまま足をバタつかせている。

めーたんはそんな彼女を微笑ましく思いながら声をかけた。

「サエちゃん。はい、翼見せてみて。」
「ふえー?…あ、はーい!」

サエがその場に座り直し「んー!」と唸りながら力を入れると、ポンッと音を立てて背中に真っ白な2つの羽が現れた。
その付け根をめーたんが観察する。

こうやって家族の誰かが定期的に彼女の怪我の様子を見ているのだ。
ようやく治りかけてきたその傷。
裂かれたようにボロボロになっていたそこも、長い月日をかけてやっと癒えてきたようだ。

「だいぶ綺麗になってきたわねぇ。」
「うん!」
「でもまだ油断禁物よぉ。治りかけだからって飛んだりしないこと!」
「わかったよーん!」

陽気に笑いながらそう言ったサエは、もう一度羽を消すために唸っている。
ポンッとまた音を立てて消えたそれを見ながら、めーたんはポツリと呟いた。

「サエちゃん、怪我が治ったら天国へ帰っちゃうのよねぇ…」
「え?」
「めーたん、寂しいわぁ。」
「私もやだー」

振り返ると寂しそうに眉を下げて自分を見つめている2人。
そんな彼女たちに目頭が熱くなってしまう。

自分だって寂しくないわけがない。
近づいてくる別れの日を、何度来なければいいのにと思ったことか。
だけどそういう訳にはいかない。
天使として生まれたからには、ここにいつまでもいられる訳ないのだ。
彼女たちが幸せになるために、天使としての使命をしっかり果たさなくては。

「大丈夫だよぉー!時々遊びに来るから!」
「絶対だよー!?」

自分との別れをこんなにも寂しがってくれる。
それはとても嬉しい事だと、天使は心の中で感謝を告げニッコリと彼女たちに向けて微笑んだ。