彼女になれますか? 【AKB創作小説】 -17ページ目

彼女になれますか? 【AKB創作小説】

AKB48のメンバーをモデルにした長編創作小説サイトです。男体化あります。少し不思議な学園ラブコメ風な内容になる予定です!チームK&二期生中心。








第15話 奇跡は間に合わない その4








***


翌日。
サンサンと照りつける太陽の下、夏期講習のために昨日と同じく学校へと急ぐサエと香菜。
時折歩道に存在している街路樹の日陰が気持ちいい。

日焼けをしないようにクリームを丹念に塗っている香菜に対して、特に何もしない天使。
それを問いかけると「もともと地黒だからもう慣れた」と諦めたような返事が返ってきた。

ようやく着いた校舎の昇降口で靴を履き替え教室までの廊下を歩く。
香菜と他愛ない会話をしながら、サエは今日の目的を思い返していた。

夏期講習に参加しているアスカにこの症状がなんなのかを聞くこと。
彼女も知らない場合も考えられるが、自分より物知りなんだしきっと大丈夫!と天使は漠然とした希望を持ちながら足を進める。

本当に何らかの病気だった場合、ここは意地を張らずに仲間の天使を呼び寄せ治してもらおう。
羽の怪我のように目に見えるものならまだしも、体の中のことだから少し休養を取った方がいいかもしれない。
こんなに天使の仕事を休んどいて申し訳ないのだが、こんな事は初めてでどうしようもなく戸惑っている。

天使が病気なんて、聞いたこともない。
だからこそ今の状況が怖いのだ。

教室に入ると見慣れた親友の姿。
智美はこちらに手を振っているし、アスカは智美の耳を摘まみながら香菜とサエに挨拶をした。

そんな悪魔に顔を近づけコソッと一言耳打ちする。

「放課後、話あるから付き合って。」

そう言うと驚いたように天使の顔を見上げるアスカにサエは頷くと自分の席へと向かった。

それから数時間後。
講習が終わる鐘が鳴り響き、教室を出て行く教師。
それを見計らったようにアスカの元へ駆け寄った天使は、ぐいっと帰る支度が出来た彼女の腕を掴んだ。

「香菜、ともーみ!ちょっと用事あるから先に帰っててね!」

そう彼女たちに告げてからアスカを引っ張り廊下へと走り出した天使の姿に、不思議そうに首を傾げる2人。
サエは急ぐようにアスカの腕を掴み歩く。
今だにこの状況を把握できずにされるがままになっている悪魔は、彼女の突然の行動にとまどいを隠せないようだ。

ようやく辿り着いたのは屋上。
そういえば初めてこの学校に来た時もここに連れて来られたな…と、天使にバレないように思い出し笑いをするアスカ。
悪魔に背を向けていた天使は、くるりと踵を返し彼女と向かい合う。
そして躊躇うような表情のまま暫く沈黙していたが、ようやく決心がついたのかキッと強い眼差しで彼女を見据えた。

「あのさ、聞きたいことがあるんだけど…」
「なに?」
「…。サエ、もしかしたら病気かもしれないの。」
「は?」

ポカンとした表情のままアスカは天使の顔を見つめている。
そんな彼女の様子に、変なこと言っただろうか?と少し不安になってしまう。

「天使が病気するわけないでしょ!」
「え?そうなの?」
「知らなかったの?」
「…うん。」
「…。で、なんでそう思ったの?」

小さなため息をついた悪魔は話の続きを促すと、サエは手を胸に当て彼女に訴えるように説明し出した。

「あのね、体がおかしいの!」
「どういう風に?」
「胸がぎゅうって痛くなって、苦しくなるんだよ!ドキドキして落ち着かなくなる。」
「…え?」
「オカロを見てる時だけなの。他の人を見てもそんなことないのに…。」
「…。」

アスカはサエの説明を聞き、怪訝な表情を浮かべた。
それから手を顎に置き、何かを考え込むような仕草をしている。

「ねぇ、ぽっちゃん…」
「ん?」
「もしかしてさ、もっさんの事考えると何も手につかなくなったりしてない?」
「え?うん。」
「もっさんに会うと顔が真っ赤になったり…」
「あ!それ、昨日オカロに言われた!顔赤いって!」
「もっさんと誰か女の子が仲良くしてたりすると嫌な気持ちになったりする?誰にも渡したくない!とか…」
「ええ!?なっ、な…なんでわかんの!?」

アスカは天使が抱えている悩みや気持ちをピタリピタリと当てていく。
昨日の顔の赤みだけではなく、あの日優子に抱いた感情さえも。
やっぱり彼女はこの現象がなんなのか知っているようだ。

驚いているサエの様子にアスカは口元に手を当てた。
そんな悪魔に縋るように彼女の腕にしがみ付いた天使は、原因を急かすようにブンブンとその腕を振り回している。

「ねぇ、これ何なの!?病気!?教えて!」
「…ぽっちゃん。」
「はい!」
「それは恋だよ?」
「…?コイ?」

言葉の意味がわからない天使に、アスカは一度コホンと咳払いをしてから彼女がちゃんと理解できるように説明した。

「恋愛ってこと。」
「へ?」
「だから、ぽっちゃんはもっさんに対して恋愛感情を持ってるってことだよ!」
「…。ええええええ!!??」

ようやく意味を理解したサエは目を丸くして驚きの悲鳴をあげている。

「何言ってんだよ?天使に恋愛感情なんてないんだよ?」
「でもその症状はどう考えても恋だし、過去に何人かそういう天使もいたことあるって古文書に書いてあったよ。ぽっちゃん、読んでないの?」
「…うん。」

その返事を聞いたアスカはため息をついて「ぽっちゃん、本読み始めたら3秒で寝る人だしね…」と呆れている。
力の抜けたサエの手がアスカの腕から離れる。

コイ、レンアイ…そんなものは天使である自分とは関係のない事だと思っていた。
絶対に理解することのない物だと思っていたのに。

これは本当にその類のものなのだろうか?アスカの勘違いじゃないのか?
そう疑ってみたが先ほど怖いくらい的中した症状を思い返し、やはりそうなのかも…と天使は思う。

恋愛というのはある特定の人物に特別な愛情を向けること。

何度も何度も天界で説明を受けたこの文章を思い出すと同時に、頭に浮かんだ彼の顔。

胸に湧き上がる甘い痛み。
今すぐに会いたい。会って優しく不器用なあの笑顔を見たい。
繊細な彼を守ってあげたいし、幸せにしたい。
そばにいたい。

そんな想いがどんどん溢れ出し、無意識に胸元に手を当てる。

そうか、これが…。

繰り返し説明されてもあまりピンと来なかったあの説明書き。
今なら理解できる。

自分は彼に特別な愛情を向けているのだ。

やっと自覚した想いにサエは呆然としていたのだが、アスカは何やら落ち着かない様子でそんな彼女を見つめている。

天使は悪魔の態度がおかしい事に気付き、不思議そうに彼女に問いかけた。

「アスカ、どうしたの?」
「…。」
「ねぇ。」
「ぽっちゃん、あの…これも古文書に書いてあったんだけど…。」
「うん。」
「恋愛をした天使はね…。」