昔、釜山によく旅行した | パドックに魅せられて

パドックに魅せられて

競馬歴45年。
馬ほど美しい動物はいません。

私にとっての最初の海外は香港で、二番目は 釜山だった。私は関西人で、旅行するのもマイナー指向、韓国に行くならソウルより釜山と考えた。チャガルチ市場に興味があった。それで地下鉄で南浦洞(ナンポドン)まで行った。私の旅行は無駄に歩き回るスタイル。チャガルチ市場で刺身を食べてブラブラ歩いた。この街は坂道が多く、上まで歩くと公園があった。ヨンドンポ公園と言ったかなあ。イスンシンという歴史上の将軍の銅像が建っていた。

下に降りるとアリラン民芸社という陶芸品店があった。ここの 主人姉妹は日本生まれで、中学生ぐらいまで九州で育ったらしい。日本語が通じた。

私は花瓶の陶磁器を買ったが、妹さんの方の主人が「そうね~、あなたなら25000円ね」と言われて、言い値で買った。後に、金に困って大阪の買い取り店に持って行くと、1400円しかならなかった。騙されていたのだ。

釜山には何回も行った。その度にアリラン民芸社に寄った。するとあるとき、「あなた見合いをしなさい」と言われた。私にはそんな気は全くなかった。私にとっての結婚とは、恋愛の延長 以外、見合い結婚など考えても見なかった。ところが、アリラン民芸社の姉妹はドンドン話を進めてしまって、ついに本当に見合いすることになった。私はそんな気がないので。海雲台(ヘウンデ)に行って、ナマコで焼酎を飲んで帰ってきた。当然臭い。アジュンマに「お酒飲んできたの!?」と呆れられた。

しばらくして30代ぐらいの女性が母親と一緒に店に入って来た。え?!本当に見合いするの?!私には納得していない不本意な展開だった。女性は パーマヘヤーの意外にも感じのいい人だった。ええ?!私は恥ずかしながらその気になってしまった。日本語が上手い方のアジュンマが通訳になってくれて、私とその女性は近くの喫茶店で見合いをした。その見合いで、女性は私に質問をした。「日本人でノーベル文学賞をもらった人が二人がいますけど、誰か知っていますか」 

私は答えた。「川端康成ですね。もう一人?ああ、 大江健三郎です」と私は試験を 受けているみたいだった。

日本に帰って私は彼女に英語で手紙を書いた。付き合ってほしいという手紙だった。 なかなか返事がなかった。一ヶ月経った頃、中に入って通訳をしてくれたアジュンマから電話があった。私にではなく、私の母親が出た。彼女は断ってきたとのことだった。理由は日本に行かなければならないから、だった。

あとから思うと、アリラン民芸社は結婚斡旋所もやっていたのじゃないだろうか。無理やり見合いさせられたけど、結婚することになったら、お金を払わなければならなかったはず。

人伝に聞いたところでは、アリラン民芸社は もう店を閉めたらしい。

もう釜山に行くこともないかもしれない。