日米軍事協力新指針/各紙社説はどう論じたか | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

「原発なくそう ミツバチの会」の活動報告や事務局ノブクンの日々のつぶやきを発信しています。

「朝日新聞」

日米防衛指針の改定―平和国家の変質を危ぶむ

実に18年ぶりの「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)改定である。

 日米両政府が今後の安全保障政策の方向性を確認する新指針には、「切れ目のない」「グローバルな」協力がうたわれ、自衛隊と米軍の「一体化」が一段と進む。憲法の制約や日米安保条約の枠組みは、どこかに置き忘れてきたかのようだ。


 これまでのガイドラインは、1978年に旧ソ連の日本侵攻を想定し、97年には周辺事態を想定して改定された。今回はさらに、次元の異なる協力に踏み込むことになる。


 改定の根底にあるのは、安倍政権が憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認に踏み切った、昨年7月の閣議決定だ。それを受けた安保法制が今国会の焦点となる。


 その審議を前に、新指針には早々と集団的自衛権の行使が反映されている。自民党と公明党との間で見解の割れる機雷掃海も盛り込まれる。


 対米公約を先行させ、国内の論議をないがしろにする政府の姿勢は容認しがたい。


■戦後日本の転換点に


 「積極的平和主義」のもと、国際社会での日本の軍事的な役割は拡大され、海外の紛争から一定の距離を置いてきた平和主義は大幅な変更を迫られる。


 それはやがて日本社会や政治のあり方に影響を与えることになろう。戦後日本の歩みを踏み外すような針路転換である。


 その背景には、大国化する中国に対する日本政府の危機感がある。


 ――軍事的に日本より中国は強くなるかもしれない。それでも、中国より日米が強ければ東アジアの安定は保たれる。緊密な日米同盟が抑止力となり、地域の勢力均衡につながる。


 そんな考えに基づき、より緊密な連携機能を構築して、共同計画を策定。情報収集や警戒監視、重要影響事態、存立危機事態、宇宙やサイバー空間の協力など、日本ができるメニューを出し尽くした感がある。


 だがそれが、果たして唯一の「解」だろうか。


 中国の海洋進出に対して一定の抑止力は必要だろう。だがそれは、いま日本が取り組むべき大きな課題の一部でしかない。経済、外交的な手段も合わせ、中国という存在に全力で関与しなければ、将来にわたって日本の安定は保てない。


 軍事的な側面にばかり目を奪われていては、地域の平和と安定は守れまい。


■あまりにも重い負荷


 新指針が示しているのはどのような日本の未来なのか。


 まず多額の防衛予算を伴うはずだ。5兆円に近づく防衛費は自衛隊が海外での活動を広げれば、さらにふくらむ可能性が大きい。財政健全化や社会保障費の削減を進めながら、防衛費の大幅な拡大に国民の理解が得られるとは考えにくい。


 自衛隊員への負荷はいっそう重いものとなる。


 特に、戦闘現場に近づく活動が見込まれる陸上自衛隊には、過酷な任務が待ち構えている。海外で治安維持の任務にあたれば、銃を撃ったり、撃たれたりする危険がつきまとう。とっさの判断で現地の人を撃つ場面がないとは言い切れない。


 国際社会で日本の軍事的な関与が強まれば、それだけテロの危険も高まるだろう。


 近年は、警備の手薄な「ソフトターゲット」が攻撃される例が目立つ。外交官やNGO関係者ら日本人対象のテロを、より切実な問題として国内外で想定しなければならない。


 将来的には、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで自衛隊が米軍の後方支援に派遣される可能性もゼロとは言えない。南シナ海では、すでに米軍が警戒監視などの肩代わりを自衛隊に求め始めている。


■問われる方向感


 メニューを並べるだけ並べながら日本が何もしなければ、かえって同盟は揺らぐ。米国から強い要請を受けたとき、主体的な判断ができるのだろうか。


 安倍政権の発足から2年半。日本の安保政策の転換が急ピッチで進められてきた。


 安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(NSC)を創設し、国家安全保障戦略(NSS)を初めて策定。特定秘密保護法が施行され、武器輸出三原則も撤廃された。


