対面 | はりねずみのジレンマ

はりねずみのジレンマ

最初に決めた二人の約束は、破られてしまいました。

約束の時間ちょうどに電話はかかってきました。私は自分のいる場所を説明しました。
ツアー客に混じって、あの人が近づいて来ました。
地元の駅で会って以来、何年たっただろう。かわいい人は変わらずかわいい人でした。
私が会釈すると、あの人も立ち止まり会釈をかえしました。お互い何も言わずしばらく相手の顔を見ていました。

最初に、口火をきったのは、あの人でした。
あさみさんですね?
私は、小さく深呼吸してはい。とだけ答えました。

あの人は、私は貴子です。
ご存知ですよね?
口元だけにかすかに笑いがありました。