トランプの親書をもってイランに出かけたと言われているアベシンゾウ。
イラン国内では、親書を渡すことも出来なかったと報道されているそうだけど、そんな最中にイラン沖のホルムズ海峡で日本のタンカーへの攻撃が起こった。
アメリカは即座にイランの関与を主張した。
この出来事はベトナム戦争開始の発端となったトンキン湾事件や、イラクへのアメリカ軍侵攻の理由となった「大量破壊兵器」問題を想起させる。
共にアメリカのでっち上げだったことは歴史が証明しているが、今回も同じ臭いがする。
そして安倍「外交」なるものが、国際的には嘲笑の的になった。
NHKのアベシンゾウ喜び組=岩田明子は現地まで出かけて、安倍を天まで持ち上げるニュースを流したが、国際的事実は次のごとし。
中東ジャーナリスト川上泰徳の記事。
川上泰徳
元新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」など取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランスとして夏・秋は中東、冬・春は日本と半々の生活。現地から見た中東情勢を執筆。著書に新刊「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)「中東の現場を歩く」(合同出版)「イスラムを生きる人びと」(岩波書店)「現地発エジプト革命」(岩波ブックレット)「イラク零年」(朝日新聞)
安倍首相のイラン訪問 緊張緩和の仲介とは程遠い中身と日本側の甘い評価
「米国とイランの緊張緩和のための仲介を目指して行われた安倍晋三首相の2日間のイラン訪問は12日、ロハニ大統領と、13日、最高指導者ハメネイ師との会談を行ったが、13日にホルムズ海峡であった日本のタンカーなど2隻への砲弾攻撃によって、国際ニュースから吹っ飛んでしまった。イランでの報道をみると、米イランの仲介という点では、安倍首相の訪問は完全に失敗だった。それに止まらず、状況は対話とは逆方向に進んでいることを印象づける結果となった。
安倍首相とハメネイ師の会談について、首相官邸サイトでは次のように書いている。
イランの最高指導者である、ハメネイ師と直接お目にかかり、平和への信念を伺うことができました。これは、この地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進であると評価しています。またハメネイ師からは、核兵器を製造も、保有も、使用もしない、その意図はない、するべきではないとの発言がありました。
一方、ハメネイ師の公式ウエッブサイトから発信された情報では首相官邸の談話にはないメッセージがある。首相官邸の簡単な談話に比べると、安倍首相との会談をほぼ網羅していると思われるので、長くなるがイランの主要メディアのファルス通信から引用しよう。
会談の中で安倍首相がハメネイ師に「私はあなたに米国大統領のメッセージを渡します」というと、同師は「私は日本が誠実で善意に基づいていることに疑いはありません。しかしながら、あなたが米国大統領について言ったことについては、私はトランプを私がメッセージを交換するに値する人間と考えていません。私からはいかなる返事もありませんし、将来においても返答するつもりはありません」と答えた。
安倍首相が米国はイランが核兵器を製造することを阻止するつもりであると語ったことに対して、ハメネイ師は「私たちは核兵器に反対しています。私のファトワ(宗教見解)は、核兵器の製造を禁じています。しかし、私たちが核兵器を製造しようと考えれば、米国は何もできませんし、米国が認めないことが(製造することの)障害にはならないことは、あなたも知るべきです」と語った。
さらに安倍首相が「トランプ大統領はイランの体制転覆を考えているわけではありません」と語ったのに対して、ハメネイ師は「我々と米国との問題は米国がイランの体制転覆を意図しているかどうかではありません。なぜなら、もし、米国がそれ(イランの体制転覆)をしようとしても、彼らには達成することはできないからです。米国の歴代の大統領たちは40年間にわたってイスラム共和国を破壊しようとしてきましたが、失敗しました。トランプがイランの体制転覆を目指していないと言っているのは、嘘です。もし、彼がそうできるなら、するでしょう。しかし、彼にはそれができないのです」と述べた。