 新指針では、「政府一体となっての同盟としての取り組み」が強調されている。政府が特定秘密保護法の整備を進めてきたのも、大きな理由の一つは、政府全体で秘密を共有し、対米協力を進めるためだった。


 安倍政権による一連の安保政策の見直しは、この新指針に収斂(しゅうれん)されたと言っていい。


 だが、国内の合意もないまま米国に手形を切り、一足飛びに安保政策の転換をはかるのは、あまりにも強引すぎる。


 戦後70年の節目の年に、あらためて日本の方向感を問い直さなければならない


「読売新聞」


防衛協力新指針 日米同盟の実効性を高めたい

平時から有事まで、切れ目のない自衛隊と米軍の共同対処の大枠が整ったことを評価したい。

                             

 日米両政府は、外務・防衛担当閣僚の安保協議委員会(2プラス2)で、新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)を決定した。


 安保法制の全容が固まったことを踏まえ、集団的自衛権の行使の限定容認に伴う様々な協力が盛り込まれた。海上自衛隊による米軍艦船の防護や、海上交通路(シーレーン)での機雷掃海などだ。


 日本の安全確保にとって、長年の懸案だった自衛隊に対する憲法解釈上の制約の緩和は、米軍との機動的かつ柔軟な協力を大幅に強化する画期的な意味を持つ。


 軍備増強や海洋進出を続ける中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への抑止力も強まる。


 有事に至らないグレーゾーン事態でも「アセット(装備品)防護」による米艦防護を可能にする。


 米軍も自衛隊への支援を強化する。南西諸島を念頭に置いた島嶼とうしょ防衛の協力は象徴的だ。作戦は自衛隊が主体的に実施し、米軍は支援・補完する立場だが、米軍の関与が明確になることで、他国に対する牽制けんせい効果は大きい。

 双方向の協力の拡大で、日米の信頼関係は一層深まるだろう。


 新指針は、自衛隊と米軍の部隊運用に関する日米共同調整所などの「同盟調整メカニズム」を平時から設置する、と明記した。


 1997年策定の現指針は、危機発生後に設置するとしていた。より早い段階から日米が情報を共有し、共同対処することの重要性は、東日本大震災での米軍の「トモダチ作戦」で再認識された。


 日米が効率的に役割分担し、危機の芽を迅速に摘める仕組みとすることが大切である。


 現指針は、朝鮮半島有事を想定した周辺事態での日米協力に力点を置いた。新たな指針は、世界規模の日米同盟を目指し、協力の対象や地理的範囲を拡大する。


 周辺事態を「重要影響事態」に改めるのに伴い、米軍に対する自衛隊の後方支援の地理的な制約を外し、日本周辺以外でも支援できるようにすることは意義深い。


 新指針は、あくまで日米協力の大枠を定めるものだ。自衛隊と米軍の部隊を効果的に動かすには、様々な有事のシナリオを想定した共同計画の策定が欠かせない。


 その計画に基づき、共同訓練を実施する。問題点を検証し、計画の内容を見直す。このプロセスを着実に繰り返すことこそが、日米同盟の実効性を高めよう。



「毎日新聞」



これは自衛隊が米軍に世界規模で協力するという約束である。日米両政府は、自衛隊と米軍の役割分担を定めた新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)をまとめた。

自衛隊の海外での活動は飛躍的に拡大し、日米安保体制は極東の範囲を超えて世界に広がる。国会を素通りして日米安保条約の改定に等しい大転換が行われることは同意できない。

 ◇食い違う双方の思惑

 再改定を提案したのは日本側だ。


 オバマ政権は、アジア重視の「リバランス」(再均衡)政策を掲げるが、米国の力は相対的に低下している。中国は東シナ海や南シナ海で海洋進出を活発化させている。


 日本側は「このままでは日本を守れない」「いざとなったら米国に守ってもらえないかもしれない」と考えた。そのため集団的自衛権の行使容認など安保法制の整備によって自衛隊の活動を拡大し、米国をアジアに引き付けようとしている。


 この提案は、米国には渡りに船だった。米国は財政難で国防予算を削減している。日本、豪州、韓国など同盟国との協力強化や、同盟国同士の多国間協力により、米国の負担を肩代わりさせたいと考えたからだ。


