再来 | はりねずみのジレンマ

はりねずみのジレンマ

最初に決めた二人の約束は、破られてしまいました。

大野くんのことも貴子さんのことも、結局、どうなったかわからないまま、
時間だけが過ぎました。
ふと思い出すときもあったけど、日々の生活の中ではそんなに重要なもの
ではなくなった、と自分でも感じるくらいにまでは、遠いことになっていました。

それが、急に現実の出来事として、
貴子さんが私の職場にやってきました。

私の職場は、受付で呼び出しを受けて初めて対応できるのですが、
「妹」と名乗ってきたあの人に困惑しました。
だって本当に妹の名前を名乗っていたので。

「なんで、ここに?」
私は、どんな顔をしているのか自分でもよくわかりません。
「私のこと、無視するから」
貴子さんは、そう言って写真を差し出しました。

そこには、大野くんと知らない女の人。遠目の写真でしたが、二人は笑い合っているように見えました。