鹿児島県に脱原発知事が誕生したのは衝撃だ 三反園新知事は川内原発を止められるか | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

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脱原発路線を掲げて鹿児島県知事に初当選した三反園訓氏(写真:共同)
 
 

鹿児島県知事選で脱原発を標榜する元テレビ朝日・政治担当キャスターの三反園訓氏が当選したことに、電力業界が大きな衝撃を受けている。鹿児島県内に川内原子力発電所を有する九州電力の株価終値は、知事選翌日の7月11日に前週末比7%安の919円まで下落した。

 

 

稼働中の原発では初めて、関西電力の高浜原発3号機が大津地裁の仮処分決定により3月に運転停止に追い込まれた。さらに今回、原発に厳しい姿勢で臨む知事が就任することにより、政府や電力会社の原発再稼働路線に新たなくさびが打ち込まれた。

 

 

政策合意文書で「廃炉」を明記

 

三反園氏は県知事選のマニフェスト(政権公約)で、「熊本地震の影響を考慮し、川内原発を停止して、施設の点検と避難計画の見直しを行う」と表明。立候補を見送った革新系の平良行雄氏との政策合意文書(6月17日付け)では、「両者は知事就任後、原発を廃炉にする方向で可能な限り早く原発に頼らない自然再生エネルギー社会の構築に取り組んでいくことで一致した」と明記するなど、脱原発路線を鮮明にしている。また、「原子力問題検討委員会を県庁内に恒久的に設置する」こともマニフェストに盛り込んでいる。新潟県の技術委員会のように原子力分野の専門家を組織できれば、電力会社へのチェック機能としても大きな影響力を持ちうる。

 

 

もっとも、県知事は運転中の原発の停止を命じる権限を持っておらず、あくまでも九電の判断に委ねられる。今後、三反園氏は九電に停止を求めると見られるが、九電が知事の意向を受け入れなければ稼働が続くことになる。

 

九州電力は「現在までに、三反園氏から川内原発を停止してほしいとの要請は受けていない。原子力発電の必要性についての理解促進や安全確保の取り組みに引き続き努めてまいりたい」(報道グループ)と説明している。

 

 

ただ、一定の時間軸で見た場合、原発立地県で脱原発を掲げる知事が登場した意味は大きい。

川内原発1、2号機はそれぞれ10月、12月に法定の定期検査に入る。「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武代表は、「定検中に知事が特別な検査を要請する可能性がある」と予想する。

 

 

再稼働直後にトラブルに見舞われた川内原発

 

 

川内原発1号機は昨年8月の再稼働直後に復水器の細管が損傷して海水が混入するトラブルに見舞われたが、稼働を止めずに修理して済ませた。1、2号機の再稼働の前に実施された高経年化技術評価でも耐震安全性で余裕が乏しいと見られている機器が複数あることがわかっている。熊本地震では震度7の激震が2度にわたって起きたことから、繰り返しの強い揺れに設備が耐えられるかについても懸念が持たれている。

 

 

こうした問題について九電はきちんとした説明ができなければ、知事や県民の信頼を得ることは難しくなる。定検後の再稼働に影響が及ぶ可能性もある。

 

県は九電との間で締結した安全協定書の中で、「発電所周辺地域の住民の安全の確保および環境保全のため万全の措置を講じる」ことを九電に約束させている。設備の増設や変更、核燃料の輸送に際しても事前協議を義務づけている。また、県は発電所敷地内への立入調査権限を持ち、九電は住民の避難など地域防災計画への協力も約束している。安全協定書に基づいてこうした方策を活用することにより、今までより厳しい安全対策を求めることもできる。

 

40年超の運転に対して歯止めがかかる可能性もある。三反園氏は選挙前の記者会見で「川内原発1、2号機の運転は原則40年とする」と明言している。1号機は8年後、2号機は9年後にそれぞれ運転開始から40年を迎える。その時点で三反園氏が知事を続けていて、現在の方針が変わっていなければ、川内原発は廃炉に追い込まれる可能性もある。

 

強権的な伊藤知事の姿勢に県民は「ノー」

 