 同盟強化では一致しているものの、双方の思惑は微妙に食い違う。


 今回、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)がガイドラインにあわせてまとめた共同文書には、沖縄県・尖閣諸島は日本防衛義務を定めた日米安保条約5条の適用範囲と明記された。ガイドラインには尖閣諸島を念頭に「島しょ防衛」が盛り込まれた。


 それでも現実に尖閣周辺で日中に不測の事態が生じた場合、米国が日中間の争いに介入するかは、その時にならなければわからない。日本が米国を引き込むために自衛隊の活動をいくら拡大しても、米国が日本の期待通りに動く保証はない。


 一方、米国は自衛隊が将来、南シナ海で米軍と共同で警戒監視を行うことに期待感を示す。だが、自衛隊が南シナ海にまで活動を拡大することが日本の力に見合ったものなのか、地域の安定や日本の国益につながるのか、国民の理解はあるのか、政府は冷静に判断すべきだ。


 新たな安保法制の法案は5月中旬に閣議決定され国会に提出される予定だが、ガイドラインはすでに新法制の内容を反映している。



「産経新聞」



日米新防衛指針 平和守る同盟の再構築だ

「対中国」で切れ目ない対応を

 厳しさを増す安全保障環境に備え、日米同盟を格段に強化し、日本の平和と繁栄を確かなものにするための有効な手立てだ。

 ニューヨークでの日米外務・防衛担当閣僚の安全保障協議委員会(2プラス2)で、18年ぶりに改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の意味合いである。

 新指針は、政府与党が今国会で成立を目指す安全保障関連法案とともに、集団的自衛権の限定行使容認など政府の新たな方針を、自衛隊の現実の運用に適用する土台となるものだ。

 《抑止力の実効性高めよ》

 政府は関連法案の早期成立に加え、新指針に基づく日米間の調整を急ぎ、実効性のある抑止力の強化を実現してもらいたい。

 新指針の最大の特徴は、日米による「切れ目のない」協力にあるといえよう。

 平時の警戒・監視活動に始まり、離島占拠など「有事」には至らないグレーゾーン事態、国際紛争に対処する米国など他国軍への後方支援、集団的自衛権の行使を含む有事まで、緊張の度合いに応じて協力する態勢を整える。


1997年に策定された指針は、日本有事における協力に加え、主に朝鮮半島有事を念頭に、周辺事態での米軍への後方支援に重点を置いていた。

 だが、周辺事態では米軍が危機に陥っても、自衛隊が武力を行使して助けることを認めていなかった。後方支援の活動範囲も日本の領域と「非戦闘地域」に限られ、十分とはいえなかった。

 北朝鮮の核・弾道ミサイルの脅威には今も警戒すべきだが、深刻さの度合いを増しているのは中国の軍事的台頭である。

 世界第2位の経済大国になった中国は対外的に強気の姿勢をとるようになった。軍拡に走り、尖閣諸島(沖縄県)を隙あらば奪おうとしている。南シナ海では東南アジア各国と支配を争う岩礁を勝手に埋め立て、飛行場など軍事施設を建設中だ。

 力による現状変更をはかる中国の傍若無人な海洋進出を押さえ込まなければならない。その際、いきなり武力行使には至らないものでも、相手の多様な出方に対応できなければ、日本の主権、領土を守ることは困難となる。切れ目のない日米の安保協力が重要だ。


宇宙・サイバーなど、新しい戦略分野での協力も急がなければなるまい。

 もう一つの特徴は、日本が新指針と安保法制を通じて自衛隊の役割を広げ、米国と手を携えながら、国際社会での平和構築に力を尽くそうとしていることだ。

 オバマ大統領は中東政策をめぐって、米国がもはや「世界の警察官」ではないと表明した。米国防費削減の流れの背景にも、米国民の内向き志向がみてとれる。

 《自衛隊の新たな役割も》

 オバマ政権の国際秩序維持の決意が揺らいでいるようにもみえるが、それでも米軍は依然として最強であり、世界の自由と秩序を根底から支える存在だ。

 アジア太平洋重視という、米国のリバランス政策をより確実なものにするため、日本は平和への役割分担を強め、米国をアジア太平洋地域の安全保障につなぎとめる必要性が出てきた。米軍側からは、南シナ海での自衛隊の監視活動を期待する声もある。これにどう応えるかも課題となろう。

