エレベーターの中で倒れてからどの位の時間が経過したのか。
目覚めると、ボクは病室のような部屋のベットの上に寝かされていた。
ジョジョに意識がハッキリしてきて、起き上がろうとしたら、手足の自由が利かないことに気がづいた。手足を縛られていたのだ。
「お目覚めですかアリ?」
その声のする方を見ると、胸に『王様』と書かれたネームプレートをぶら下げたアリが居た。
「あなたが王様?」
「そうですアリ。今年だけの王様ですがアリ」
「今年だけ?」
「そうですアリ。ご承知のようにアリの世界は女王が支配しますアリ。ですから王様は毎年女王が選んだ男子が一年だけ勤めるのですアリ」
「なるほど。それはそれとして、なんでボクは縛られてるんですか?」
「男同士二人きりで、落ち着いて話しをするためですアリ」
「話って何です?」
「あなたをココへお連れした理由ですアリ」
「お礼をしてくれるためでしょ。迎えのアリさんがそう言ってた」
「閑古堂さんはお礼や贈り物に弱いと聞いていましたからねアリ」
「えっ!そうじゃないの。迎アリ館で飲めや歌えの大宴会が続いて、それでお土産もらって帰るんだとばかり思ってたのに」
「プレゼントはあります」
「できればそれをいただいて直ぐ帰りたい。もう宴会は結構ですので。いくら暇な閑古堂でも無断休業はお客様に失礼ですから」
「見張りの報告ですと、今日はお客様は誰も来てませんアリ」
「今日は火曜日でしょ。火曜日休みの美容師さんが遠くからくるんですよ」
「そんなことはどうでも良いのですアリ」
「じゃあ男同士の話っていうのを早く始めてくださいよ」
「では早速。あなたが助けて下さった王女様は、今年10月から女王になられますアリ。そしてその王女様の女王就任への最初の仕事が、結婚相手の王様を選ぶことですアリ。それで昨夜王様の選択会議があって、その席で王女様がなんとアナタを指名したのですアリ」
「ボクを?」
「そうですアリ。私も驚いて、あんなハゲジジイの怠け者の何処がイイんだアリ!。と叫んで反対したのですがアリ・・・」
「そりゃちょっと言い過ぎでしょ」
「確かにアリ・・・、それであのハゲの、あ、また言っちゃったアリ。失礼アリ。何が良いのかと聞いたアリ。すると王女は『閑古堂が私を抱き上げた時の、指先のソフトタッチがとても素敵で鳥肌が立ったアリ』と申すのですアリ」
「アリにも鳥肌が立つのか?」
「そんな事は今は関係ないアリ」
「そりゃそうだ。それで」
「それで、閑古堂さんに1年間王様になっていただき、王女さまと暮らしていただきたいというわけですアリ。まあ言い換えれば、こんな素晴らしい権利をお礼としてプレゼントするというわけですアリ」
「そんなプレゼントは要らないって断ったらどうなるの?」
「断ったらですかアリ・・・」
ふと見ると、王様の顔が鬼のように変わっいくのがわかった。(続く)