また安倍首相が米国は核問題でイランと協議することを求めている、と語ったのに対して、ハメネイ師は「イランは米国や欧州諸国との六か国協議を5年から6年行って、合意に達しました。しかし、米国は合意を無視し、破棄しました。どのような常識感覚があれば、米国が合意したことを投げ捨てておきながら、再度、交渉をするというのでしょうか? 私たちの問題は、米国と交渉することでは決して解決しません。どんな国も圧力の下での交渉は受け入れらないでしょう」と反論した。
安倍首相がトランプ大統領の言葉として「米国との交渉はイランの発展につながる」と語ったのに対して、ハメネイ師は「米国と交渉しなくても、制裁を受けていても、私たちは発展してきます」と答えた。
ハメネイ師から公式に発表された安倍首相の内容を見る限り、安倍首相が提示したトランプ大統領のメッセージは、ことごとく拒否されている。米国との仲介者を演じる安倍首相にとっては取りつく島もなく、イラン訪問は完全に失敗したと評価するしかないだろう。
日本の主要な新聞各紙の14日付朝刊は、いずれも一面で扱い、上記の首相談話をもとに記事をつくっている。朝日、読売、毎日各氏の見出しを比べてみると、次のようになる。
▽朝日新聞
主見出し イラン「核製造しない」
副見出し ハメネイ師、米との対話は否定的
▽読売新聞
主見出し ハメネイ師、米との対話拒否
副見出し 「核兵器製造 意図ない」
▽毎日新聞
主見出し 米との対話拒否
副見出し ハメネイ師 安倍首相と会談後
3紙とも、記事の中でハメネイ師側の厳しい言葉にも触れている。ただし、朝日新聞は紙面としてはもっとも肯定的な見出しとなっている。しかし、ハメネイ師側の厳しい発表内容を見ると、「米との対話拒否」を主見出しに掲げた読売新聞や毎日新聞が、実際の会談の様子を伝える紙面づくりになっていると言わざるを得ない。
世界が注目した安倍首相とハメネイ師との会談であるが、「地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進であると評価しています」と肯定的な評価だけで、相手の厳しい反応を一切伝えない首相官邸の発表は、日本国民をミスリードするものであろう。この会談についてのNHKのインターネットサイトの記事は「『核兵器の製造保有の意思なしとハメネイ師が発言』 安倍首相」という見出しで、「ハメネイ師は、アメリカと対立するイランの立場を説明したうえで、核兵器の製造や保有を目指す意図はないという考えを示しました」と書いている。さらに「会談後、安倍総理大臣は記者団に対し、『ハメネイ師と直接お目にかかって平和への信念をうかがうことができた。この地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進であると評価している』と述べました」とする。
NHKはハメネイ師側の言葉は何も上げずに、「ハメネイ師はアメリカと対立するイランの立場を説明」と一言で要約していることには驚かざるを得ない。中東ではイランを含め強権体制のもとで、既存のメディアは政府の意向だけを報じていることはよく知られたことだが、安倍首相・ハメネイ師会談の報道を見る限り、NHKの報道も大差ないレベルである。
さらに朝日新聞とNHKが主見出しにもってきたイランは「核製造しない」とか「核保有意思ない」ということは、10年以上前からハメネイ師が宗教権威としてイスラムに基づくファトワ(宗教見解)を出して、繰り返し主張していることであり、ニュースでもなんでもない。今回のハメネイ師側の発表でも、「私のファトワ(宗教見解)は、核兵器の製造を禁じています」という事実を語っているだけである。
40年前の1979年のイラン革命を率いたホメイニ師や、その後継者であるハメネイ師が宗教見解として、無差別殺戮を行う核兵器の製造や保有を禁じ、それがイランで核兵器保有を押しとどめる要因になっていることは既成の事実である。しかし、そのような宗教見解があっても、イラン国内で核兵器保有を目指す動きがあるのではないか、という疑惑があるために、核協議が続けられ、やっと合意ができたのである。その合意から米国が離脱して、軍事的な危険が高まっている時に、日本の首相がテヘランに行き、ハメネイ師と会談して、会談後に「ハメネイ師は核製造も、核保有もしないと発言しました。この地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進です」と得意げに自国メディアに語るというようなおめでたい話でいいのだろうか。