 米国の強いコミットメント(関与)を地域で保つことは、日本単独で守りを固めるよりも合理的な選択肢といえるだろう。

 こうした方針は一部で批判のある「戦争協力への道」とはまったく異なる。平和への役割分担のために、どのような方策をとるかの政策判断である。

 自衛隊と米軍の関係にとどまらない。オーストラリアなど自由と民主主義の価値観を共有する友好的な第三国とも、協力を推進していくことが有効だ。

 新指針は新しい安保協力の出発点にすぎない。車の両輪となる安保法制の整備を今国会で確実に実現し、同盟の再構築につなげなければならない。

 日米の調整機関の常設や共同作戦計画、訓練の進展も重要な課題だ。同時に、海外派遣など役割の拡充に応じ、自衛隊の編成、装備、人員の充実が不可欠だ。

 この大きな政策転換について、安倍晋三首相が国民への説明に尽力すべきはもちろんである。



「東京新聞」


防衛指針と安保法制 「専守」骨抜きの危うさ

 日米防衛協力指針の再改定と安全保障法制の整備により、自衛隊が海外で武力の行使をする恐れが高まる。戦後日本の「専守防衛」政策は根本から覆る。


 ニューヨークでの日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)。主要議題は自衛隊と米軍の役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定である。


 指針は一九七八年、日本への武力攻撃に備えて初めて策定され、九七年には朝鮮半島など日本周辺での緊急事態「周辺事態」を想定した内容に改められた。今回の再改定は十八年ぶりの見直しだ。


◆地球規模に活動拡大


 指針は国会での承認が必要な条約とは違い、立法、予算上の措置を義務付けてはいない。しかし、それは建前にすぎない。過去の例では、九七年指針に基づく周辺事態法など、指針に沿って新しい法律がつくられているのが実態だ。


 米国との約束に基づき、日本政府が法整備を進める構図である。


 今回は、指針再改定の日米協議と並行して、安保関連法案づくりが進められた。与党協議もきのう実質合意に達した。五月十四日にも関連法案を閣議決定し、国会提出するという。指針再改定と安保法制整備は、安倍晋三首相の就任に伴って始まった、日本の防衛政策を根本から見直すための「車の両輪」だ。


 背景には中国の軍事的台頭とともに、安倍首相が掲げる「積極的平和主義」の下、自衛隊の軍事的役割を大幅に拡大し、活動地域も地球規模に広げる狙いがある。


 再改定された新指針には、日米両国の活動・行動がおのおのの憲法、法令などに従って行われることに加え、「日本の行動及び活動は、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる」ことも明記されている。


◆海外で武力行使に道


 専守防衛とは、政府答弁によると「もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行う」「相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使」することだ。


 海外での武力の行使を放棄した平和憲法に則した抑制的な安全保障政策でもあり、日本国民だけで三百十万人の犠牲を出した先の大戦の深い反省に立脚している。


 しかし、新指針には専守防衛を逸脱する内容が含まれている。


 例えば、新たに項目を立てて明記された「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」である。


 米国や第三国が武力攻撃された場合、日本が直接攻撃されていなくても、日本の存立が脅かされ、国民の生命や権利などが根底から覆される明白な危険がある場合、自衛隊と米軍が共同対処することを定めている。日本にとって「集団的自衛権の行使」である。


 協力して行う作戦例に挙げられているのは、自衛隊による米軍武器の防護や機雷掃海、敵を支援する船舶の阻止、後方支援などだ。


 首相は「受動的、限定的」な活動と説明してきたが、そのような作戦に踏み込めば、自衛隊も攻撃対象となり、応戦を余儀なくされる可能性は排除できない。敵側を殺傷したり、自衛隊側に犠牲者が出ることも覚悟せねばなるまい。


 政府・与党はそうした危険性をどこまで認識しているのか。憲法九条の下で許され、専守防衛にも合致する活動と言い張るのか。


 新指針にも明記された他国軍への後方支援にも懸念がある。「重要影響事態法案」と「国際平和支援法案」だ。


 周辺事態法を改正する重要影響事態法案は現行法から地理的制限を撤廃し、米軍以外も支援対象とする。武器・弾薬補給も可能だ。


 政府が日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」と認定すれば、自衛隊の活動範囲は地球規模に拡大する。平和憲法からも、極東を対象とした日米安全保障条約からも逸脱する。


