夕飯のあとで、秋虫が数種類鳴いていますが、開け放った窓からは心地よいそよ風が入ってきて、今夜だけは秋が間近にきていることが窺えますし、涼風を実感することができています。


なんの種類の虫かは分りませんが、羽をこすらせる種類の虫が何種類か音色を聴かせてくれて、心が和む思いをしていますが、漸く季節が変わり始めていることを、夏ばての身に知らされてくれます。


夕刻になってから仕事が一段落したので、小一時間ほど夕闇が早まった街並みを走って、姉が入院している街を目指していました。


車のヘッドライトも輝くほど、国道には光跡がみごとに見えて、時間的には随分日没時間が早まっていることが移動する方向によって変容して、たちまち秋の深さを如実に感じさせてくれました。


思い切り車のドアーのガラス窓を開放させて、外気を取り込もうと画策したのですが、これは車からの熱い排気ガスがまともに飛び込んできて、さすがにエアコンをフル回転させていました。


病院がある街の近所はまだ里山や小山が残っていますから、緑が豊富で、車窓から見た目にも気分を爽快にしてくれるのですが、国道に一杯の車からの排気ガスが、とんでもなく異臭をはなってくれました。


白亜の病棟が聳え立っている街は、10日振りなのですが、果たして術後の姉は元気なのかと気にしながら、混雑をする駐車場に向かいました。


都合3回目の訪問で、丁度夕食が配達された病室は、個室から大部屋に移動されていて、3人のコミュニテーが構築されていましたので、興味津々で観察をされている空気を感じていました。


おそらくは、今頃になってから、姉弟の似ているとかどうかの四方山話で華が咲いているのではないでしょうか、患者の皆さんが術後の快復を待っている方ばかりで、近代的な病棟とあわせて明るい雰囲気が安心できました。


術後病身の身でありながら、意気地なしの愚弟に対してなにかと心配をしてくれるのですが、実にありがたい存在で、最近になるほどに尊敬の念を深くしてしまっています。


高層の病室から眺められる街並みはすっかり闇夜に包まれていて、真っ暗ななかに家路の外灯と車のヘッドライトが交錯して、灯かりの躍動感を観ることができました。


切開した傷口を治癒する間の一ヶ月が、姉のプライベートルームになるのですが、新しい交流と友愛に恵まれることを願って、気さくで安心した毎日を念じてしまいます。


帰路にエレベーターホールまで医療器具を引きながら来てくれて、身に余る光栄な励ましの言葉を受けてしまい、羞恥心とあわせて自分自身を鼓舞することを発奮していました。

エレベーターのドーアが閉まってお互いが見合った目頭が、うっすら霞んでいたことが、愚弟の申しわけな

い懺悔の気持ちを一気に高めてくれました。


子供のころの薄縁とは全く違って、高齢になってきた二人がようやく気心が知れて、信頼できる関係になっていることに、改めての感謝と報恩を誓ったところです。