安倍首相や官邸が「平和と安定の確保の前進」をあざ笑うかのように、ホルムズ海峡で日本のタンカーなど2隻が何者かによる砲弾の攻撃を受けた。ホルムズ海峡は日本にくる原油を運ぶタンカーの8割が通過すると言われる要所で、トランプ政権が対イラン強硬策をとり、緊張が高まる中、ペルシャ湾岸のバーレーンに基地を置く米海軍第5艦隊は、海峡周辺のパトロールを強化している。攻撃について、イランは関与を否定しているが、米国のポンぺオ国務長官は「イランに攻撃の責任がある」と断言し、新たな緊張が高まる要因となっている。
安倍首相がトランプ大統領の意を受けて、イランを訪問し、ハメネイ師と会談することは、中東でも大きく報道されたため、今回の攻撃は、両者の会談に合わせたものと考えるべきだろう。このような破壊活動について、何らかの国家的なインテリジェンスが関わっている可能性は否定できないだろうし、このような破壊活動で犯人捜しをしても、実行者がよほど杜撰でないかぎり、見つかりはしない。ただし、この事件から、日本の首相がイランの最高責任者と会うというタイミングを狙って、破壊活動を行う勢力があり、いつでも危機を生み出すことができるという中東の危うさを再認識することが必要である。
安倍首相とハメネイ師の会談と、タンカー攻撃のどちらを一面のトップニュースであつかうかは、日本では新聞によって扱いが分かれた。一方、米国のトランプ政権と並んで対イラン強硬派のサウジアラビアの主要紙シャルクルアウサト紙の14日付の1面は煙を上げるタンカーの写真を大きく扱い、タンカー攻撃が圧倒的なトップニュースである。見出しは「海峡に対するイランによる攻撃の後で、国連が“大規模衝突”を警告」というおどろおどろしいものであり、「イランの攻撃」と決めつけている。
安倍首相とハメネイ師の会談の記事は、その左隣に小さくあり、見出しは「ハメネイ師は日本の仲介を拒否」となっている。首相官邸が「地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進」と語った安倍首相のイラン訪問は、現地では危機が深刻化する要素の一つとして使われている。」
【ワシントン共同】米紙ウォールストリート・ジャーナルは14日、安倍晋三首相のイラン訪問中に日本のタンカーが攻撃を受けたことに絡み「中東和平における初心者プレーヤーが痛みを伴う教訓を得た」との見出しで報じた。トランプ米大統領が今回の訪問に謝意を示す一方、米国内に日本の中東外交への冷ややかな見方があることを示したと言える。
同紙は、タンカー攻撃で緊張が高まる中東情勢を踏まえ「日本の指導者による41年ぶりの訪問を終え、米国とイランの対立関係は以前より不安定になった」と論評。「米イランの橋渡し」を目指した訪問と紹介したが、訪問の成果に関する言及はなかった。
同会見後、米中央軍はイランの最高指導者直属の精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」の船舶が日本のタンカーに接近したとする映像を公開し、「不発だった吸着型の水雷を回収している様子」と主張した。トランプ氏は14日、米FOXニュースとのインタビューで「イランは証拠を残したくなかった」と述べ、証拠隠滅を図ったとの見方を示した。」 「朝日新聞」より引用
ホルムズ海峡タンカー「飛来物で攻撃」 運航会社が説明
「ホルムズ海峡はサウジアラビアなど中東各国が原油を輸出する大動脈で、世界の消費国にとって交通の要衝だ。資源をもたない日本は原油の8~9割を中東に依存しており、ホルムズ海峡経由の輸送は欠かせない。
今回の船舶攻撃は世界中のメディアが一斉に報じ、原油価格が上昇した。国際指標となるニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は日本時間13日夜時点で1バレル53ドル前後で推移する。12日終値に比べ約4%高い。
原油は米中貿易戦争の激化を背景に世界経済が減速し、需要が落ち込むとの見方が台頭。供給がだぶつくとの観測から4月下旬以降、値下がり傾向が続いていたが、相場は急速に切り返した。
市場では「被害が続けば中東産原油の供給網に支障が出る可能性が意識され、上昇圧力が強まりそうだ」(野村証券の大越龍文シニアエコノミスト)との声が出ている。
世耕弘成経済産業相は13日夕、「現時点で日本のエネルギー供給にまったく問題は生じていない」としたが、原油価格が高止まりするとガソリンの値上がりなどを通して国民生活への影響が避けられない。」 「日経新聞」より引用
様々な戦争の開戦のきっかけとなった歴史的謀略をまとめた記事は下記から。
緊張高まるペルシャ湾 戦争の最初の犠牲者は「真実」かもしれない