 国際平和支援法案は、これまで特別措置法で対応していた「国際社会の平和と安全」の確保のために活動する他国軍への後方支援を随時可能にする一般法だ。


 国連決議などを必要とし、例外なき国会の事前承認が前提だ。戦闘現場では実施しないとの制限も付くが、戦闘現場は戦況によって刻々と変わる。専守防衛にそぐわない、犠牲覚悟の危険な任務だ。


◆戦後否定、認められぬ

 
 保関連法案の内容は膨大、複雑、多岐にわたる。にもかかわらず、政府は新法は別として、現行法の改正案十本を一つの法案にして一括提出するという。高村正彦自民党副総裁は八月上旬までに、という成立期限まで明言した。あまりにも乱暴な進め方だ。

 
 海外で武力の行使をしないという、戦後日本の生き方を否定する安保政策の変更であり、慎重な検討が必要だ。安易に認めるわけにはいかない。重大な局面を迎えていることを自覚したい。


「北海道新聞」


日米ガイドライン改定 
専守防衛の放棄に等しい


自衛隊と米軍の一体化を、質的にも地理的にも一気に拡大する極めて重大な政策転換である。

 日米両政府は、ニューヨークでの外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、防衛協力指針(ガイドライン)改定に合意した。1997年以来、18年ぶりの改定だ。


