もう自分が監督でない、原作者でもない、他人の作品をやらなくなって何年になるだろうか?

依頼はちょくちょく来るのだが、全部断っている。

最近では周辺の人間は「山本さんは絶対やらないですよね」と、振ってこなくなった。

 

別にそこで変なプライドを誇示しようとかいう訳ではない。

もう懲りたのだ。

 

 

昔は生活のために絵コンテ仕事も演出仕事もどんどん入れていた。

しかし中に「なんじゃこりゃ?」と、どうも解せない仕事も含まれるようになった。

京アニ時代はどんな仕事だって打ち返すことができたのに、おかしいなぁ。

思えばこの辺からアニメ業界の変調が始まっていたのかも知れない。

 

そして決定打となった作品がある。

僕は監督直々のご指名をいただいて、ある作品の絵コンテを担当した。

 

原作を読んでびっくりした。

素晴らしいのだ。

涙すら流す、感動のエピソードだらけ。

 

僕はスタッフに「こんな作品に関われて光栄です!」と宣言し、鼻息も荒く引き受けた。

 

しかし、もらった脚本に違和感が生じた。

どう考えても、自分が担当するには話が進みすぎているのだ。

 

あれ?どうなってるの?

あの綺羅星のようなエピソードの数々は、え?ひょっとして端折られたの?

 

後にスタッフから聞いたが、僕の担当話数にはファンに大人気の新キャラが登場する。

つまりその登場を少しでも早め、ファン人気を掴もうという原作サイドの要求だったのだという。

 

僕はこの時点で茫然となった。

そんなことで、自ら作品に傷をつけるのか??

あの感動はどこへ??

 

それでも一旦好きになった作品だ、粛々とコンテ作業を進めた。

しかしまぁ筆は進まなかった。

 

そしてとどめとなる一件が起こった。

脚本にある描写が書かれていたのだが、どうも整合性が合わないのだ。

 

原作を読み直したが、やはりこの描写はない。

だったらこれはおかしい。蛇足だろう。

しかし、それが恐らく今後への伏線になっていることも容易に想像がついた。

 

僕はその描写を敢えて削って提出した。

やはりおかしいものはおかしい。

それくらい解れ、と。

 

後日、とあるイベントでそのプロデューサーに会った。

「山本さん、あの描写削りましたね?」

「削りましたよ」

「マジっすか!?」

「え?ダメだったの?だって原作にも描いてないし……」

プロデューサーはバツの悪そうな顔で、それでも何となく取り繕って、去っていった。

 

僕はその時決めた。

ああ、もう他人の作品に関わるのはやめよう。

 

僕がどれだけ良心のもとに判断しても、監督他向こうのスタッフに迷惑がかかる。

そして僕の良心も傷つく。

誰もいい思いしない。

 

 

その後、ある別の作品でも、SNSを理由に原作者が僕のことを煙たがっていることを知った。

そんなにSNSの評判が大事かよ……。

最終的に、その作品は辞退した。

 

 

もう他人の作品をやるのはやめよう。

他人が監督の作品も。

他人が原作者の作品も。

どうやら迷惑をかけるらしいから。

 

 

かくも僕はアニメに嫌われているらしい。