飲み友達の若い友人N君は、今年37歳になる独身男子。
決して2枚目ではないし、小太りで置物のタヌキ君のような体型だが、
性格は明るくて優しく、冗談も分かる、とっても良い奴なのだ。
そのN君に彼女が出来たと聞いたのは、昨年の秋だった。
友人が開催した合コンで、たまたま隣に座った28歳の女子と話が合い、
「付き合おうか?」と言ったら彼女が
「お嫁にもらってくれますか?」と答えたというのだ。
そこで彼はためらうことなく
「分かった。お嫁さんにする」と言って交際がスタートした。
「もう息子の結婚は諦めようか」と話していたという彼の両親も
とっても喜んで、
「いつ挨拶に行ったらいいか」なんて会話で盛り上がっていたそうだ。
そんなN君と先週末久々に会った。そこで
「今度彼女を紹介しますよ」と言っていたことを思い出し、
「彼女にはいつ会わせてくれるの?」と肩を叩いたら、
彼の表情が曇り、うつむいたまま言葉を失くしてしまった。
「ありゃ、これはまずかったかな」と思ったボクは、話題を変えようと
「あのさ~」と言った瞬間、彼がポツリと言った
「実は今月初めに別れたんです・・・」と。
別れのいきさつを簡単に説明すると・・・、ラインのやり取りで、
彼女から「父親の病気がかなり重くなった、それで会社の仕事以外にも
夜働きに出ようと思ってる」と打ち明けられたので、彼は心配して
「夜の店で働くなら僕の知ってる店を紹介する」と言ったら
「えっ、そういう考えなの・・・」という返事が来て、
それ以来連絡が途絶えたというのだ。
そこでいろいろ話を聞いて驚いた。
結婚しようと言って付き合い出して、この半年、
彼は何度も誘ったが、なんと実際に会ったのは2回きり。
そのうちの1回は病院へのお見舞いだから、ちゃんとデートしたのは1回。
というわけで、手も握ったことがないという関係だったのだ。
「結婚したら・・・」なんて話を、N君からこれまで何度か聞いていたので、
現実とのギャップをすぐに埋められず、回答するのにちょっと悩み、
人生経験を感じさせる、ウンチクある素敵な励ましの言葉を探してたら、
すかさずマスターが
「そんな女別れて良かった。
それじゃあ早速、次の女子を探そうぜ、誰か合コンセッティングしてよ」
と、叫んだ。
その時だ、一瞬N君のことなど忘れて、
「ボクもその合コン仲間に入れて!」と思わず言ってしまった。
還暦過ぎてんのに、全く情けない。