 旧指針は、日本が攻撃を受けたときにだけ自衛隊が武力を行使し、米軍への後方支援も日本周辺に限定していた。


 新指針では日本が直接、攻撃を受けていなくても集団的自衛権を行使し、米軍と共同作戦を行う。


 後方支援は地理的制約を取り払い、地球規模で実施する。


 憲法の平和主義に基づく専守防衛を放棄するに等しい。日本の安全と極東の平和の維持を目的とする日米安全保障条約の枠組みをも逸脱している。


 これだけ重大な変更を、安倍晋三政権は国会審議も国民への説明もしないまま米国と約束してしまった。暴挙と言わざるを得ない。


■地球規模で米軍支援


 旧指針の協力の枠組みは《1》日本が攻撃される「有事」《2》朝鮮半島有事などの「周辺事態」《3》平時―の3分野だった。


 新指針は、これに「存立危機事態」を新たに加えた。


 日本が攻撃されていなくても、時の政権が「日本国民の生命・権利を根底から覆す明白な危険がある」と判断すれば、集団的自衛権に基づき武力行使する。


 具体的には機雷掃海や米国を標的とした弾道ミサイルの迎撃、米艦の防護、不審船の積み荷の強制的な検査(臨検)などを行う。


 中東ホルムズ海峡での機雷掃海には公明党が否定的だ。与党間でさえ見解が割れる活動を指針に盛り込んだ。乱暴すぎる。


 周辺事態は「重要影響事態」と改め、米軍への後方支援を地球規模に広げた。弾薬の提供や発進準備中の航空機への給油といった軍事色の強い任務も解禁する。


 さらに日本の安全とは無関係の「グローバルな協力」も新設し、国際的な人道支援や多国籍軍への後方支援などを盛り込んだ。


 日本の防衛を主眼とした従来の枠組みを、世界各地で活動する米軍への「軍事協力」へと変える内容である。


 米国の戦争に日本が巻き込まれたり、日本がテロの標的にされたりする恐れが格段に高まるのは明白だ。


■日中対立高まる恐れ


 日米の防衛協力拡大には、それぞれの事情がある。


 安倍政権にとって最大の狙いは、尖閣諸島で領海侵入を繰
り返すなど、海洋進出を活発化させる中国への抑止力を高めることだ。


 有事での協力項目には、日本側の強い求めで「島しょ」防衛が加えられた。


 一方、オバマ米政権は厳しい財政事情を背景にした世界規模の米軍再編の一環として、米軍任務の一部を自衛隊に肩代わりさせる狙いがある。


 ただ米国は、経済を中心に相互依存関係を深める中国を過度に刺激したくないのが本音だ。米国が日本側の思惑通り、中国と本気で対峙(たいじ)するかどうかは分からない。


 米国は、中国とフィリピンなどが領有権を争う南シナ海での自衛隊の活動拡大にも期待を示し、平時の協力には警戒監視や海洋秩序の維持も盛り込まれた。


 南シナ海などで自衛隊が活動するようになれば、日中の緊張が高まるのは必至だ。


 新指針によって中国の動きに本当に歯止めがかかるのか。米国に頼る以外、日本が中国と向き合う道はないのか。そうした本質的な議論は置き去りのままだ。


■抜け道多い与党合意


 自民、公明両与党は指針改定に合わせ、新たな安保法制に実質合意した。だが関連法案が国会に提出されるのは来月中旬である。


 米国と協力内容を決めてしまってから、必要な安保法制を国会審議するのでは順序が逆だ。安倍政権の国会軽視の姿勢は許し難い。


 与党合意の内容も問題が多い。


 集団的自衛権の行使要件は曖昧なままで、時の政権の判断次第で拡大解釈が可能だ。


 他国軍を後方支援するための恒久法「国際平和支援法」では、例外ない国会の事前承認を義務付けたが、活動の中身が後方支援で重なる「重要影響事態法」では緊急時の事後承認を認めている。


 国際平和支援法で事前承認が得られない場合、重要影響事態法を適用する抜け道がある。


 そもそも新指針や新安保法制の出発点は昨年7月の閣議決定だ。集団的自衛権の行使は認められないとしてきた従来の憲法解釈をねじ曲げ、行使を容認した。


 関連法案の国会審議では、その是非や、国際社会での日本のあるべき姿など、根本的な問題から一つ一つ、徹底的に議論すべきだ。




「琉球新報」


日米防衛指針改定 
戦争加担は国昰の変更だ

国民的な議論、国会の監視、法手続きを置き去りにしたまま、世界中で行う米国の戦争を自衛隊が支援する。その枠組みが確定する。

 日米両政府は27日、防衛協力の指針(ガイドライン)を改定する。それは平和憲法の下で固持してきた「専守防衛」を完全に踏み越えることを意味する。国是の変更に等しい改定を許してはならない。

 米国への支援の名目で、日本が主体的に戦争を支える国となるのだ。改定された防衛協力指針でその具体像がくっきり立ち現れる。戦後の安全保障政策の重大な転換点となる。

 日米安保条約は日本と、極東の平和と安全を維持するために、米軍の日本駐留を認めるものだ。ガイドラインは安保条約に付随するが、日米の協力関係の根幹を改めて適用対象を地球規模に広げるのは、安保条約からの逸脱だ。

 本来なら条約を改正して対応すべきだが、日米政府の「目標」に位置付けられる指針は国会での批准が必要ない。条約改正に等しい日米軍事協力の強化が、国会での手続きもなく進められた。

 他国軍への後方支援は「後方地域」や「非戦闘地域」に限られていたが、安倍政権は昨年、「現に戦闘行為を行っている現場」以外では可能と判断を変えた。

 現行の指針は平時、周辺事態、日本が武力攻撃を受ける事態(日本有事)に3分類されている。それを(1)グレーゾーン事態を含む平時(2)重要影響事態(3)存立危機事態(4)武力攻撃事態-に衣替えし、平時から有事まで「切れ目のない」協力体制構築を図るとしている。

 重要影響事態では地理的制約を撤廃し、弾薬提供や戦闘機への給油を可能にするなど、戦地で活動する米軍の後方支援が大幅に拡充する。集団的自衛権行使を伴う存立危機事態では、米国に向かうミサイルを日本が撃ち落とす弾道ミサイル防衛も想定されている。

 米国が武力行使する際は日本側と事前調整し、協議機関の常設化も打ち出す。その仕組みも米国の戦争に巻き込まれる歯止めとなる機能はない。

 自衛隊の活動範囲が広がれば、戦闘に巻き込まれる危険性が増すのは間違いない。米国と戦火を交える国の側から日本は危険な敵国と見なされるのは避けられない。

 米軍基地を多く抱える沖縄は攻撃対象になる可能性が格段に高まる。防衛協力指針改定の悪影響も過重に押し寄せることになる。


「しんぶん赤旗」


日米ガイドライン

大義なき世界規模の戦争協力

 日米の外交・軍事担当閣僚による会合(2プラス2)で、米軍と自衛隊の役割・任務分担を定めた「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」が18年ぶりに改定されました。自民・公明の与党は、今回改定された新ガイドラインの実効性を裏付ける「戦争立法」の法案化作業で最終合意へ突き進んでいます。ガイドラインと「戦争立法」には、戦後日本の安全保障政策を根本的に転換し、日本を「海外で戦争する国」にする安倍晋三政権の野望が込められています。

