たまたまフランスの小説を読んでいたら

 (勿論、フランス語ではなく

 日本語翻訳版だけど) 

 こんな言葉が出てきたのだ

 <甘美な死>。

 

 一瞬何のことだか分からなかったが

 読んでいて納得した。

 簡単に説明するとこんな事だ。

 

 喜んだ時思わず「アーッ」と歓声をあげたり

 驚いた時「キャーッ」と悲鳴をあげる。

 少し間多くと「よかった」とか「驚いた」とか

 短い言葉が戻って来るのだが。

 でもまず最初は、

 無意識に反射的に声を出してしまう。

 

 このような思わず出てしまう

 動物の叫びに近い声こそが

 性的興奮が盛り上がり

 俗に言うオーガズムに達する時に出る

 エクスタシーの声と同じだというのだ。

 

 性感帯の広い女性は大声を出しながら

 全身で情動の世界へ入っていく。

 すると周囲に対する感覚は急激に減退し、

 人によっては痙攣を起こしたり

 無意識状態になる。

 これをフランスでは<甘美な死>

 と言うわけだ。

 

 ボクの同年代の友人男性が

 40代の頃知り合った女性が

 まさしくベット上で

 この<甘美な死>を遂げる女性だった。

 

 彼女の場合、痙攣は起こさないが

 全身の筋肉や神経は間違いなく硬直し

 酸素が不足した状態の金魚のように

 呼吸は荒く激しくなり

 その結果言葉にならない声が

 無意識に発せられ、それが徐々に大きくなり

 部屋中に響き渡る。

 その声の凄さは周囲を驚かすような

 大きな声だったりするのだが

 さらにその声が苦痛に喘ぐような

 感じに変化し、そして失神するという

 流れだったらしい。

 そんな時ラブホのフロントから

 「大丈夫ですか?」なんて確認の連絡が

 入ることもあったという。

 

 彼はかなりの遊び人だったけど

 流石にその女性とは、数回の交わりで

 懲りたらしく、別れは早かった。

 その後は酒の肴の話として彼の友人たちに

 結構語り継がれることになったわけだが。

 

 しかし大声出して失神するほど

 夢中になって没頭できるって幸せだと思うけど

 ここはアフリカのジャングルじゃないからね

 日本の住宅事情ではさすがに生きていきにくい。

 

 さらに友人医師は

 「性衝動が強いほどエクスタシーも深いから

  よがり声も大きいって言われるけど

  声の大きさと性行為の充実感は

  実はイコールじゃないから」と言った。

 

 結局は恋の熱さも声の大きさも、

 やっぱりほどほどがいいんだけど

 たまには動物園にも

 行ってみたい気はするなあ(笑)。