全国登山者自然保護集会:
登山者らリニア工事懸念--島田 /静岡
毎日新聞 2014年10月13日 地方版
山岳団体の日本勤労者山岳連盟(労山)が主催する全国登山者自然保護集会が11日、島田市川根町笹間渡の市山村都市交流センターささまで開かれた。全国から登山者ら約90人が集まり、静岡市北部の南アルプス地下を通るリニア中央新幹線工事への懸念を訴えた。
県労山の竹本幸造理事長は、会場となった大井川支流域の笹間渡出身。工事で大井川の流量は毎秒2トン減少する可能性をJR東海が示しているが、「水不足で取水制限をした年もあり、生活にも影響する」と指摘。「少しの移動時間短縮のために貴重な自然が侵されていいのか。自然を愛する岳人はノーを言わなくてはいけない」と話した。
また静岡大理学部の和田秀樹名誉教授が「南アルプスは年間3~4ミリの隆起があり世界で最も変動が激しく、何が起きるかわからない」などと講演した。岩手県労山の菅沼賢治常任理事(65)は「工事で水が変われば、川や下流の海も変わる可能性がある」と述べた。【平塚雄太】
山屋の立場としては自然保護が最重要なテーマとなる。
静岡県側に排出される360万立米という膨大な土砂は最終処分地も決まらないまま、自然豊かな大井川源流部の谷間を埋め尽くす。
只ですら、崩壊が続く南アルプス最奥部に、そんな膨大な土砂を新たに滞積させて、土石流でも起こったらどうするのか。
JR東海の試算でも毎秒2トンの水量減が想定されているが、和田名誉教授は「断層が無数に走り、毎年4ミリも隆起を続けている巨大山域の地下がどうなっているのかまったくわからない。巨大なトンネルを掘ってしまった後に何が起こるのか、今の科学で正確に予測することは困難」と述べた。
また多様な動植物、希少生物が生息する豊かな生態系への悪影響も明らかだろう。
水量の減少は下流部で、大井川の水を水道源として使っている多くの市町の住民生活を直撃する。
現に山梨のリニア実験線の周辺では沢涸れが相次いで起こっているし、我が家の近く、丹那盆地の下を走る東海道本線丹那トンネル工事に伴い、水豊かな丹那盆地とその下流部である田方地方の水田が水不足に襲われ、農民一揆が起こったのは吉村昭「闇を裂く道」に詳しい。
丹那トンネルの工事は、1918年(大正7年)に予算770万円(当時)で着手され7年後の1925年(大正14年)に完成する予定だったが、約16年後の1934年(昭和9年)に総工費2,600万円(当時)で完成した。この工事期間の長さと膨れ上がった工費、事故による犠牲者67名(うち熱海口31名、函南口36名)が難工事を象徴している。(ウィキペディア)より
トンネルで穴を開ければ地下水脈を断裂させ、そこから地下水が流れ出すのは明らかだ。
丹那盆地は豊かな水を奪われ、農作から酪農へと大きく舵を切らざるを得なかった。
余談だが、今その酪農を生かして地元の函南東部農協がおそらく僕が飲んだもの中で一番美味しい丹那牛乳を作っているので、飲んでいただければ幸いだ。
こうした自然破壊と同時に刮目しなければならないのが、新幹線の3倍以上必要とされる電力問題。
最終的には原発一基分程度の電力が必要とされる。
リニア計画を強引に推し進めるJR東海の「葛西天皇」が原発再稼働を推し進めようとしている背景もそんなところにあるのではないか。
そして超伝導システムによる電磁波の問題。
JR東海はリニア客室の電磁波の数値を一切明らかにしてないと言う。
人体への悪影響が高いという電磁波問題も情報公開が必要だ。
建設費も当初予測の3兆円を大幅に上回り、大阪開通までには9兆円を越えると言うが、今でも借金3兆円余を抱えるJR東海に、耐えられることが出来るとは思えない。
現にJR東海の山田社長は記者会見で「リニアプロジェクトは絶対にペイしない。それでも東海道新幹線の収入で建設費を賄っていけば何とかやっていける」と述べている。
こんな馬鹿な計画を何故ごり押ししようとしているのか、自らの首を絞めるに等しい。
結局は国家プロジェクトという名目で税金投入を当てにしているとしか思えない。安倍晋三と最も多くゴルフをやる一人と言われる葛西が根回しをしている可能性もあるのではないか。
そしてアメリカの軍需産業からも引き合いがあると言われるリニア技術。航空母艦から戦闘機を発進させるとき、リニア技術が役に立つと聞く。
さらに、そもそも「狭い日本そんな急いで何処へ行く」という基本的疑問も決してなくならない。
上海で市街地郊外から空港までリニアに乗った。
確か450キロくらいのスピードだったと思うが、並行して走る高速道路の車がビュンビュン後ろに飛んでいく。
しかしそれだけで、結局は遊園地のジェットコースターと同じようだった。バスで空港に行ってもまったく問題がなかった。
同行してくれた上海市総工会国際部のメンバーは「中国人は世界初が好きですから」と言っていたが、それだけのものだ。
このリニア線は上海中心部の人口密集地までの延伸計画について、電磁波問題を心配する住民の反対で断念したので、始発駅は上海郊外、市中心部からはバスで移動して乗車する極めて中途半端な存在となっている。
あの中国でも、電磁波被害を心配する反対運動で計画が頓挫したのだ。
品川名古屋間を40分間で結べるから、6000万人首都圏で一日3回出張出来るなんてことがいけしゃあしゃあと言われているが、そんな働き方を日本人はしなければいけないのか。
たかが1時間短縮のために、日本人の生き方、日本の大自然を破壊し、人間の安全を奪うようなスピードを手に入れなければならないとは到底考えられない。
報道陣に公開された後の報道が酷かった。
「速いです!速いです!」式の興奮気味のレポーターの叫びが画面から溢れるだけで、何の問題点の指摘もない。
日本のマスコミ関係者の問題意識の劣化を如実に示すような報道だった。
そうした報道姿勢も有り、まだまだほとんどの国民がリニアの問題点を知らないままだ。
国民的な論議の盛り上がりを作り出さなければいけないだろうと思う。
どうやら台風は伊豆半島から去って行ったようで、静かになった。大きな被害になっていなければ良いが。