集団的自衛権も規定


 改定された新ガイドラインの大問題は、アジア太平洋地域にとどまらず、世界規模で自衛隊による米軍支援を取り決めたことです。


 日本への武力攻撃を想定して1978年に初めて策定されたガイドラインは97年に一度改定されています。「日本防衛」という建前を捨て、米国がアジア太平洋地域で戦争に乗り出せば「日本周辺事態」の口実で自衛隊が米軍を支援することを取り決めました。新ガイドラインは、この米軍支援を「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域」に拡大するものです。


 97年のガイドラインは、99年に「周辺事態法」として具体化されました。その後、米国のアフガニスタン報復戦争(2001年)に際してテロ特措法、イラク侵略戦争(03年)を受けてイラク特措法が作られ、実態的に自衛隊の米軍支援は世界規模に拡大しました。


 新ガイドラインは、こうした世界規模での米軍支援を新たに盛り込み、いつでも実施可能にしようとするものです。実際、「戦争立法」では、米国が世界のどこでも戦争に乗り出せば自衛隊をいつでも派兵し、米軍支援をできる新たな海外派兵恒久法(国際平和支援法)を作ろうとしています。


 新ガイドラインが米軍支援の対象である「日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態」を「地理的に定めることはできない」としたのに対応し、「戦争立法」で「周辺事態法」を「重要影響事態法」に改定し、「日本周辺」という限定も取り払おうとしています。「国際平和支援法」「重要影響事態法」とも、従来は禁止されてきた「戦闘地域」への派兵や弾薬提供などを可能にします。危険極まりない米軍支援の際限のない拡大です。


 新ガイドラインが「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」の一つとして日本の集団的自衛権の行使を初めて盛り込んだことも重大です。


 自衛隊は「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)に際し、「武力の行使を伴う適切な作戦を実施」すると明記しました。「戦争立法」では「事態対処法」などで具体化します。先制攻撃の戦争を仕掛けた米国が反撃を受けた場合でも、政府が「存立危機事態」と判断すれば、米軍支援のために日本が参戦し、武力行使できる仕掛けづくりです。


歴史の大きな岐路で


 憲法9条破壊の新ガイドライン・「戦争立法」は国民世論に逆らう大義なき暴走です。戦争か平和かの歴史の岐路の中で、「戦争する国」づくりを許さない国民共同のたたかいを一層強め、空前の規模に広げていくことが必要です。


下の写真は我が家の庭で咲き誇り始めた、藤とクレマチス、そしてブルーベリーで、今その周りを沢山の蜂たちが蜜を求めて飛び回っている。
クマンバチ、足長バチ、ミツバチなどだが僕がそこに顔を出しても、知らん顔で蜜をついばんでいる。
こちらが攻撃しない限り、彼らは我関せずで仕事に精を出す。
力と力との対決ではこうはいくまい。
それぞれの消耗を避けるための自然界の知恵は無駄な対決はしないと言うことだと蜂たちから教えられる。
安倍晋三の対決一辺倒、アメリカ一辺倒のオツムも少しは蜂の知恵から学んだらどうかと思う春の一日。


やはりこの国は自衛隊員の戦死者が出ないと、変わらないのかも知れない。いやいやその時は独裁政権が言論の自由を押さえ込んで、反対の声を出せない状況だったりして。


しかし許せないのは、「人身売買の犠牲となって、筆舌に尽くしがたい思いをされた方々のことを思うと、今でも私は胸が痛む。この思いは歴代の首相の思いと変わりはありません」と平然とハーバード大学で学生の質問に答えたことだ。
そうならば、従軍慰安婦にさせられた韓国人女性達の謝罪要求に日本政府として誠意を持って対応すれば良いではないか。この男の口先だけぶりに吐き気がする。