今回、脱原発の知事が誕生した理由として、敗れた現職の伊藤祐一郎知事による強権的ともいえる県政に対する批判の高まりが挙げられる。伊藤氏は熊本地震後も原発の安全性に懸念を示す市民の声に耳を傾けず、6月20日の知事選公約発表の記者会見では「川内原発1、2号機はあと30年は稼働せざるをえない」と発言。原則40年の期間を超過しての運転を容認する考えを示した。

 

 

「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」の高木章次代表は、「川内原発の再稼働に際しては周辺自治体から民意の反映を求める数多くの意見書が提出されたが、ことごとく無視された。そのうえ知事が60年稼働(20年の運転延長)を持ち出したことで、多くの県民がおかしいと感じた」と指摘する。

 

 

また、伊藤知事は県の総合教育会議で「高校の女の子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか。そんなことより、植物の花とか草の名前を教えたほうがいい」と発言したことが、男尊女卑の暴言だと批判を浴びた。知事の肝煎りで開校した男子だけの全寮制中高一貫校で高校入学者が定員割れになるなど、政策の失敗も目立った。

 

今回の知事選では、川内原発が立地する薩摩川内市でも三反園氏の得票がわずか7票ではあるが伊藤氏を上回った。三反園氏を支援した「川内原発建設反対連絡協議会」会長の鳥原良子さんは「商売をしているので名前を名乗れないだけで、地元でも原発に反対する意見は根強い」と説明する。特に熊本地震発生後、薩摩川内市内でも余震が続いていることから「住民の原発への不安感は大きい」(鳥原さん)という。

 

原発周辺地域でも脱原発の民意

 

「川内原発から30キロ圏内の住民意識はすでに大きく変わってきている」

こう述べるのは、東京女子大名誉教授で「安全・安心研究センター」の広瀬弘忠代表取締役だ。

 

同センターは再稼働を前にした2014年11~12月にかけて、重大事故時に避難や屋内退避を求められる川内原発30キロ圏在住の360人を対象にアンケート調査を実施した。そこでは、「川内原発で事故が起こった場合に避難できるか」との問いに、対象者の65.6%が「おそらく安全に避難できない」「安全に避難できない」と答えている。また、「国の原発事故対策は十分か」との質問には「あまりできていない」「まったくできていない」との回答の合計が79.8%に達している。「県や市町村の原発事故対策は十分か」との問いに対しても、「あまりできていない」「まったくできていない」の合計が80%に上っている。

 

 

「川内原発で事故が起きれば避難は難しい」と語る広瀬弘忠氏

 

 

広瀬氏は「川内原発周辺の道路事情を調べたが、事故時にスムーズに避難ができるとは考えられない。有効な事故対策がない中で、住民が原発の再稼働に厳しい目を向けるのは当然だ」と指摘する。こうしたことからも、三反園氏がマニフェストで「避難計画の見直し」を打ち出したことは時宜にかなっている。

 

 

こうした住民意識の変化はほかの原発周辺地域でも起こり始めている。安全・安心研究センターは5~6月にかけて、静岡県の浜岡原発31キロ圏内(緊急時の避難区域)に住む360人を対象に、川内原発と同様の住民アンケート調査を実施した。ここでも事故への不安を感じる人や再稼働を危険だと思う人の割合がそれぞれ60%を超えた。再稼働に「やや反対」「絶対反対」を合わせた回答も63.6%に上っている。

 

 

このように原発に対する住民意識の変化は鹿児島県に限ったものではない。住民意識の変化を認識せず、対話の姿勢すら見せなかった鹿児島県政に住民がノーを突き付けたことを目の当たりにして、背筋を寒くしている原発立地県の知事は少なくないだろう。 

 

                          岡田広行     「週刊東洋経済」より転載

 

 

 

 

参議院選挙と同時期に行われた鹿児島県知事選挙、保守色が極めて強く、中央直結の伊藤県知事が好き勝手なことをほざいてきた県で、川内原発NOの県知事が誕生した。

傲慢が服を着ていると言う評価が定着していた人物だが、原発事故の避難計画についてもそんな事態は想定できないなどと平然と答えていたようだ。

まあ身から出た錆だが、落選おめでとう。

 

三反園新知事が日本の原発政策に真摯に対峙して、県民の安心安全への願いを実現するために奮闘することを期待したい。