昨日の続きのような話だが

 好きな人に大事にされていない

 そんな奥様をまた一人思い出した。

 

 その奥様A子さんは現在42歳で、

 共働きの旦那と二人で暮らしている。

 

 3年ほど前だったか、

 ボクの通ってるバーへ、そのA子さんが

 後輩女性を連れて飲みに来た。

 

 そこでインテリの独身男性T君が

 A子さんに話しかけた。

 二人は同じ年で大学の学部も同じ

 ということで、話は盛り上がり

 来週の週末も会う約束をした。

 

 それからの二人は

 楽しげに話す、手をつないで歩く

 ホテルへ消えた、そんな噂話が

 次々に聞こえてくるようになった。

 

 その後1年ほどした頃だった

 A子さんが一人でそのバーに来た。

 そしてマスターに聞いた

 「今日T君は来るかな?」

 「分からないな、最近あまり来てないし。

  あれ、今、付き合ってないの?」

 「なんか避けられてるみたいで・・・」

 そんな話をするA子さんを見たら

 その頬に涙が流れてた。

 

 T君は以前からよく言ってた

 「面倒くさいなって思ったら

  もうその女性とは付き合えない」

 なんて。

 

 そんな事を思い出してら突然

 「Hさんでしたっけ、

  T君と仲良くされてましたよね」

 と、ボクに話しかけて来た。

 

 そして彼との思い出を語り出した。

 長々とそんな話を聞かされ

 時には涙も見せられ、話は佳境に

 「先月初め彼が実家へ帰って、

  羽田に戻ってくる日時を

  彼の手帳を見て知ってたから

  私が到着ロビーで待ってて

  そしたら彼が私を見つけて、

  抱擁してくれて

  『ありがとう』って言ってくれて。

  あの抱擁とありがとうって言葉

  なんなんですか。教えてくださいよ」

  と、泣きながらしつこく絡んできた。

 

 そんな事ボクが知るわけがない、

 ちょっと面倒くさいなあって思ったら

 T君の気持ちが何となく分かった。