東日本大震災後、宮城県内で心不全や脳卒中などの病気が著しく増加したことが、東北大大学院医学系研究科の下川宏明教授(循環器内科学)らの調査で分かった。
特に心不全が急増した。年代、性別、居住地による差はなく、研究グループは「県民は震災により等しく大きなストレスを受けた」と分析している。大災害と心血管疾患の関係について、長期にわたる広範囲の研究は過去に例がないという。
研究グループは、震災4週間前の2011年2月11日から6月30日まで、県内12の消防局・本部の救急搬送記録3万6729件を調査した。
搬送時に心不全、急性冠症候群(不安定狭心症と心筋梗塞)、脳卒中(脳梗塞と脳出血)、心肺停止、肺炎と診断された患者数を、過去3年間の記録と比較した。
週単位の発生数では、本震直後と翌週は全ての疾患が増えた。特に心不全は本震後2週目に66件に達し、過去3年間の平均の2.5倍を記録した。その後も30件前後の高い頻度で推移した。
心不全は、心臓の収縮力が低下して全身に血液を送れなくなる疾患。本震直後に増えた理由として薬不足、寒さ、塩分の多い保存食、停電や断水、避難生活のストレスが考えられるという。
急性冠症候群は、2週目に過去3年間の平均の2.1倍に当たる25件に急増した。その後は減ったが、震災で心筋梗塞予備軍の患者の症状が通常よりも早く進行したとみられる。
脳卒中は、本震直後と宮城県内で最大震度6強を観測した4月7日の余震後に増え、100件を超えた。心肺停止も同様の傾向が表れ、揺れのストレスが影響したと推測できるという。地域差が出たのは肺炎患者で沿岸部で増えた。大津波に襲われた際に海水やヘドロを飲んだ影響とみられる。ほかの疾患は年齢層や性別、居住地に差はなかった。
下川教授は「今後の大災害でも同様の事態が起こり得る。薬の情報共有や保存食の減塩化、切れ目のない医療支援体制の構築など対策が必要だ」と話している。研究は、28日付のヨーロッパ心臓病学会誌に掲載された。
「河北新報」より転載
放射能汚染との関係はどうなのか、やはり心配だ。