昨夜は飲みに行くつもりはなかったのだが

 用事ができて、駅まで出かけたのが悪かった。

 ついつい、いつもの道からいつもの店へ

 吸い込まれるように入ってしまった。

 

 店の客はまばらで、マスターと珍しく

 現在の世界情勢や株高の要因といった

 真面目な話をしていたら

 店のドアが開き、昨年還暦になったはずの

 T奥様が一人で来て

 「あ〜、Hさん久しぶりです、

  最近全然会えてなかったから」

 なんて言って隣に座った。

 その瞬間思った。あ〜、ついてない

 あのまま帰ればよかったなあ、って。

 

 すると案の定

 「最近は友達もみんな忙しくなって

  誰も付き合ってくれないし

  旦那も会社から帰ると、

  自分の部屋にこもっちゃうしさ・・・」

  

 なんていつもの愚痴話が始まってしまった。

 

 彼女はよく

 <私って不幸の星の下に生まれた女だから>

 という。

 2度結婚したが、一人目の旦那は

 ギャンブル好きの借金まみれの、

 仕事もろくにしない遊び人男。

 二人目は真面目だけが取り柄の

 会話もまともにできない暗い男。

 子供は小さい頃から非行に走り

 30過ぎて今は塀の向こうで臭い飯を食ってる。

 

 なんて話をいつもするわけだが、

 そこに自分の責任話は一切ない。

 

 ボクは思う

 <不幸の星の下に生まれる>とは

 自分の努力や頑張りではどうしようもない

 そんな不幸に何度も襲われるような

 本当に可哀想な人の事を言う。

 

 自分で選んだ旦那が、

 自分が産んで育てた子供が

 自分の思い通りではなかったとか、

 さらに友達がみんな離れていってしまう

 というのは、原因の半分以上は彼女にあるわけで

 だからそれを<不幸の星の下に生まれる>

 とは言わないのだ。

 

 この自己責任を自覚できないことによる

 自分を不幸だと思ってる

 T奥様の特徴を思いつくまま書いてみると、

 こんな感じ。

 

 まず<話は愚痴ばかり>

 <発する言葉は常にネガティブ>

 <自分の責任については自覚がない>

 <謝ることはなくいつも言い訳ばかり>

 <人の話を必ず否定する>

 <後輩には上から目線でいつも説教する>

 <プライドは高いが学習能力は低い>

 

 だから自分の2度の結婚生活を棚に上げて

 後輩奥様に「夫婦はこうすべき」なんて言うし

 自分の息子はいつも警察の厄介になってるのに

 「その子育ては間違ってる」なんて

 ママ友に説教できるわけだ。

 

 だから、そんなT奥様から

 友達がどんどん離れて行くのは

 当然といえば当然なのだ。

 

 お酒は愉快に飲む

 会話は楽しくする

 そんな時間が過ごせないなら

 その場にいても意味がない

 というわけで、

 話が途切れた時に

 「あっ、用事思い出しちゃったから」

 なんて弁解して、

 お勘定を済ませて席を立った。

 

 それで帰宅して、

 中途半端な気持ちを鎮めるために

 何となく書棚から川上宗薫先生の

 とびきりの官能小説を取り出して

 久しぶりに読んで興奮した。

 

 その小説での興奮については

 また今度。