茅ヶ崎に天龍という担々麺屋がある。
 そこの担々麺は辛さが選べる。
 入門、中級、プロフェッショナル。
 そして最後が地獄のヘリテイジで、
 スープの色は真っ赤だ。
 
 その地獄のヘリテイジを
 隣に座るF君が食べている。
 汗だけじゃなく鼻水もダラダラで、
 苦悶と我慢と忍耐の表情を浮かべ、
 唸りながら麺をすすり
 涙を浮かべながらスープを飲んでる。

 辛さというのは分類上、味ではなく痛み。
 それを我慢し、痛みに耐えることで喜ぶ。
 そして求める痛みはドンドンと
 エスカレートする。

 人間とは面倒な生き物だ。
 その刺激ではいつの間にか満足しなくなり
 さらに強い刺激を求めるようになる。
 
 そしてそういう欲求の強い人は
 男女関係にもきっと
 同じように刺激を求めるに違いない。

 2年前にこのF君、奥さんに逃げられた。
 今、その理由が分かった気がする。

 昔から男女の間は、
 「燃えれば燃えるほど飽きる」
 と言われる。

 男女関係も辛さも、一歩手前を楽しむ
 そんなゆとりが必要なんだ、きっと。