若い頃は洗濯物が山になっても、洗い物がシンクを埋めつくしても、まるで素敵な景色がまた増えたといった感じで微笑んでいた我が家の奥さんが、キレイ好きに変身した。

 50歳を過ぎた頃からその兆候が見え始め、年々エスカレートしているように感じる。

 先週も、棚の上に置きっぱなしにしてあった、役所から送られて来たある申請書がゴミ箱に消えていた。

 「手袋はココ、帽子はあそこ、コートはクローゼットでしょ・・・」そんな指示が、日に日に細かく厳しくなっていく。

 そういえば義母がそういう人だった。年を取るとやっぱり女性は、母親に似て来るものなんだと、最近つくづく思う。
 
 困った事に、ボクの習性を形成している父親の性癖は、その真逆。
 自分の手の届く範囲に何でも置いておき、物は絶対に捨てないという人だったのだ。

 だから最近ボク等夫婦は、そのルーツと遺伝子の強さを、事あるごとに、競い合うという状況になっている。 

 というわけで昨日も、古いフライパンを捨てるという奥さんの宣言に、ボクは堂々と、古いフライパンの寿命と使用する事の効用について、やや小さな声で解説したが、無駄だった。
 
 そしてその時、ボクを見つめる奥さんの目を見て少々ビビッた。
 ナンとその目は、捨てようとしていた古いフライパンを見つめていた目と、全く同じだったからだ。